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番外編
辺境で 1
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※ お久しぶりです! 王妃視点からスタートします。
今、私はいらいらしている。
というのも、机には山積みの書類。
辺境伯である私が目を通さないといけないものばかりだ。
これが終わらないと外に出られない。
「体がなまる! 少しでいいから騎士団の訓練に行かせてくれ!」
「ダメです。それに、ミラベル様は、昨日まで、騎士団で訓練ばかりされていたはずですが? そのため、辺境伯様としての書類が、こんなにたまっているのですよ?」
と、私の側近であるアーノルドが淡々と言った。
生まれ育ったこの辺境の城には、私が子どもの頃から働いてくれている者たちも多く、皆、私のことを名前で呼ぶ。
前辺境伯であった私の父から仕事を叩き込まれているアーノルドもその筆頭で、私が子どもの頃は私の教育係として、今は私の側近として補佐してくれている。
まあ、年の離れた兄のような存在だ。
アーノルドの正論に、反論できない私。
そう、私は王妃であり、辺境伯であり、更に辺境騎士団の騎士団長でもある。
が、騎士団で体を動かすことが自分には合っているため、ついつい騎士団に足を運んでしまう。必然的に辺境伯としての書類仕事がたまる。そして、アーノルドに叱られるという繰り返しだ。
と、そこへ、ノックの音がして、侍女長のニーナが入ってきた。
お茶の時間のようだ。
「ミラベル様、お疲れでしょう? 少し休憩なされてはいかがですか?」
「ああ、そうだな。すごく疲れた」
「訓練だと何時間でもぶっ続けでされるのに、書類仕事はすぐに休憩されますね……」
と、アーノルドが、あきれたように言った。
「当たり前です。ミラベル様は、騎士の中の騎士ですから! 書類仕事はアーノルドがすればいいのです」
と、言い放ったニーナ。
「お言葉ですが、ニーナさん。ミラベル様が不在でも、騎士団には副騎士団長をはじめ、精鋭たちがおりますから心配いりません。だが、辺境伯はミラベル様おひとりです! しっかり、仕事をしていただかないと。甘やかさないでもらえますか、ニーナさん?」
と、言い返すアーノルド。
にらみあう二人。
私への接しかたが水と油ほど違う二人は、私のことでよく言い合っている。
が、ものすごく息があう時もあり、それだけ遠慮のない関係ということなのだろう。
ニーナもまた、私付きの侍女として、幼少の頃から面倒を見てくれた。
母親を早くに亡くしている私には、まるで母親のような存在だ。
アーノルドと違って、ニーナは、私が何をしても褒める。褒めまくる。
いくらなんでも欲目が過ぎるだろうと思い、褒めなくてもよいと言ってみたことがある。
すると、ニーナは猛然と反論してきた。
「それは無理です! ミラベル様には褒めるところしかないですから! 褒めずにはいられません!」
いや、褒めるところしかない……わけがない。
自分の欠点は自分がよくわかっている。
が、そこは頑として譲らないニーナ。
試しに自分の欠点をあげてみたら、そんな欠点ですら、意味のわからない理由で褒めまくってきた。
聞かされる私としては、本当にいたたまれない。
それ以降、ニーナが褒める時は逆らわず、ただ聞き流すことにしている。
が、最近、そんなニーナを見ると、ルイスを語るフィリップを思い出してしまう。
そういうところが、すごく似ている二人なんだよな……。
二人とも仕事はできるのに、なんとも残念だ。
私は、お茶の用意されたテーブルに移動した。
すると、ニーナが菓子をだしてきた。
「お疲れでしょうから、普段より、甘さの強い菓子にいたしました」
と、ニーナ。
皿を見ると、色鮮やかな丸い菓子がのっていた。
この城ででてくるのは素朴な菓子が多いから、珍しいな。
じっと菓子を見ていると、ニーナが言った。
「マカロンです。最近、雇った料理人が菓子作りが得意なんです。私もいただきましたが、大層、美味しいですよ」
「マカロン……? あ!」
思わず、声がでた。
「どうされましたか、ミラベル様!?」
あわてたように、ニーナが聞いてくる。
「アリス!」
「え?」
「アリスをこの城へ招こう! アリスに遊びに来てくれるよう約束を取り付けていたのに、すっかり、忙しくて忘れていた。あれから、もう、半年以上たってしまってるじゃないか!」
「そのアリス様とは、ルイス様のご婚約者様でしょうか?」
と、ニーナが聞いてきた。
「そうだ。以前、王宮で会った時、マカロンを食べる姿がなんとも愛らしくてな。大きさも、これくらいしかないんだ」
私が菓子を食べるアリスを思い出しながら、手で大きさを示す。
「は? それは、おとぎ話の小人ですか? いくらなんでも、テーブルから20センチの高さってあり得ないでしょう?」
と、あきれたようにつぶやくアーノルド。
「それくらい小さくて、かわいいってことだ。まさに、小動物だぞ! 見ているだけで、癒される。もう、秋も深まってきたから、早く招待しないといけない。寒くなったら、冬眠してしまうかもしれないだろう?」
「人間は冬眠しませんが……? ミラベル様の小動物好きが悪化して、ついに変なことを言い出したな……」
アーノルドがため息まじりにつぶやいたが、それどころではない。
「あんな小動物感満載のアリスだぞ。絶対に冬眠しないとは言い切れないだろう? せっかく約束したのに、次の春まで待つのは長すぎる!」
私が叫ぶと、ニーナが大きくうなずいた。
「それでは、すぐさま招待状をお出ししましょう。小動物のようなアリス様がお寒くないように、快適なお部屋をご用意いたします!」
と、ニーナが張り切って答えた。
さすが、ニーナだ。頼りになるな。
※リアルのほうがバタバタしていて、すっかり、更新が遅くなりました! すみません!
不定期な更新なのに、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
流れとしては、「閑話 お茶会のあとで」から半年以上たったお話となります。
今回は、辺境を舞台にして視点を変えて書いていくことにしております。
まずは、王妃視点から始まりますが、どうぞよろしくお願いいたします!
今、私はいらいらしている。
というのも、机には山積みの書類。
辺境伯である私が目を通さないといけないものばかりだ。
これが終わらないと外に出られない。
「体がなまる! 少しでいいから騎士団の訓練に行かせてくれ!」
「ダメです。それに、ミラベル様は、昨日まで、騎士団で訓練ばかりされていたはずですが? そのため、辺境伯様としての書類が、こんなにたまっているのですよ?」
と、私の側近であるアーノルドが淡々と言った。
生まれ育ったこの辺境の城には、私が子どもの頃から働いてくれている者たちも多く、皆、私のことを名前で呼ぶ。
前辺境伯であった私の父から仕事を叩き込まれているアーノルドもその筆頭で、私が子どもの頃は私の教育係として、今は私の側近として補佐してくれている。
まあ、年の離れた兄のような存在だ。
アーノルドの正論に、反論できない私。
そう、私は王妃であり、辺境伯であり、更に辺境騎士団の騎士団長でもある。
が、騎士団で体を動かすことが自分には合っているため、ついつい騎士団に足を運んでしまう。必然的に辺境伯としての書類仕事がたまる。そして、アーノルドに叱られるという繰り返しだ。
と、そこへ、ノックの音がして、侍女長のニーナが入ってきた。
お茶の時間のようだ。
「ミラベル様、お疲れでしょう? 少し休憩なされてはいかがですか?」
「ああ、そうだな。すごく疲れた」
「訓練だと何時間でもぶっ続けでされるのに、書類仕事はすぐに休憩されますね……」
と、アーノルドが、あきれたように言った。
「当たり前です。ミラベル様は、騎士の中の騎士ですから! 書類仕事はアーノルドがすればいいのです」
と、言い放ったニーナ。
「お言葉ですが、ニーナさん。ミラベル様が不在でも、騎士団には副騎士団長をはじめ、精鋭たちがおりますから心配いりません。だが、辺境伯はミラベル様おひとりです! しっかり、仕事をしていただかないと。甘やかさないでもらえますか、ニーナさん?」
と、言い返すアーノルド。
にらみあう二人。
私への接しかたが水と油ほど違う二人は、私のことでよく言い合っている。
が、ものすごく息があう時もあり、それだけ遠慮のない関係ということなのだろう。
ニーナもまた、私付きの侍女として、幼少の頃から面倒を見てくれた。
母親を早くに亡くしている私には、まるで母親のような存在だ。
アーノルドと違って、ニーナは、私が何をしても褒める。褒めまくる。
いくらなんでも欲目が過ぎるだろうと思い、褒めなくてもよいと言ってみたことがある。
すると、ニーナは猛然と反論してきた。
「それは無理です! ミラベル様には褒めるところしかないですから! 褒めずにはいられません!」
いや、褒めるところしかない……わけがない。
自分の欠点は自分がよくわかっている。
が、そこは頑として譲らないニーナ。
試しに自分の欠点をあげてみたら、そんな欠点ですら、意味のわからない理由で褒めまくってきた。
聞かされる私としては、本当にいたたまれない。
それ以降、ニーナが褒める時は逆らわず、ただ聞き流すことにしている。
が、最近、そんなニーナを見ると、ルイスを語るフィリップを思い出してしまう。
そういうところが、すごく似ている二人なんだよな……。
二人とも仕事はできるのに、なんとも残念だ。
私は、お茶の用意されたテーブルに移動した。
すると、ニーナが菓子をだしてきた。
「お疲れでしょうから、普段より、甘さの強い菓子にいたしました」
と、ニーナ。
皿を見ると、色鮮やかな丸い菓子がのっていた。
この城ででてくるのは素朴な菓子が多いから、珍しいな。
じっと菓子を見ていると、ニーナが言った。
「マカロンです。最近、雇った料理人が菓子作りが得意なんです。私もいただきましたが、大層、美味しいですよ」
「マカロン……? あ!」
思わず、声がでた。
「どうされましたか、ミラベル様!?」
あわてたように、ニーナが聞いてくる。
「アリス!」
「え?」
「アリスをこの城へ招こう! アリスに遊びに来てくれるよう約束を取り付けていたのに、すっかり、忙しくて忘れていた。あれから、もう、半年以上たってしまってるじゃないか!」
「そのアリス様とは、ルイス様のご婚約者様でしょうか?」
と、ニーナが聞いてきた。
「そうだ。以前、王宮で会った時、マカロンを食べる姿がなんとも愛らしくてな。大きさも、これくらいしかないんだ」
私が菓子を食べるアリスを思い出しながら、手で大きさを示す。
「は? それは、おとぎ話の小人ですか? いくらなんでも、テーブルから20センチの高さってあり得ないでしょう?」
と、あきれたようにつぶやくアーノルド。
「それくらい小さくて、かわいいってことだ。まさに、小動物だぞ! 見ているだけで、癒される。もう、秋も深まってきたから、早く招待しないといけない。寒くなったら、冬眠してしまうかもしれないだろう?」
「人間は冬眠しませんが……? ミラベル様の小動物好きが悪化して、ついに変なことを言い出したな……」
アーノルドがため息まじりにつぶやいたが、それどころではない。
「あんな小動物感満載のアリスだぞ。絶対に冬眠しないとは言い切れないだろう? せっかく約束したのに、次の春まで待つのは長すぎる!」
私が叫ぶと、ニーナが大きくうなずいた。
「それでは、すぐさま招待状をお出ししましょう。小動物のようなアリス様がお寒くないように、快適なお部屋をご用意いたします!」
と、ニーナが張り切って答えた。
さすが、ニーナだ。頼りになるな。
※リアルのほうがバタバタしていて、すっかり、更新が遅くなりました! すみません!
不定期な更新なのに、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
流れとしては、「閑話 お茶会のあとで」から半年以上たったお話となります。
今回は、辺境を舞台にして視点を変えて書いていくことにしております。
まずは、王妃視点から始まりますが、どうぞよろしくお願いいたします!
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