44 / 127
番外編
挿話 王太子の受難 5
しおりを挟む
ということで、ブルーノ伯爵夫人に連絡を入れたら、すぐにやってきた。
もちろん、ブルーノ伯爵と、ルイスに声をかけた、あの女も一緒だ。
せっかくなので、おもてなしの気持ちを込めて、一番、広々とした応接室に通すように指示をだした。
「父上は?」
と、ウルスに確認する。
「仰せの通りにしてあります」
と、ウルスが仕事モードで答える。
「オッケー。じゃあ、行こう。紹介してくれる女性、素敵な女性だったらいいなあ。ね、ウルス?」
と、ぼくが微笑むと、
「…こわっ」
と、ウルスがつぶやいた。
広々とした応接室は、大人数で会議ができる大きなテーブルと椅子がおかれていて、他には何もない。
そして、ぼくとウルスが一緒に入る。もちろん、部屋の入り口と四方には護衛もいる。
椅子に座っていた三人が、ぼくを見て、立ちあがった。
「ああ、どうそ、座っててください」
と、ぼくは、最高の笑顔で声をかける。
ぼくと、ウルスが座ると、大きなテーブルをはさんで、向かい側に、ブルーノ伯爵夫人を真ん中にして、ブルーノ伯爵、そして、あのべラレーヌ・ボラージュが座った。
「今日は、ようこそ。ブルーノ伯爵も久しぶりですね。しばらくお会いしてなかったので、およびたてしてしまいました。輸入されているワインの業績が、すごく良いそうなので、是非、参考のために、お話をお聞きしたいと思いましてね」
と、ぼくは、優しい王太子の顔で微笑む。
「ええ、おかげさまで、事業は大変、上手くいっておりましてね。いくらでも、話させていただきますよ!」
と、ブルーノ伯爵は得意げに答えた。
が、ぼくは、ちょっと笑いそうになっている。
というのも、今日は、一段と派手なドレスをきているブルーノ伯爵夫人だが、何故かブルーノ伯爵もおそろいのジャケットを着ているからだ。
しかも、バラ柄だ。いかつい顔のブルーノ伯爵には、壊滅的に似合っていない。
すごいセンスと勇気だ…。
隣に座る、笑い上戸のウルスを見たら、手の甲をつねっている。
ここで、ブルーノ伯爵夫人が少しのりだしてきた。
「王太子様、お考えを変えてくださって、嬉しいですわ!
そして、紹介させていただく方が、ボラージュ伯爵の御令嬢べラレーヌ様です。
見てのとおり、大層お美しくて、すばらしい方なんですのよ! 未来の王妃にぴったりですわ。ホホホ」
と、ブルーノ伯爵夫人が、これまた衣装とおそろいのバラの扇子を広げて笑った。
では、しっかりと確認するか…。
ぼくは、べラレーヌ・ボラージュに視線をあわせ、にっこりと微笑んだ。
すると、女は、
「わたくし、ボラージュ伯爵の娘、べラレーヌと申します。王太子殿下にお会いできて光栄です」
と言って、恥ずかしそうに微笑み返してきた。
ウルスだったら、ハニートラップにかかりそうだな…。
が、ぼくから見たら、嘘くさい美しさで、最も苦手なタイプ。
はああ~、虫掃除が終わったら、ルイスに会いに行って癒されよう。
ということで、とっとと終わらせないとね…。
ぼくは、
「あれ? 一度、お会いしたことがありますよね? 王宮の庭で。すごく美しい方だったから覚えてたんです」
と、白々しく、探りをいれてみる。
すると、その女は、
「まあ、お恥ずかしいですわ。ブルーノ伯爵夫人を待っている間、王宮のお庭を見せていただいてたんですが、気がついたら、どんどんと奥にいってしまって…。迷ったみたいなんです。
ちょうど、お庭を整備されてる方がいらっしゃったので、道をお聞きして…。
その後に、お声をかけてくださった方が、まさか、王太子殿下だったなんて…」
と、恥ずかしそうに答える。
ここで肝心のことを聞いてみる。
「その庭にいたのは、私の弟だったんですよ」
「え? そうだったのですか? 庭師の服を着られていたので、まさかルイス殿下だとは思いもしませんでした」
と、女は、目を見開いた。
ふーん…。
やっぱり、知ってて声をかけたか…。
ぼくは、小さい頃から、ルイスの表情を見るのに慣れている。隣のウルスもだ。
わずかな表情、目の動きを、見逃すことはない。
この女は、驚いているようでいて、驚いていない。
ちらりと、ウルスを見ると、ウルスも同様の意見らしく、小さくうなずいた。
が、相当、したたかそうだ。ブルーノ伯爵夫人のほうが、ずっと単純だろう。
おそらく、誘導しているのは、女の方だ。
つまり、ロンダ国のボラージュ伯爵親子に、この浅はかなブルーノ伯爵夫妻はいいように利用されているというわけだよね。
もちろん、ブルーノ伯爵と、ルイスに声をかけた、あの女も一緒だ。
せっかくなので、おもてなしの気持ちを込めて、一番、広々とした応接室に通すように指示をだした。
「父上は?」
と、ウルスに確認する。
「仰せの通りにしてあります」
と、ウルスが仕事モードで答える。
「オッケー。じゃあ、行こう。紹介してくれる女性、素敵な女性だったらいいなあ。ね、ウルス?」
と、ぼくが微笑むと、
「…こわっ」
と、ウルスがつぶやいた。
広々とした応接室は、大人数で会議ができる大きなテーブルと椅子がおかれていて、他には何もない。
そして、ぼくとウルスが一緒に入る。もちろん、部屋の入り口と四方には護衛もいる。
椅子に座っていた三人が、ぼくを見て、立ちあがった。
「ああ、どうそ、座っててください」
と、ぼくは、最高の笑顔で声をかける。
ぼくと、ウルスが座ると、大きなテーブルをはさんで、向かい側に、ブルーノ伯爵夫人を真ん中にして、ブルーノ伯爵、そして、あのべラレーヌ・ボラージュが座った。
「今日は、ようこそ。ブルーノ伯爵も久しぶりですね。しばらくお会いしてなかったので、およびたてしてしまいました。輸入されているワインの業績が、すごく良いそうなので、是非、参考のために、お話をお聞きしたいと思いましてね」
と、ぼくは、優しい王太子の顔で微笑む。
「ええ、おかげさまで、事業は大変、上手くいっておりましてね。いくらでも、話させていただきますよ!」
