Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第一章 《第一部》ヒーラー 少年篇

第6話 「鍛冶屋の老人、ゲンじいが残した黒曜石の刃」

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旅に出ることにした俺とレイラは、まずこの村をじっくり見て回ることにした。
俺たちが住むコルネット村は小さな村だ。畑仕事に精を出す大人たち、野山を駆け回る子供たち。田舎らしい、のどかな風景が広がっている。

しかし、どんなに小さな村でも商業を営む店くらいはある。俺達がまず向かったのは鍛冶屋。父がいつもお世話になっているという店だ。

「まずはレイラの剣だね」

「そこら辺に落ちてる木の棒でいいよ」

「ダメだよ!すぐ折れるじゃないか」

レイラは強いが、時々抜けたことを言う。それが彼女らしいと言えばそうなのだが、今回は真剣に選ぶべきだと思う。

店に入ると、店主のじいさんが俺たちに気づいた。村の鍛冶屋はこのゲンじいことゲンゾウさん。父も母もそう呼んでいたけれど、俺も本当の名を知らない。

「おや、こいつぁ小さなお客さんだな。……うん?おおー!お前ガーフィんとこのガキか!」

じいさんは威勢よく声を張り上げる。白髪と長い髭、そして大きな筋肉が特徴的だが、背は俺たちとあまり変わらないくらい低い。

「なぜ、僕がガーフィの息子だと分かったんですか?」

「ん?そりゃよく似てるからな!顔は父親似の戦士顔だな!髪は……母親譲りか?」

その言葉に、少しだけ安心した。気さくな人のようだ。

「ってことは、お前やっぱり剣術の才能だったか!よかったな!母親の才能の方じゃなくて」

……この人も母さんを下げるようなことを言うんだな。

「……いえ、僕は魔法の方です。母の血を受け継ぎました」

「なんと。その戦士顔で魔法の才能だったか」

相変わらず失礼な言い方だが、悪気はなさそうだ。それにしても、なんだか母さんの才能を軽んじる声を聞くたび、胸の中がざわつく。

「で、そこのお嬢さんは?」

「レイラ・セレスティアと言います。け、剣術の才能があり、剣を……見に来ました」

レイラは相変わらず人見知りだ。昔からの癖で、こうして言葉に詰まる。

「その歳で剣を持つと?……訳アリか?剣を持つということは剣士になるということだが、お嬢さんにその覚悟はあるのかい?」

「もう剣士です」

「そうか!なら売ってやる」

思った以上にあっさりしていた。もっと「子供には早い」などと説教されるかと思ったが、意外だ。

俺は安心したのと同時に、これまでの経緯をじいさんに話すことにした。

「実は母さんが呪いに掛かりまして――」

……
…………
………………

「……なるほどのう。旅の為の剣か。なら業物より扱いやすい剣がよかろう。これなんてどうだ?」

じいさんが奥から持ってきたのは黒く光沢のある短剣だった。

「こいつぁ黒曜石で作られたショートソードだ。切れ味が落ちにくい逸品だ。どうだ?」

それを見た瞬間、俺は思った。これが本当に業物じゃないのか、と。店に並べられている剣よりも高そうに見える。

「えっと、お金はあまりなくてこんな高いのは……」

「金なんて要らねぇ!ガーフィは常連だ。しかもそいつのガキときたぁ!金なんて取れるか!」

「で、でも――」

「ならこうしようガーフィのガキ」

じいさんは店から体を乗り出して、言った。

「アリアの目を覚ますことが出来れば、倍にして金を寄越せ。それなら誰も損はしないだろ?まぁ最終的に得をするのは俺なわけだ!ガッハハハハ!!」

この人、本当にいいオヤジだな。父さん以外でここまで信頼できる大人に会ったのは初めてかもしれない。最初の印象は最悪だったが。

「ありがとうございます。ではありがたく頂戴します」

「ケッ!ガーフィのガキにしては礼儀正しいやつだな。もっと気楽に行こうや」

「オヤジさんの名前お聞きしても?」

「おらぁゲンゾウだ。この村ではゲンじいって呼ばれてる。ガキ、お前の名は?」

「僕はアスフィです。アスフィ・シーネット」

「アスフィか!覚えたぜ。……アスフィ、この剣はお前のもんだ持ってけ!」

ゲンじい、あんた最高だよ。でも、結局本当の名は教えてくれなかった。

「ありがとーーー!ゲンじーーーー!!お元気でーーーー!!」

「おめぇもなぁーガキーーー」

そんな楽しい空気の中、ふと横を見ると、レイラは地面のアリを数えていた。よほどあのじいさんが苦手なのだろうか。いや、多分人見知りなだけだなこれは。

「ねぇ……アスフィ……その剣、レイラのじゃないの?」

「え?ああ、そうだった!ごめん!」

ゲンじいの魅力に惹かれすぎて、ついレイラの存在を忘れてしまった。ゲンじいも俺が使うものだと思って俺に渡したのだと思う。だが結局、あの黒曜石のショートソードはレイラのものになった。

「……ごめんよ、ゲンじい」

そう思いながらも、俺はまた一つ大切な出会いを経験したのだった。
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