13 / 66
13. たった二日で、の回
しおりを挟むこのまま賢太郎に会うのは気まずいけど、放課後の部活では何も無かったように笑顔で話をしよう。
そう決めたって、何の気休めにもならなかった。
自業自得という言葉が急に質量を持って、潰れる限界まで重く全身にのしかかる。
昨日まではあんなに楽しみだった部活までの時間すら、今は苦痛へのカウントダウンでしかない。
けれど時間というものは本当に意地悪で、自分の捉え方次第で速く感じたり遅く感じたりする。
今はなるべく時間をかけたいのに、あっという間に放課後になってしまった。
今日も部活の主なメニューはストレッチ、筋トレとランニングだった。その後に昨日は無かった座学があるらしい。
今日も賢太郎と数名の一年生は遅れているらしく、姿は見えない。
正直、どんな顔をしたら良いのかとまだ決心がついていなかったからホッとした。
「宗岡くん、辛かったら早めに伝えてくれたらいいからね。倒れて怪我でもしたら大変だから」
山岳部男子の部長は黒縁の眼鏡を掛けた真面目そうな先輩で、部活が始まるとすぐに声を掛けに来た。
見た感じはそんなに筋肉が逞しそうには見えないのに、三年間この部活を続けてきたのだから体力はあるんだろう。
「はい、ありがとうございます。昨日はすみませんでした」
「いやいや、気にしなくていいよ。最初は辛いからね。辞めていく人も多いし、とにかく怪我とかしなければ大丈夫だから」
「はい……」
昨日倒れた事は部員全員に知られていて、顧問からも何人もの先輩からも「無理はするな」と言われた。
心配してくれているのだろうが、何となく初っ端から部内での居心地が悪くなったのを感じる。
「宗岡くん、大丈夫? 次はこうやって……」
「はい、大丈夫です」
一年生の部員達は早速仲の良いグループが出来て楽しく筋トレをしていたが、俺は何故か顧問から言われて二年生の先輩と組まされて指導を受けている。
ランニングは、「今日だけは大事を取って休め」と言われて走らせてもらえなかった。
ここでも腫れ物扱いされているのだと理解した。
ただ楽しく自然の中で過ごしたいと思っただけだったのにと、急に鼻の奥がツンとしてくる。
賢太郎の事があって、自分も敏感になっているんだろう。
先輩や顧問、みんなの優しさが素直に受け入れられていないのかも知れない、誰も俺を腫れ物扱いなんてしていないんじゃないかと考えてみたりもした。
だけど座学で登山の大会についての説明やルールを教えて貰ったあと、決定的な言葉が俺の耳に届いてしまう。
「なぁ、宗岡みたいにすぐ倒れる奴がメンバーにいたら、大会とかどうなるわけ?」
「まあなー。団体競技だから、その時は皆に迷惑かかるよな」
「辛そうな顔を見せずに登らないといけないってルールなのにさ、アイツめっちゃ運動音痴じゃん。無理だろ」
たった二日。
俺は部活終わりに、「皆に迷惑を掛けることになっては申し訳ないから、退部する」と顧問に伝えた。
それを聞いた顧問のゴリラも、ホッとした表情で「保健の先生に聞いたが、お前は昔から体が弱かったみたいだな。無理しない方がいい」と言った。
どこで間違えた情報なのか、昔から体が弱いなんてそんな話は知らない。だけどとにかくホッとしたような顧問の顔を見たら、否定する気も起きなかった。
段々と視界が滲んできたから、この二日間のお礼を言ってさっさと帰ることにする。
一年の奴らがチラチラこっちを見てたけど、居た堪れなくてその場を逃げるようにして早足で去った。
今日の部活、途中で他の一年生は全員来たのに賢太郎は結局来なかった。
「何だよ、『部活の時、なるべく傍でいるから』とか言っておいて。来もしないじゃないか。そこまで俺の告白が迷惑だったのかよ……」
自宅への帰り道、俺は歩きながら年甲斐もなくボロボロと涙を零して一人呟いた。
こんな人気のない道では誰も見咎める事もないだろうと、タオルで涙を拭き取りながら歩く。
「それじゃあ何であんな態度をしたんだよ。どっからどう見ても、両思いだと思うじゃないか……ッ」
大粒の涙を零しながらタオルで口元を押さえつつ、その中で恨み言を言う男子高校生は俺くらいだろう。
最近は色んなものをサイレンサーみたいにして使っているなぁとぼんやり思っていると、後ろから誰かが走って来る足音がした。
0
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
双葉の恋 -crossroads of fate-
真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。
いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。
しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。
営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。
僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。
誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。
それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった──
※これは、フィクションです。
想像で描かれたものであり、現実とは異なります。
**
旧概要
バイト先の喫茶店にいつも来る
スーツ姿の気になる彼。
僕をこの道に引き込んでおきながら
結婚してしまった元彼。
その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。
僕たちの行く末は、なんと、お題次第!?
(お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を)
*ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成)
もしご興味がありましたら、見てやって下さい。
あるアプリでお題小説チャレンジをしています
毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります
その中で生まれたお話
何だか勿体ないので上げる事にしました
見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません…
毎日更新出来るように頑張ります!
注:タイトルにあるのがお題です
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる