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第二章 《第一部》ヒーラー 王国篇
第25話 「再生と消滅の境界線」
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彼女は言い放った。「私は『あらゆる魔法を扱える』才能です」、と。
俺は耳を疑った。本来、生まれた時に発現する『祝福』は一つだけ。
それは攻撃魔法なら攻撃魔法しか使えないし、ヒーラーなら支援魔法、防御魔法、回復魔法を扱える。俺はヒーラーではあるが、回復魔法しか使えない。だというのに、彼女はその全てを扱えると言っているのだ。
「才能って一つじゃないんですか……?」
「一つです。だから言ったでしょう。私の才能は『あらゆる魔法を扱える』、これ一つです」
「……ってことは、攻撃も、防御も、支援も、回復も!全部出来るってことですか?」
「まぁ、理論上そうですね」
「そんなの卑怯だ!僕に勝ち目がないじゃないか!!」
こんなの割に合わない。こっちは攻撃できないというのに、相手は一方的に攻撃ができる。こんなの勝負じゃない、ただのイジメだ!
「だから言ったでしょう。私が勝つのは目に見えていると」
「アスフィなら勝てる……頑張って」
レイラが応援している。正直、応援されても勝てる見込みがない。だが、この生意気な女に一泡吹かせてやりたい……!ただちょっと可愛くて色んな魔法を使えるだけの女じゃないか!……ムリだ。
「アスフィ、君は今日まで何を学んでいたのか思い出せ」
エルフォードが俺に言ってきた。俺は今まで剣術を習ってきた。握っていたのは竹刀だ。だが、ここに来て久しぶりに手にした母の杖。思い出せ、俺がやるべきこと。家を出た目的を……!
「すぅ……はぁ……大丈夫です」
俺は深呼吸をした。そして場は静まり返る。
「では、始めましょう。先行はあなたに譲ります」
俺は先行を譲られた。俺は回復魔法しか使えない。今まで握っていたのは竹刀……そして今、両の手で握っているのは母の杖。これは魔法の戦いだ。真正面から戦ってもただ一方的にやられるだけだ。しかしなぜだろう。俺は窮地に立たされている、この圧倒的不利な状況にも関わらず、負ける気がしない。
――そして戦いは幕を開ける。
「『ヒール』!!」
俺は自らに『ヒール』をかけ、スタミナを回復しながら、この無駄に広い道場を走り回った。剣術修行で鍛えた肉体、これは無駄にならなかった。動き続けることで攻撃の的を絞らせない。単純な作戦だが、俺にはこれしかない。
「……走り回るだけですか。まあ事前に回復魔法しか使えないと聞いているので、それも仕方ないことですか……では私から攻撃させて頂きます」
そう口にした彼女は詠唱を唱え出す。
「天から授かりしこの『祝福(ちから)』」
なに……?詠唱だと!?ここにきて初めて聞いた魔法の詠唱。たしかに母さんは詠唱を唱えなくても魔法を使えた。
「ああ、嵐よ。草原を焼き付くさんとする炎(ほむら)の力よ」
しかもなんか結構長い。これはまずい気がする……!俺の直感がそう答えている。
「今こそ全てを焼き払い荒れ狂え」
来る……!!なんかでかいのが……!!!
『爆炎の嵐(ファイアーストーム)!』
その瞬間、道場が熱風で満たされた。
轟音とともに巻き起こる炎の嵐。俺の視界は一瞬で灼熱に染まり、全身が焼かれる。皮膚が剥がれ、肉が焦げる臭いが鼻を突いた。
「ぐっ……ぁあああ!!」
あまりの激痛に叫びそうになるが、歯を食いしばる。ここで止まったら終わる……!俺はすぐさま魔法を唱えた。
「『ハイヒール』『ハイヒール』『ハイヒール』!!」
焼かれては回復し、また焼かれては回復する。その繰り返し。意識が朦朧とするが、俺の魔力は底を尽きていない。まだ耐えられる……!まだ……やれるっ!!
そして、炎の嵐が止むと場は静まり返った。
「…………は!しまった!またやってしまった……」
ルクスは魔法を唱え終わった後、一人頭を抱えていた。
「……見知らぬ少年を殺してしまった……」
ルクスは静かに呟く。
「……誰が死んだって?」
「………………え」
俺は生きていた。あんなデカいの回避出来るわけが無い。俺じゃなきゃ死んでいただろう。俺は一瞬死を覚悟した。だが俺は唱え続けた。
道場の中はまだ熱い。暑すぎて喉が焼けるようだ。
「……はぁ……ルクス……やってくれるね」
「……あなたは何者ですか……どうしてアレを喰らって生きて――」
今は治癒している体だが、思い出すだけで痛い。皮膚がただれ落ちる感覚……早く楽にしてくれとさえ思った。だが俺には目的がある。母さんを目覚めさせるという目的が。それを何度も思い出し、回復魔法を唱え続けたのだ。
「……じゃあ次は僕の番だね」
「……ふぇ?」
この時ルクスは酷く恐怖を覚えたそうだ。彼女は、無敗の魔法使い。魔法使いたちの間では広く有名な者だった。それを田舎育ちの俺とレイラは知らなかった。
だが無敗の記録も今日までだ――
【――それでこそキミだ】
「『 消失する回復魔法』」
俺はそう唱えた。誰に教わった訳でもない。ただ、頭に浮かんできたその言葉を。
「うっ……ゔ……息が……でき……ない」
喉に手をやり呼吸を求めるルクス。
「そこまでっ!!」
道場にエルフォードの声が響いた。
「アスフィ!君の勝ちだ……アスフィ!?聞いているのか!?」
エルフォードの声は聞こえていた。だが、止めることが出来なかった。
「……アスフィ!!もうやめて!!その人死んじゃうよ!」
レイラが叫ぶ。
そして魔法を止めない俺に、道場の外から見ていたエルザが割り込んできた。
「仕方ない……!アスフィ、君のためだ」
エルザが道場に入り、俺の腹を剣の鞘で突いた。
「ゔっ!?」
俺はその場に倒れた。
俺は耳を疑った。本来、生まれた時に発現する『祝福』は一つだけ。
それは攻撃魔法なら攻撃魔法しか使えないし、ヒーラーなら支援魔法、防御魔法、回復魔法を扱える。俺はヒーラーではあるが、回復魔法しか使えない。だというのに、彼女はその全てを扱えると言っているのだ。
「才能って一つじゃないんですか……?」
「一つです。だから言ったでしょう。私の才能は『あらゆる魔法を扱える』、これ一つです」
「……ってことは、攻撃も、防御も、支援も、回復も!全部出来るってことですか?」
「まぁ、理論上そうですね」
「そんなの卑怯だ!僕に勝ち目がないじゃないか!!」
こんなの割に合わない。こっちは攻撃できないというのに、相手は一方的に攻撃ができる。こんなの勝負じゃない、ただのイジメだ!
「だから言ったでしょう。私が勝つのは目に見えていると」
「アスフィなら勝てる……頑張って」
レイラが応援している。正直、応援されても勝てる見込みがない。だが、この生意気な女に一泡吹かせてやりたい……!ただちょっと可愛くて色んな魔法を使えるだけの女じゃないか!……ムリだ。
「アスフィ、君は今日まで何を学んでいたのか思い出せ」
エルフォードが俺に言ってきた。俺は今まで剣術を習ってきた。握っていたのは竹刀だ。だが、ここに来て久しぶりに手にした母の杖。思い出せ、俺がやるべきこと。家を出た目的を……!
「すぅ……はぁ……大丈夫です」
俺は深呼吸をした。そして場は静まり返る。
「では、始めましょう。先行はあなたに譲ります」
俺は先行を譲られた。俺は回復魔法しか使えない。今まで握っていたのは竹刀……そして今、両の手で握っているのは母の杖。これは魔法の戦いだ。真正面から戦ってもただ一方的にやられるだけだ。しかしなぜだろう。俺は窮地に立たされている、この圧倒的不利な状況にも関わらず、負ける気がしない。
――そして戦いは幕を開ける。
「『ヒール』!!」
俺は自らに『ヒール』をかけ、スタミナを回復しながら、この無駄に広い道場を走り回った。剣術修行で鍛えた肉体、これは無駄にならなかった。動き続けることで攻撃の的を絞らせない。単純な作戦だが、俺にはこれしかない。
「……走り回るだけですか。まあ事前に回復魔法しか使えないと聞いているので、それも仕方ないことですか……では私から攻撃させて頂きます」
そう口にした彼女は詠唱を唱え出す。
「天から授かりしこの『祝福(ちから)』」
なに……?詠唱だと!?ここにきて初めて聞いた魔法の詠唱。たしかに母さんは詠唱を唱えなくても魔法を使えた。
「ああ、嵐よ。草原を焼き付くさんとする炎(ほむら)の力よ」
しかもなんか結構長い。これはまずい気がする……!俺の直感がそう答えている。
「今こそ全てを焼き払い荒れ狂え」
来る……!!なんかでかいのが……!!!
『爆炎の嵐(ファイアーストーム)!』
その瞬間、道場が熱風で満たされた。
轟音とともに巻き起こる炎の嵐。俺の視界は一瞬で灼熱に染まり、全身が焼かれる。皮膚が剥がれ、肉が焦げる臭いが鼻を突いた。
「ぐっ……ぁあああ!!」
あまりの激痛に叫びそうになるが、歯を食いしばる。ここで止まったら終わる……!俺はすぐさま魔法を唱えた。
「『ハイヒール』『ハイヒール』『ハイヒール』!!」
焼かれては回復し、また焼かれては回復する。その繰り返し。意識が朦朧とするが、俺の魔力は底を尽きていない。まだ耐えられる……!まだ……やれるっ!!
そして、炎の嵐が止むと場は静まり返った。
「…………は!しまった!またやってしまった……」
ルクスは魔法を唱え終わった後、一人頭を抱えていた。
「……見知らぬ少年を殺してしまった……」
ルクスは静かに呟く。
「……誰が死んだって?」
「………………え」
俺は生きていた。あんなデカいの回避出来るわけが無い。俺じゃなきゃ死んでいただろう。俺は一瞬死を覚悟した。だが俺は唱え続けた。
道場の中はまだ熱い。暑すぎて喉が焼けるようだ。
「……はぁ……ルクス……やってくれるね」
「……あなたは何者ですか……どうしてアレを喰らって生きて――」
今は治癒している体だが、思い出すだけで痛い。皮膚がただれ落ちる感覚……早く楽にしてくれとさえ思った。だが俺には目的がある。母さんを目覚めさせるという目的が。それを何度も思い出し、回復魔法を唱え続けたのだ。
「……じゃあ次は僕の番だね」
「……ふぇ?」
この時ルクスは酷く恐怖を覚えたそうだ。彼女は、無敗の魔法使い。魔法使いたちの間では広く有名な者だった。それを田舎育ちの俺とレイラは知らなかった。
だが無敗の記録も今日までだ――
【――それでこそキミだ】
「『 消失する回復魔法』」
俺はそう唱えた。誰に教わった訳でもない。ただ、頭に浮かんできたその言葉を。
「うっ……ゔ……息が……でき……ない」
喉に手をやり呼吸を求めるルクス。
「そこまでっ!!」
道場にエルフォードの声が響いた。
「アスフィ!君の勝ちだ……アスフィ!?聞いているのか!?」
エルフォードの声は聞こえていた。だが、止めることが出来なかった。
「……アスフィ!!もうやめて!!その人死んじゃうよ!」
レイラが叫ぶ。
そして魔法を止めない俺に、道場の外から見ていたエルザが割り込んできた。
「仕方ない……!アスフィ、君のためだ」
エルザが道場に入り、俺の腹を剣の鞘で突いた。
「ゔっ!?」
俺はその場に倒れた。
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