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番外編
辺境で 7 (ウルス視点)
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※ 今回はウルス視点です。
フィリップの執務室の中へ早く入るように促したにもかかわらず、入口で足がぴたりと止まったままのマーク。
ルイスの親友で、切れ者宰相に似た頭脳を持ち、次世代の貴族の子息の中ではぬきんでて有望で、一見、無敵のように思えるが、今は、唯一にして最大の弱点フィリップを前に警戒心まるだしになっている。
「敵の住処には入るな」という本能からの指令なのか、足が動かないようだ。
「へえ、いいね、その警戒心。マークは野生でも生きられそうだよね」
脅かしている張本人のフィリップが、動けないマークに楽しそうに声をかけている。
どの口が言うんだ……。
「恐縮です」
と、答えるマーク。
なんなんだ、この変な会話は……。
このままだと埒が明かないので、俺はマークの手をつかみ、執務室の中に引きずりこむと、テーブルのところに案内して、無理やり椅子に座らせた。
その隣にルイスが坐った。
そして、ルイスの目の前にはフィリップが坐った。
「ウルス、マークにもお茶とケーキを」
にこやかに言ったフィリップ。
即座に、マークが猛烈に首を横にふった。
「いえいえいえ、お気遣いなく! 話したら、すぐに失礼しますので」
「ああ、そのほうがいい」
思わず、俺の心の声が飛び出した。
「遠慮せずにゆっくりしていってよ、マーク」
にっこり微笑むフィリップに、マークの顔が更にひきつった。
次の瞬間、ルイスがマークの肩をがしっとつかみ、自分の方へ向けた。
「アリスに関する話とはなんだ? 何があった? 早く話せ、マーク」
待ちきれない様子で、マークを急かすルイス。
無表情と言われるルイスだが、俺から見れば、アリス嬢に関することになったら、全身から感情がもれだしまくっているように思える。
そんなルイスを、にこにこと嬉しそうに見つめながら、「ほんと一途で、愛らしくて、輝いていて、誠実で、まさに光の天使だよね、うちのルイスは!」とか、気持ち悪いことをつぶやくフィリップ。
上機嫌のフィリップが余計に怖いのか、マークが顔を固くさせたまま、言葉を選ぶようにして、慎重に話し始めた。
「実は、アリスに王妃様から、お茶会の招待状が届いたんです……」
「お茶会? 母上、こっちへ来るの? ウルス、その予定、聞いてないんだけど?」
不満げに俺を見たフィリップ。ルイスを見る目との落差がすごいな……。
王妃様とフィリップは一見真逆のようでいて、本質は似ている。
そのためか、よくぶつかる二人。しかも、お互い一歩もひかず、ど派手な言い争いになる。
ちなみに、そんな二人の言い争いに口を挟めるのは、家族である王様とルイスだが、ルイスはアリス嬢のことでなかったら、どうでもよさそうで、大抵は聞き流している。
王様は毎度毎度、止めようとするが、その声は、王妃様の声量にかき消されてしまって、二人の耳には届かない。
そう、王様では全く止められないんだよな……。
なんて考えていたら、あわてた様子で、マークが言った。
「あ、いえ……、王太子様、違います! アリスが招待されたのは、王宮ではなく、辺境伯様の城にです」
次の瞬間、ルイスが椅子を蹴って立ち上がった。
「アリスは辺境へ行くのか!?」
ルイスの言葉に、マークがうなずいた。
「ああ。しかも、ひとりでだ。護衛はよこしてくださるらしいが、あんな遠くまで、アリスだけで行くなんて、心配だ。俺も付き添いたいが、領地に行かないといけなくて無理なんだ」
「母上は一体何を考えてる? アリスに何かあったらどうするんだ! わかった。俺がアリスの代わりに辺境へ行く」
そう言い放ったルイス。
アリス嬢の代わりに、ルイスが辺境へ行く?
いやいや、ルイス……。それは、いくらなんでも、おかしくないか……?
それに、そこまで騒ぐことか?
確かに、辺境までは遠いが、王妃様の差配なら、何の心配もいらないだろう?
とにかく、フィリップが首をつっこむような、面倒ごとでなくてよかった……。
マークとルイスには、さっさと帰ってもらい、フィリップには仕事に戻ってもらうか……。
と思ったら、フィリップまで、立ち上がった。
「それなら、僕もルイスと一緒に行く! あんな遠いところへ、ルイス一人で行かせられないよ!」
は……?
いやいやいや、フィリップ……。なんで、そうなるんだ……?
