121 / 127
番外編
辺境で 11(アリス視点)
しおりを挟む
※ お久しぶりです。アリス視点からの再開となります。
私が辺境へ出発する日。
朝早く、お父様とマーク兄様のふたりは揃って領地に出発していった。
私が辺境に行くのを猛反対していた過保護すぎるふたりは、王妃様に招待されてもいないのに、こっそり辺境までついてくるつもりだったみたい。
その考えをあっさり見抜いたお母様。
私が辺境へ出発する日にあわせて、ふたり揃って辺境とは真逆にあたる遠い領地に出向かざるをえないよう、お母様がさっさと差配してしまった。
そう、ふたりはお母様には逆らえない。
ヴァルト公爵家を実質まわしているのは、公爵のお父様じゃなくてお母様だから。
とはいえ、
「やっぱり心配だ。アリス、辺境へ行くのをやめないか?」
なんてことを、お父様とマーク兄様は出発する直前まで私に言ってきていたから、その都度、お母様に叱られていた。
ふたりにとったら、私はいまだに幼い子どもに見えているんだと思う。
でも、自分でいうのもなんだけど、ルイス様との修行のようなお茶会を何年も続けてきたおかげなのか、精神は鍛えられたと思う。
だから、そんなに心配しなくても大丈夫なのに……。
それに、今回、私につきそって、辺境まで行ってくれる侍女のメアリーは、小さい頃から面倒みてもらっていて、家族同然。
私にとったら年の離れた頼れる姉みたいな感じなのよね。
だから、正直、マーク兄様やお父様より、メアリーがついてきてくれたほうが、私としては安心する。
なんて考えていると、辺境騎士団の騎士の方々が三人、わざわざ辺境領から迎えにきてくださった。
以前、お会いした時、王妃様が着られていた騎士服と同じ騎士服を着られているみなさん。
濃い青色に銀色のラインが入っただけの、すっきりとした騎士服には、胸に「銀の鷲」が刺繍されている。
これは、辺境伯様の紋章で、迎えの馬車にも同じ紋章が入っている。
銀の鷲というのが強そうで、王妃様にぴったり。
私は、大柄な騎士ふたりにはさまれて、真ん中で凛と立っている小柄な女性の騎士に目を奪われた。
金色の長い髪を後ろで束ね、くりっとした大きな目が印象的な、かわいらしい顔立ちの女性。
その方が私の前に立った。
「辺境騎士団の騎士、マチルダ・ターナーと申します。王妃様であり辺境伯様でもあられる騎士団長様よりルイス殿下のご婚約者様アリス・ヴァルド様の護衛を任じられました。辺境伯様のお城までの道中、そして、滞在中も、私が常にアリス様のおそばで護衛させていただきます。私のことはマチルダとおよびください。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします、マチルダさん。私のことはアリスと呼んでください!」
王妃様以外で初めて会う女性騎士さんにドキドキしながら挨拶をする。
「承知しました、アリス様」
きびきびとした返事とともに、にっこり微笑んだマチルダさん。
やさしい笑顔に一気に親しみがわいた。
マチルダさんに続き、他の騎士さんふたりも自己紹介をしてくれた。
ひとりはアール・ターナーさんといって、マチルダさんのお兄様だそう。
背が高く大柄なアールさんは、小柄なマチルダさんとは全然似ていない。
少しびっくりしていると、アールさんが笑いながら言った。
「俺と妹、似ていないでしょう? よく驚かれるんです」
確かに……。
あ、でも、私とマーク兄様も全然似ていないから一緒だわ。
マチルダさんとアールさんのお父様は辺境騎士団の副騎士団長様なんだそう。
つまり、ターナー家は国の大事な要である辺境を守っているご一家ということね。
で、もうひとかたは、ロイス・ブリューノさん。
ロイスさんもアールさんと同じくらい背が高く、大きな方だ。
みなさん、優しそうでほっとする。
が、ひとつ疑問が……。
なんで、マチルダさん以外のふたりは、そんな離れたところに立ったままなのかしら?