と、ブルーノ伯爵は得意げに答えた。
が、ぼくは、ちょっと笑いそうになっている。
というのも、今日は、一段と派手なドレスをきているブルーノ伯爵夫人だが、何故かブルーノ伯爵もおそろいのジャケットを着ているからだ。
しかも、バラ柄だ。いかつい顔のブルーノ伯爵には、壊滅的に似合っていない。
すごいセンスと勇気だ…。
隣に座る、笑い上戸のウルスを見たら、手の甲をつねっている。
ここで、ブルーノ伯爵夫人が少しのりだしてきた。
「王太子様、お考えを変えてくださって、嬉しいですわ!
そして、紹介させていただく方が、ボラージュ伯爵の御令嬢べラレーヌ様です。
見てのとおり、大層お美しくて、すばらしい方なんですのよ! 未来の王妃にぴったりですわ。ホホホ」
と、ブルーノ伯爵夫人が、これまた衣装とおそろいのバラの扇子を広げて笑った。
では、しっかりと確認するか…。
ぼくは、べラレーヌ・ボラージュに視線をあわせ、にっこりと微笑んだ。
すると、女は、
「わたくし、ボラージュ伯爵の娘、べラレーヌと申します。王太子殿下にお会いできて光栄です」
と言って、恥ずかしそうに微笑み返してきた。
ウルスだったら、ハニートラップにかかりそうだな…。
が、ぼくから見たら、嘘くさい美しさで、最も苦手なタイプ。
はああ~、虫掃除が終わったら、ルイスに会いに行って癒されよう。
ということで、とっとと終わらせないとね…。
ぼくは、
「あれ? 一度、お会いしたことがありますよね? 王宮の庭で。すごく美しい方だったから覚えてたんです」
と、白々しく、探りをいれてみる。
すると、その女は、
「まあ、お恥ずかしいですわ。ブルーノ伯爵夫人を待っている間、王宮のお庭を見せていただいてたんですが、気がついたら、どんどんと奥にいってしまって…。迷ったみたいなんです。
ちょうど、お庭を整備されてる方がいらっしゃったので、道をお聞きして…。
その後に、お声をかけてくださった方が、まさか、王太子殿下だったなんて…」
と、恥ずかしそうに答える。
ここで肝心のことを聞いてみる。
「その庭にいたのは、私の弟だったんですよ」
「え? そうだったのですか? 庭師の服を着られていたので、まさかルイス殿下だとは思いもしませんでした」
と、女は、目を見開いた。
ふーん…。
やっぱり、知ってて声をかけたか…。
ぼくは、小さい頃から、ルイスの表情を見るのに慣れている。隣のウルスもだ。
わずかな表情、目の動きを、見逃すことはない。
この女は、驚いているようでいて、驚いていない。
ちらりと、ウルスを見ると、ウルスも同様の意見らしく、小さくうなずいた。
が、相当、したたかそうだ。ブルーノ伯爵夫人のほうが、ずっと単純だろう。
おそらく、誘導しているのは、女の方だ。
つまり、ロンダ国のボラージュ伯爵親子に、この浅はかなブルーノ伯爵夫妻はいいように利用されているというわけだよね。
81
あなたにおすすめの小説
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!
水鈴みき(みすずみき)
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!?
※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり
大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。
airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」
親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。
婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。
2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。
心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。
そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います!
でも本当は…
これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。
星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」
涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。
だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。
それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。
「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」
「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」
「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」
毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。
必死に耐え続けて、2年。
魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。
「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」
涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる