12 / 66
12. 透明の架け橋の回
しおりを挟む「昨日賢太郎から大体は聞いたけど、ヒカルと賢太郎の話、今度はヒカル目線で知りたいなー。ちゃんとはじめから話してくれよ。な?」
ほんの少し前には珍しくクソ真面目な顔をしていた癖に、今はいつもの表情に戻ったダイ。
俺はダイに異世界でのシャルロッテとカイルの話をした後に、アウトドアショップで再会した時の様子を語った。
それから部活で倒れて、保健室で賢太郎と話をしたことを。
「なるほどな」
そう言ったっきり、ダイはまた難しそうな顔で顎に手をやった。
普段あまり真面目な顔をすることがないダイが、こうも頻繁に眉間に皺を寄せているのを見ると不安になる。
「おい、何が『なるほどな』なんだよ。そんな真剣な顔して聞く話か? 賢太郎から聞いてたんだろ?」
とうとう不安な気持ちが膨らみすぎて、今にも破裂しそうな危うさを感じた俺はダイに詰め寄った。
「ヒカル。カイルとシャルロッテならともかく、お前達この世界では男同士だろー? それでも賢太郎の事が好きなのか? 本気で?」
「何でそんな事言うんだよ……」
「お前、昔から思い込みが激しいところがあるだろ? シャルロッテの気持ちが自分の気持ちだと思い込んでるんじゃないのか?」
何でダイがここまで俺に言うのか分からなかった。
「シャルロッテだって俺なんだから、別に一緒でもおかしくないじゃないか」
「……じゃあ、シャルロッテとカイルの事が無ければ? 単にフェルネを譲ってくれた優しい奴ってだけの賢太郎の事、好きになったか?」
(そりゃあ確かに思い込みが激しいって良く言われるけど! この世界で賢太郎に出会ってまだ間がないけど! それでも俺は……)
「俺は、ちゃんと賢太郎に恋してるんだよぉぉぉ!」
どうしてだか俺は、隣に座るダイに抱きついて絶叫していた。
チャリッと音を立てて耳元のピアスが揺れた。
ダイのブレザーの肩部分に顔を埋め込んで、なけなしの理性でその身体をサイレンサーの如く利用する事を思いつき、俺はそこで思いっきり叫んでいた。
「俺は、賢太郎が好きなのにぃぃぃ!」
「分かったよ、分かったって」
「俺って欲しいものは絶対手に入れないとヤダって思っちゃうからさ。確かにそれで先走った感は否めないけど……」
情けないが、俺はボロボロ涙を流してダイのブレザーを盛大に汚していた。
そんな俺にダイは困ったような声を掛けながらもポンポンと肩を叩いて慰めてくれる。
親友の手はどこまでも温かくて優しい。
「きっと……、賢太郎も俺のこと……、好きでいてくれてると、思ったのに……」
嗚咽が止まらず涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をブレザーから離すと、ツウッと透明の橋が架かった。
汚してしまった親友の制服を急いでハンカチで拭き取りながら、ダイが頷きを交えてちゃんと聞いてくれているのを確認した。
そしてそれに安心した俺は話を続ける。
「なんで……無視するんだと思う……? やっぱり男同士だから……あの時とは、違うってことかな?」
カイルとシャルロッテは夫婦だったけど、賢太郎と俺は男同士で……。だから、好きにはなれないって事なのか?
(それなら何であんなに優しくしたんだ? これから宜しくって、どういう意味だったんだ?)
時々頷きながら、黙って話を聞いてくれていたダイが小さく唸ってから口を開いた。
「思ったよりも事態は複雑みたいだからさ、しばらく俺に任せろよ。俺から賢太郎に話してみるからさ。ヒカルは賢太郎に会ってもいつも通りにしてろ。な?」
事態は複雑、それは一体どういう意味なのか。気にはなったけど、ダイがいつものニカっとした明るい顔で笑いかけてきたから、俺はつい了承の証に頷いてしまった。
「よっし! それじゃ、このまま一時間目はサボろうぜ!」
「サボって何するんだよ?」
「ヒカルがどう考えてるのか、じっくりと教えてくれよ。俺は二人の味方だからさ、絶対に悪いようにはしない」
「うん……」
それから一時間目が終わるまで、俺はシャルロッテの時のことも含めて一切合切ダイに自分の気持ちをぶちまけた。
それはもう赤裸々に。クッションに向かって叫んだことまで話した。
ダイは時々頷きながら、バカみたいなテンションになって手足をバタつかせる俺の話を聞いてくれた。
(そういえば、ダイと仲良くなったきっかけって何だったっけ?)
頭の中の古びた引き出しのつまみを引っ張ってダイとの出会いを思い出そうとすると、ツキンと軽く頭痛がした。
小さな警告は、それだけで何故か俺に大きな不安を与える。
先日酷い頭痛に襲われたばかりの俺は何だか怖くなって、それ以上引き出しに手を掛けるのをやめてしまった。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
無口なきみの声を聞かせて ~地味で冴えない転校生の正体が大人気メンズアイドルであることを俺だけが知っている~
槿 資紀
BL
人と少し着眼点がズレていることが密かなコンプレックスである、真面目な高校生、白沢カイリは、クラスの誰も、不自然なくらい気にしない地味な転校生、久瀬瑞葵の正体が、大人気アイドルグループ「ラヴィ」のメインボーカル、ミズキであることに気付く。特徴的で魅力的な声を持つミズキは、頑ななほどに無口を貫いていて、カイリは度々、そんな彼が困っているところをそれとなく助ける毎日を送っていた。
ひょんなことから、そんなミズキに勉強を教えることになったカイリは、それをきっかけに、ミズキとの仲を深めていく。休日も遊びに行くような仲になるも、どうしても、地味な転校生・久瀬の正体に、自分だけは気付いていることが打ち明けられなくて――――。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】いつだって二人きりがよかった
ひなごとり
BL
高校二年生の未雲(みくも)は、あることがきっかけで転校生の柊明(しゅうめい)と出会い行動を共にするようになる。夏休みの間は観光と称して二人で会っていたが、美形で愛想も良く成績優秀な柊明とは新学期が始まれば自ずと関係も薄くなるだろうと未雲は考えていた。
しかし、学校が始まってどれだけの生徒に話しかけられようと柊明は未雲を優先した。
いつか終わりが来るものだと自分に言い聞かせても、未雲はどんどん彼との関わりにのめり込んでいき、ついには後戻りできないところまで落ちていく。
同級生だった二人が互いに依存、執着してすれ違って、間違えたり葛藤したりしながらも時間をかけて成長していく話。
高校生編と大学生編があります。
完結しました!
※2025.10.28 改稿
◇ ◇ ◇ ◇
お気に入りなど反応ありがとうございます。感想もいただけると嬉しいです!
もしよろしければX(旧Twitter)のフォローお願いします!→@Mi144_kaf
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる