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そっちじゃない
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筆頭公爵家の令嬢が凍らされる以上の惨事が起きる前に、ユーリを連れて帰らなければ…。
いつもは、ユーリが保護者なのだろうけれど、今日は、私が、保護者の気分だわ。
ということで、イリスさんに向かって、きりりとした顔で言った。
「イリスさん、迷惑をかけて、ごめんなさいね。このままだと、あの令嬢も危ないし、なにより、イリスさんの素敵なカフェが凍りつきでもしたら、大変だもの。ユーリを連れて帰るわ」
イリスさんが、驚いたような顔をした。
「いえ、お食事中だったのに、こちらこそ申し訳ないです。大声をあげだした時、すぐにでも、ご令嬢にお引き取りいただけばよかったのですが…。私の判断ミスです」
「そんなことないわ。…大丈夫。私にいい考えがあるから、任せてね」
「いい考え?」
「ええ。魔王化しているユーリを驚かせて、そのすきに、速やかにカフェの外に連れ出すから」
「次期公爵様を驚かせる…? あの方を驚かせるなど無理なのでは…? というより、帰られなくても、そのまま、いてくだされば…。騒ぎ始めたご令嬢のほうに、お帰りいただきますから」
と、とまどったように言うイリスさん。
私を自分の胸をたたいてみせた。
「いえ、イリスさんにご迷惑をかけられないわ! 大丈夫よ。ここで見てて。ちゃんと、保護者として、ユーリを連れ帰りますからね」
そう言って、にっこり微笑むと、私は、すぐさま、ユーリの後方へと歩いていった。
と、そこで、紳士の方が私を見ていることに気がついた。
ものすごく期待したような、きらきらした目で、私を見ている。
目があった。
すると、今度は、私にむかって、なぜか親指をたててきた紳士。
よくわからないけれど、「行け!」と言うゴーサインかしら…。
とりあえず、私は、うなずいておく。
にこにこした顔でこちらを見たまま、またもや、ノートに何かを書いている。
楽しそうでなによりだわ…。
ということで、私は、ユーリの背中に焦点をあわせた。
そして、短い距離を走り出した。
ユーリの背中が目の前にきたわ!
思い切って、飛びつく私。
そして、腕をぎゅーっとまわして、捕獲!
前半、成功よ!
あとは、このまま、カフェの外へ押し出すだけ。
でも、あれ…? 変ね…。びくともしないわ…。
と、思ったら、私のまわした腕をユーリが、がしっとおさえた。
まばゆいばかりの金色の髪をゆらして、振り返ったユーリ。
その美しい目は、あわれむように私を見ている。
え…。なんだか、予想と違うわね? だって、驚いていないみたいだもの…。
どうしてかしら?
「はあ…、ほんと、アデルは、ばかかわいいよね…。でも、一体、何してるの?」
ユーリが困ったように聞いてきた。
「ええと、こうすれば、ユーリが驚くかなあって。で、そのまま、カフェの外に押し出そうと思って…。ええと、驚いてないの、ユーリ?」
「驚くも何も、全部、アデルの行動は目で追ってたから。ちょこまか走って背中に近づいて来た時は、何がしたいのかと思ったけど…。あ、もしかして、ぼくが他の令嬢を見てたから、寂しかったの? ごめんね、アデル?」
妙な色気を漂わせて、甘やかに微笑んだ魔王ユーリ。
私は、あわてて首を横にふった。
「いえ、全く、全然違うわ!」
と答えている間に、ユーリにおさえられた手がひっぱられた。
え…? なに、なに、なに…!?
と、焦っている間に、私の体は、ユーリの前にまわって、後ろから、ユーリにがっしりと抱きしめられる。
そう、いつの間にか、さっきとは逆の体勢になってしまっている私。
そして、目の前には、驚いて固まっている筆頭公爵家の令嬢が…。
驚かせるのは、そっちじゃなかったのに!
いつもは、ユーリが保護者なのだろうけれど、今日は、私が、保護者の気分だわ。
ということで、イリスさんに向かって、きりりとした顔で言った。
「イリスさん、迷惑をかけて、ごめんなさいね。このままだと、あの令嬢も危ないし、なにより、イリスさんの素敵なカフェが凍りつきでもしたら、大変だもの。ユーリを連れて帰るわ」
イリスさんが、驚いたような顔をした。
「いえ、お食事中だったのに、こちらこそ申し訳ないです。大声をあげだした時、すぐにでも、ご令嬢にお引き取りいただけばよかったのですが…。私の判断ミスです」
「そんなことないわ。…大丈夫。私にいい考えがあるから、任せてね」
「いい考え?」
「ええ。魔王化しているユーリを驚かせて、そのすきに、速やかにカフェの外に連れ出すから」
「次期公爵様を驚かせる…? あの方を驚かせるなど無理なのでは…? というより、帰られなくても、そのまま、いてくだされば…。騒ぎ始めたご令嬢のほうに、お帰りいただきますから」
と、とまどったように言うイリスさん。
私を自分の胸をたたいてみせた。
「いえ、イリスさんにご迷惑をかけられないわ! 大丈夫よ。ここで見てて。ちゃんと、保護者として、ユーリを連れ帰りますからね」
そう言って、にっこり微笑むと、私は、すぐさま、ユーリの後方へと歩いていった。
と、そこで、紳士の方が私を見ていることに気がついた。
ものすごく期待したような、きらきらした目で、私を見ている。
目があった。
すると、今度は、私にむかって、なぜか親指をたててきた紳士。
よくわからないけれど、「行け!」と言うゴーサインかしら…。
とりあえず、私は、うなずいておく。
にこにこした顔でこちらを見たまま、またもや、ノートに何かを書いている。
楽しそうでなによりだわ…。
ということで、私は、ユーリの背中に焦点をあわせた。
そして、短い距離を走り出した。
ユーリの背中が目の前にきたわ!
思い切って、飛びつく私。
そして、腕をぎゅーっとまわして、捕獲!
前半、成功よ!
あとは、このまま、カフェの外へ押し出すだけ。
でも、あれ…? 変ね…。びくともしないわ…。
と、思ったら、私のまわした腕をユーリが、がしっとおさえた。
まばゆいばかりの金色の髪をゆらして、振り返ったユーリ。
その美しい目は、あわれむように私を見ている。
え…。なんだか、予想と違うわね? だって、驚いていないみたいだもの…。
どうしてかしら?
「はあ…、ほんと、アデルは、ばかかわいいよね…。でも、一体、何してるの?」
ユーリが困ったように聞いてきた。
「ええと、こうすれば、ユーリが驚くかなあって。で、そのまま、カフェの外に押し出そうと思って…。ええと、驚いてないの、ユーリ?」
「驚くも何も、全部、アデルの行動は目で追ってたから。ちょこまか走って背中に近づいて来た時は、何がしたいのかと思ったけど…。あ、もしかして、ぼくが他の令嬢を見てたから、寂しかったの? ごめんね、アデル?」
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私は、あわてて首を横にふった。
「いえ、全く、全然違うわ!」
と答えている間に、ユーリにおさえられた手がひっぱられた。
え…? なに、なに、なに…!?
と、焦っている間に、私の体は、ユーリの前にまわって、後ろから、ユーリにがっしりと抱きしめられる。
そう、いつの間にか、さっきとは逆の体勢になってしまっている私。
そして、目の前には、驚いて固まっている筆頭公爵家の令嬢が…。
驚かせるのは、そっちじゃなかったのに!
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