マチルダさんだけが私の前にすすみでて、あとのふたりは離れたところから、自己紹介をしてくださったのだけれど、不自然な距離感なのよね……。
ということで、私のほうから近づいてみる。
すると、同じだけ、ふたりは少し後ろにさがった。
なんだか、私との一定の距離を保っているような感じなんだけど……。
※ ものすごく久々の更新となってしまいました。不規則な更新のなか、読んでくださったかた、本当にありがとうございます。次回も引き続き、アリス視点となりますがよろしくお願いします。
今回登場した女性騎士マチルダは、このお話のスピンオフ「いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります」の主人公になります。ちなみに、スピンオフのほうにも、王妃と王太子とウルスが少し登場します。
5万字ほどで完結している短めのお話です。もし、よろしかったら、そちらもよろしくお願いします。
私が辺境へ出発する日。
朝早く、お父様とマーク兄様のふたりは揃って領地に出発していった。
私が辺境に行くのを猛反対していた過保護すぎるふたりは、王妃様に招待されてもいないのに、こっそり辺境までついてくるつもりだったみたい。
その考えをあっさり見抜いたお母様。
私が辺境へ出発する日にあわせて、ふたり揃って辺境とは真逆にあたる遠い領地に出向かざるをえないよう、お母様がさっさと差配してしまった。
そう、ふたりはお母様には逆らえない。
ヴァルト公爵家を実質まわしているのは、公爵のお父様じゃなくてお母様だから。
とはいえ、
「やっぱり心配だ。アリス、辺境へ行くのをやめないか?」
なんてことを、お父様とマーク兄様は出発する直前まで私に言ってきていたから、その都度、お母様に叱られていた。
ふたりにとったら、私はいまだに幼い子どもに見えているんだと思う。
でも、自分でいうのもなんだけど、ルイス様との修行のようなお茶会を何年も続けてきたおかげなのか、精神は鍛えられたと思う。
だから、そんなに心配しなくても大丈夫なのに……。
それに、今回、私につきそって、辺境まで行ってくれる侍女のメアリーは、小さい頃から面倒みてもらっていて、家族同然。
私にとったら年の離れた頼れる姉みたいな感じなのよね。
だから、正直、マーク兄様やお父様より、メアリーがついてきてくれたほうが、私としては安心する。
なんて考えていると、辺境騎士団の騎士の方々が三人、わざわざ辺境領から迎えにきてくださった。
以前、お会いした時、王妃様が着られていた騎士服と同じ騎士服を着られているみなさん。
濃い青色に銀色のラインが入っただけの、すっきりとした騎士服には、胸に「銀の鷲」が刺繍されている。
これは、辺境伯様の紋章で、迎えの馬車にも同じ紋章が入っている。
銀の鷲というのが強そうで、王妃様にぴったり。
私は、大柄な騎士ふたりにはさまれて、真ん中で凛と立っている小柄な女性の騎士に目を奪われた。
金色の長い髪を後ろで束ね、くりっとした大きな目が印象的な、かわいらしい顔立ちの女性。
その方が私の前に立った。
「辺境騎士団の騎士、マチルダ・ターナーと申します。王妃様であり辺境伯様でもあられる騎士団長様よりルイス殿下のご婚約者様アリス・ヴァルド様の護衛を任じられました。辺境伯様のお城までの道中、そして、滞在中も、私が常にアリス様のおそばで護衛させていただきます。私のことはマチルダとおよびください。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします、マチルダさん。私のことはアリスと呼んでください!」
王妃様以外で初めて会う女性騎士さんにドキドキしながら挨拶をする。
「承知しました、アリス様」
きびきびとした返事とともに、にっこり微笑んだマチルダさん。
やさしい笑顔に一気に親しみがわいた。
マチルダさんに続き、他の騎士さんふたりも自己紹介をしてくれた。
ひとりはアール・ターナーさんといって、マチルダさんのお兄様だそう。
背が高く大柄なアールさんは、小柄なマチルダさんとは全然似ていない。
少しびっくりしていると、アールさんが笑いながら言った。
「俺と妹、似ていないでしょう? よく驚かれるんです」
確かに……。
あ、でも、私とマーク兄様も全然似ていないから一緒だわ。
マチルダさんとアールさんのお父様は辺境騎士団の副騎士団長様なんだそう。
つまり、ターナー家は国の大事な要である辺境を守っているご一家ということね。
で、もうひとかたは、ロイス・ブリューノさん。
ロイスさんもアールさんと同じくらい背が高く、大きな方だ。
みなさん、優しそうでほっとする。
が、ひとつ疑問が……。
なんで、マチルダさん以外のふたりは、そんな離れたところに立ったままなのかしら?
マチルダさんだけが私の前にすすみでて、あとのふたりは離れたところから、自己紹介をしてくださったのだけれど、不自然な距離感なのよね……。
ということで、私のほうから近づいてみる。
すると、同じだけ、ふたりは少し後ろにさがった。
なんだか、私との一定の距離を保っているような感じなんだけど……。
※ ものすごく久々の更新となってしまいました。不規則な更新のなか、読んでくださったかた、本当にありがとうございます。次回も引き続き、アリス視点となりますがよろしくお願いします。
今回登場した女性騎士マチルダは、このお話のスピンオフ「いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります」の主人公になります。ちなみに、スピンオフのほうにも、王妃と王太子とウルスが少し登場します。
5万字ほどで完結している短めのお話です。もし、よろしかったら、そちらもよろしくお願いします。
129
あなたにおすすめの小説
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!
水鈴みき(みすずみき)
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!?
※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり
大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。
airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」
親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。
婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。
2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。
心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。
そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います!
でも本当は…
これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。
星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」
涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。
だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。
それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。
「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」
「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」
「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」
毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。
必死に耐え続けて、2年。
魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。
「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」
涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる