竜皇女と呼ばれた娘

開拓編

またいつか

エリザ達がカラミティに滞在し始めてから数日が経った
ヴァイオレットの仲間達が船を修復を手伝ったことで予定よりも大分早く終わり翌日にはエリザ達が帰ることとなった
なので今日は皆で火山地帯までやってきて温泉に浸かりにきた


『はぁ……いいお湯ですね』
『ほんと……ちょっととろみがあって肌がすべすべになるわ』
『気に入ってもらえてよかったよ。ここの温泉を引いていつかはどこでも入れるようになったらいいなと思ってるんだ』


大陸の名物にしようとしている温泉の感想をもらいながら疲れを癒す面々
エリザ達とゆっくりできるのはこれで最後となる、そこでヴァイオレットはあの話題を切り出した


『あのさ……エリザちゃんのことを襲った犯人のことなんだけど……』
『あぁ、そういえばまだその話をしていませんでしたね』
『少なくとも私達の中でヴァイオレットのことを犯人だなんて疑ってる人なんていないわよ』
『え？そうなの？』
『あ、当たり前じゃないですか。ヴァイオレットさんの事を知っていればそんな事をする人じゃないってすぐ分かります』
『私達はヴァイオレットさんが犯人だと思ってここに来たわけじゃありません。ただ純粋にあなたのことが心配だったんですよ』
『そっか……そうだよね。でもそうしたら犯人は誰なんだろう』
『そちらは私達の方でなんとかしますのでヴァイオレットさんは気にしなくて大丈夫ですよ』
『そうよ、今はそんな事忘れて楽しい話をしましょ』
『うん！』


その後は温泉にゆっくり浸かりながら談笑をした
温泉を堪能した後は仲間達と共に宴を開き最後まで笑って過ごした
そんなこんなで翌日がやってきてエリザ達との別れの時がやってきた


『お別れ……だね』
『別にこれで今生の別れってわけじゃないでしょ。誤解も解けたんだし……』
『ま、またヴァイオレットさんに会いに来ちゃダメですか……？』
『また来てくれるの？』
『王都に帰ったら色々と調べてみます。いつになるかは分かりませんがその件が片付いたらヴァイオレットさんが嫌でなければ報告しに来てもいいですか？』
『勿論だよ！また遊びに来て！』


始め再会した時は拒絶するほどだったが、和解した今ではまた会えることにヴァイオレットは素直に喜んだ
他の仲間達との挨拶を済ませていきミリアーナの順番がやってきた


『ミリアーナさん、短い間でしたがあなたと旅ができてよかったです』
『エリザ様、そして他の皆さんも本当にありがとうございました。この恩は一生忘れません』
『それはこちらの台詞です。ミリアーナさんがいなければここに来ることはできませんでした。ありがとうございました』


互いに礼を言い合った後に抱擁を交わすミリアーナとエリザ
挨拶を終えエリザ達が船に乗ると海の中からクラーケンが姿を現した


『じゃあクラちゃん、皆を港までよろしくね』
『ほ、本当にクラーケンを従えてるのね』
『あの時はこちらも必死だったとはいえ手荒な真似をしてしまいすみませんでした』


クラーケンに向けて謝罪をするとクラーケンは攻撃された触手を見せ全く問題ないことを示した
クラーケンに押されながら徐々に遠ざかっていくエリザ達にヴァイオレットは別れを告げた


『またねー！』


姿が見えなくなるまで手を振り続け、船が水平線の彼方に消えると暫しの静寂に包まれた


『ヴァイオレット、寂しい？』
『ちょっとね、でもここには皆がいるしもう会えないわけじゃないって言ってたしね。また来た時の為にもっとここを立派にしておかないと。頑張らないと！』


またいつかやって来る友の為にこれまでより一層のやる気を見せたヴァイオレットは仲間達と共にカラミティへと帰っていった