(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん

文字の大きさ
123 / 127
番外編

閑話 フィリップのクリスマス 前編

しおりを挟む
※ ウルス視点で語るフィリップのクリスマス話を前後編で書いてみました。




朝、上司であり、幼馴染でもある王太子フィリップの執務室の扉をノックする。

「どうぞ~」

やけに明るい、フィリップの声が聞こえた。
条件反射的に警戒してしまう。

おそるおそる扉をあけると……、

「メリークリスマス、ウルス!」

そう言って、満面の笑みをうかべたフィリップ。
黒い笑顔じゃないから怒ってはいないようだが、上機嫌すぎるのも、これまた怖い……。

それに、今のはなんなんだ、あの耳慣れない言葉は……。

「フィリップ……。今、メリー……なんて言った? もしや呪いの言葉かなにかか……?」

「はあ、呪い? そんなこと、ぼくがするわけないよね。というか、なにか、ぼくに呪われることでもしたの、ウルスは?」

笑顔のままなのに、フィリップの目が一気に鋭くなった。
でた、猛禽類の目……。

「いや、まさか……。それより、呪いじゃないとしたら、一体なんなんだ、さっきの言葉は?」

「あ、メリークリスマスのこと? この前、異国から取り寄せた古い書物のなかに、異世界からきた渡り人のことが書いてあったんだ。その渡り人がいた世界では、神の子がいて、その神の子が生まれたことを祝う日があるんだって。で、その日に言う挨拶みたいな言葉がメリークリスマスってことらしいよ」

「そうか……。つまり、この国には全く関係ない、見ず知らずのだれかの誕生日を祝う言葉ってことか……。で、フィリップは、その誰かの誕生日が、なぜ、そんなに楽しそうなんだ?」

「ちょっと、ウルス! 誰かじゃなくて、神の子だよ。神の子といえば、この国で考えたら、誰を思い浮かべるでしょう? はい、ウルス、答えて」

この流れ、嫌な予感がする……。

「いや、別に。誰も思い浮かべない。神の子なんていない。いや、違うな。この国の民である俺たち全員が神の子だ。我ながら完璧な答えだ。ということで、異世界の話は終了。今日の仕事にとりかかるぞ、フィリップ」

「はい、ウルス、不正解! 答えはルイスに決まってるよ! 神の子といえば、天使。天使と言えば、ルイス! つまり、今日は、異世界でのルイスの誕生日みたいなもんだってこと。ぼくが楽しくなるのも当たり前だよねー」

「はあ? なんで、そうなるんだ……?」

朝っぱらから、わけのわからないことを聞かされ、頭が動かない。
ただ、ルイスが関わってくるとフィリップがめんどくさくなることだけは、はっきりわかる。

ということで、さっさと仕事にとりかかろうとしたら、「まだ、おわってないよー」と、フィリップ。

「異世界ではね、この日にプレゼントしたり、ごちそうを食べたり、ケーキを食べたりもするんだって」

「へえ……」

全く興味のわかない俺は手帳を手にとり、今日の予定を確認する。

「ということで、ウルスにもプレゼントを用意しました!」

「え……?」

思わず、眉間にしわをよせて、フィリップを見た。

「ちょっと、ウルス! なに、その嫌そうな顔は!? 普通、プレゼントっていったら、喜ぶもんでしょ?」

「普通はな。だが、俺はフィリップのプレゼントには嫌な思い出がある。はっきりいって、トラウマもんだ。だから、いらん!」

そう、忘れたくても忘れられない、あの、憎々しいグリーンの服。
いや、服に罪はない。憎々しいのはフィリップか……。

しかも、もう、二度と着ないと決めたのに、服の質がよすぎて、もったいなくて捨てることもできない。
さらに、どんなに腹黒であろうが、フィリップは王太子。
王太子の贈り物をむやみに他人にあげることもできない。

仕方なく、俺にそっくりの顔をした兄にもらってもらおうとしたら、「いや、俺ではそんな華やかなグリーンは着こなせない。ウルス、よく、それを着てみようと思ったな」と、更に傷をえぐられた。

ということで、結局、俺のクローゼットの奥にしまいこんでいる。

「あれは、ぼくのほうが、センスを疑われてショックだったんだよね。グリーンが似合わなさすぎたウルスのせいなのに」

「はああ!? ふざけんな!」

思わず、心の声がもれでてしまった。
王太子に向かって言う言葉じゃないけれど仕方がない。

が、フィリップは気を悪くするでもなく、それどころか、楽しそうに微笑んだ。

この顔はなにか企んでいる! 
警戒心マックスの俺にフィリップが言った。

「まあ、今日のプレゼントは服じゃないから。ウルス、安心して。ということで、大きいプレゼントと、小さいプレゼント、どっちがいい?」

「小さいほう」

即答した俺。

服ではないにしても、フィリップの考えは読めない。
俺にとって不要な物である可能性もおおいにある。
それならば、保存場所に困らないよう、小さい物のほうがいい。

そう、俺はあのグリーンの服で学習したんだ。

フィリップが探るように俺の目をのぞきこんでくる。

「ウルス、本当に小さいほうでいい? 大きいプレゼントのほうが素敵な物かもしれないけど?」

「いや、小さいほうで頼む!」

断固、宣言する俺。

「わかった。じゃあ、遠慮深いウルスには特別にふたつともあげまーす!」

「ふたつ!? いや、だから、いらないって言ってるだろう!?」

俺が声を荒げたところで、ノックの音がした。



※ 不定期ななか、読んでくださっている方、ありがとうございます! お気に入り登録、エール、いいねもありがとうございます! とても励みになっております! 

今回のお話にでてくるグリーンの服の詳しい話は「閑話 ウルスの休日」編のなかにあります。
明日、後編を更新する予定ですので、よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!

水鈴みき(みすずみき)
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!? ※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり

大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」 親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。 婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。 2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。 心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。 そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います! でも本当は… これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」 涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。 だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。 それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。 「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」 「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」 「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」 毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。 必死に耐え続けて、2年。 魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。 「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」 涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。

処理中です...