※ 不定期な更新で、読みづらいと思いますが、読んでくださった方、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、いいね、ご感想、エールもありがとうございます!
大変、励みになっております!!
フィリップの執務室の中へ早く入るように促したにもかかわらず、入口で足がぴたりと止まったままのマーク。
ルイスの親友で、切れ者宰相に似た頭脳を持ち、次世代の貴族の子息の中ではぬきんでて有望で、一見、無敵のように思えるが、今は、唯一にして最大の弱点フィリップを前に警戒心まるだしになっている。
「敵の住処には入るな」という本能からの指令なのか、足が動かないようだ。
「へえ、いいね、その警戒心。マークは野生でも生きられそうだよね」
脅かしている張本人のフィリップが、動けないマークに楽しそうに声をかけている。
どの口が言うんだ……。
「恐縮です」
と、答えるマーク。
なんなんだ、この変な会話は……。
このままだと埒が明かないので、俺はマークの手をつかみ、執務室の中に引きずりこむと、テーブルのところに案内して、無理やり椅子に座らせた。
その隣にルイスが坐った。
そして、ルイスの目の前にはフィリップが坐った。
「ウルス、マークにもお茶とケーキを」
にこやかに言ったフィリップ。
即座に、マークが猛烈に首を横にふった。
「いえいえいえ、お気遣いなく! 話したら、すぐに失礼しますので」
「ああ、そのほうがいい」
思わず、俺の心の声が飛び出した。
「遠慮せずにゆっくりしていってよ、マーク」
にっこり微笑むフィリップに、マークの顔が更にひきつった。
次の瞬間、ルイスがマークの肩をがしっとつかみ、自分の方へ向けた。
「アリスに関する話とはなんだ? 何があった? 早く話せ、マーク」
待ちきれない様子で、マークを急かすルイス。
無表情と言われるルイスだが、俺から見れば、アリス嬢に関することになったら、全身から感情がもれだしまくっているように思える。
そんなルイスを、にこにこと嬉しそうに見つめながら、「ほんと一途で、愛らしくて、輝いていて、誠実で、まさに光の天使だよね、うちのルイスは!」とか、気持ち悪いことをつぶやくフィリップ。
上機嫌のフィリップが余計に怖いのか、マークが顔を固くさせたまま、言葉を選ぶようにして、慎重に話し始めた。
「実は、アリスに王妃様から、お茶会の招待状が届いたんです……」
「お茶会? 母上、こっちへ来るの? ウルス、その予定、聞いてないんだけど?」
不満げに俺を見たフィリップ。ルイスを見る目との落差がすごいな……。
王妃様とフィリップは一見真逆のようでいて、本質は似ている。
そのためか、よくぶつかる二人。しかも、お互い一歩もひかず、ど派手な言い争いになる。
ちなみに、そんな二人の言い争いに口を挟めるのは、家族である王様とルイスだが、ルイスはアリス嬢のことでなかったら、どうでもよさそうで、大抵は聞き流している。
王様は毎度毎度、止めようとするが、その声は、王妃様の声量にかき消されてしまって、二人の耳には届かない。
そう、王様では全く止められないんだよな……。
なんて考えていたら、あわてた様子で、マークが言った。
「あ、いえ……、王太子様、違います! アリスが招待されたのは、王宮ではなく、辺境伯様の城にです」
次の瞬間、ルイスが椅子を蹴って立ち上がった。
「アリスは辺境へ行くのか!?」
ルイスの言葉に、マークがうなずいた。
「ああ。しかも、ひとりでだ。護衛はよこしてくださるらしいが、あんな遠くまで、アリスだけで行くなんて、心配だ。俺も付き添いたいが、領地に行かないといけなくて無理なんだ」
「母上は一体何を考えてる? アリスに何かあったらどうするんだ! わかった。俺がアリスの代わりに辺境へ行く」
そう言い放ったルイス。
アリス嬢の代わりに、ルイスが辺境へ行く?
いやいや、ルイス……。それは、いくらなんでも、おかしくないか……?
それに、そこまで騒ぐことか?
確かに、辺境までは遠いが、王妃様の差配なら、何の心配もいらないだろう?
とにかく、フィリップが首をつっこむような、面倒ごとでなくてよかった……。
マークとルイスには、さっさと帰ってもらい、フィリップには仕事に戻ってもらうか……。
と思ったら、フィリップまで、立ち上がった。
「それなら、僕もルイスと一緒に行く! あんな遠いところへ、ルイス一人で行かせられないよ!」
は……?
いやいやいや、フィリップ……。なんで、そうなるんだ……?
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