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氷の姫と悪魔の中間試験
Period.4 合宿最終日です!
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僕───ローラン・マゼストは悠斗君を目覚めさせるために水晶に意識を移したファーブニルと部屋に残った。
「それで、僕は何をすればいいんだい?」
『おめぇさんに残ってもらったのはそれもあるがその前に聞きてぇことがある』
「聞きたいこと?」
『そうだ、デュランダルはどうした?ローラン・デミディーユ』
……………………バレていたのか。
「さて、なんのことかな?」
『しらばっくれても無駄だぜ?何度も転生してその姿を眩ませ続けたらしいが、俺ら古参からしたらお前なんて一目見れば一発だ』
そこまでバレてしまったなら仕方が無いか……。
「そうだよ、僕はローラン・デミディーユ。元シャルルマーニュの一人にして、『七極騎士』の一人さ。今となってはただの学生だけどね」
それを聞いたファーブニルはやはりといった様子だった。
『ケッ!やっぱりそうかよ。それで、相棒のオリヴィエはどうしたよ?』
「彼女とは別れたよ……僕の勝手にいつまでも付き合わせても悪いからね。そんなことより今は悠斗君だ、早く助ける方法を教えてくれ」
悠斗君の方に向き直り、ファーブニルに指示を促す。
『まずはおめぇの『魔力無効領域』を発動させろ。させたらその手をそこの坊主の紋様に触れるんだ』
言われた通りに、悠斗君の左腕に触れる。腕はもうほとんど凍っており、刺すように冷たい。
『そのままキープだ、絶対に切らすなよ?今から俺があの坊主の意識を引っ張り出してやるからな』
「何するつもりだい?」
『今、お前さんに開いてもらった経路から坊主の意識の中に入るんだよ』
そう言ってファーブニルは本当に悠斗君の中に入っていってしまった。
今までの中で他人に『魔力無効領域』を繋げるのは初めてだった。繋がっている間、ずっと悠斗君のことが流れ込んでくる。記憶然り、感情然り……。こっちの意識が無くなりそうだ、頼むから早く戻ってきてくれよ、ファーブニル。
───Fervnir───
一応氷の嬢ちゃんの魔力に穴開けてもらってそこから侵入することには成功したが、ここからどうするかね。まさかあのクソ陰湿ドラゴンですら食い止められないなんてな。ククク、これはあいつをいびるネタが増えたと喜ぶべきかね?
ファーブニルが泳いでいる空間は悠斗の心の中、もっと言えば悠斗の魔力の中だ。
「こりゃひでぇな……ここまで侵食が進んでいるなんてよ、よく耐えてたぜあの坊主。多分ここら辺にいると思うんだが……お!いたいた。」
現在悠斗の魔力は半分が凍らされており、今もパリパリと音をたてながら広がっている。この状態になるまでよく平気でいられるものだとファーブニルは賞賛を送った。
辺りを見渡して探してみると助けを探してキョロキョロしている小さい一人の人間を見つける。
「おーい坊主!迎えに来てやったぞ!」
自分の名前が呼ばれたことに気がついた様子の坊主は上を見上げてその声がする方を探している。
「こっちだこっち!俺だよ!ファーブニルだよ!」
俺の姿を見た坊主は本当に嬉しそうな顔をしていた。
「ファーブニル!」
───Haruto───
「あの野郎……勝手に追い出しやがって、ここは俺の中だぞ?」
ファーブニルが助けにくる少し前、魔力の中核から追い出された悠斗は半分が凍らされた空間を歩いていた。
「にしても、ほんとにすごいな……これが全部氷翠の魔力のせいで起こってるっていうのかよ。俺ほんとにこのまま死んじまうのかな?……いや、アジ・ダハーカが三日は持たせるって言ってたんだ!伝説の邪龍の言うことを信じよう」
気を改めて凍った空間を再び歩き回るがどこにも出口がない。ただあるのは氷──ただただ凍った世界が広がるだけだった。
ひたすら歩いていると見覚えのある場所に辿り着く。あの少年と出会った場所だ。あれから一度も見ていないが、自分の推測が正しければあの少年がアンリ・マンユだということになる。しかしあの子は悪神と呼ばれるほど悪い奴に見えなかった。
「ん?なんだこれ?」
そこで見つけたのは俺よりも一回り度大きな青い氷塊だった。その中をよくよく見ると、その中に目を瞑った女性がいた。
「おーい!聞こえますかー!」
声をかけてみてもなんの反応も無い。
「これぶっ壊せないんかな?」
試しに氷を殴ってみる。しかし氷には傷一つ付かなかった。それだけではなく、氷に触れた俺の拳が凍ってしまっている。
「うわ!手が凍ってやがるよ……くっそぉ、ほんとに帰れないじゃんかよ……誰か助けに来てくれないかなー」
そう一人呟きながらまた歩き出す。するとその時、聞き覚えのあるふざけた声が聞こえてきた。
「おーい坊主!迎えに来てやったぞ!」
「ファーブニル!?」
周りを見渡してみるが、ファーブニルの姿が見えない。
「こっちだこっち!俺だよ!ファーブニルだよ!」
後ろを振り向くと巨大な全身金のドラゴンが俺に向かって急降下してきた。
「ファーブニル!迎えに来てくれたのか!てゆうかお前でかいなぁ、よくここでアジ・ダハーカと話すけどあいつよりでかいんじゃねぇの?」
俺のそばに降り立ったファーブニルは頭を地面につけて俺に乗るように催促する。
「今はそんなことどうでもいいだろこの馬鹿。ほら乗れ、早くここから出るぞ」
「マジでありがたいよ!このままでられなかったらどうしようかと……」
ファーブニルが飛び上がり、そのまま上を目指す。
「なぁ坊主、あいつはこのことについてなんか言ってなかっのか?」
「あぁ、そういえばな、三日は持たせるからそれまでにどうにかしろってさ」
「三日……多分だがそれは安静にしていた場合の話だな、これからのことを考えると多分明日がタイムリミットだ」
「はぁ!?全然言ってたのと違うじゃねぇかよ!それってつまりザスターとの試合中に限界が来るってことじゃねぇか!」
「んなこと俺に怒んじゃねぇよ!だからそれまでには絶対なんとかしろよ。いいな?」
ちっくしょぉ、そんな理不尽な話普通無いだろ……明日までに……しかもそれまであいつと戦えないってことはアンリ・マンユを俺だけで倒さなきゃいけないってことだろ?俺だけで『紅煉』使えるか心配しかない。
「そろそろ出るぞ?ローランのやつもそろそろ限界に近いだろう。この経路が閉まる前に出るぞ」
「ローランがいるのか?」
「そうだよ、あいつの『魔力無効領域』で氷の嬢ちゃんの力を無効にしてもらってここまで来たんだ。後でちゃんとお礼言っとけよ?」
「わーってるよ、お?あの黒い穴が出口か?」
少し先にある黒い穴を見るとファーブニルは少し厳しそうな顔をした。
「チッ、もうあそこまで小さくなってやがるか、坊主、スピード上げるからちゃんと捕まっとけよ!」
「え?ちょ……なに?うわぁぁああああああああああ!」
そのままものすごいスピードで穴に入る。そこに入るといつも俺とアジ・ダハーカが会う空間にそっくりな場所に出た。
「もう降りていいぞ?ここは坊主の意識の中だからな」
言われた通りにファーブニルの背中から降りる。すると何もないところに立った。
「それじゃぁ俺はここでずらかるぜ?またこの姿で会える時が来たらよろしくな?」
「おう、正直ここからどうすればいいかさっぱりだけどありがとな」
礼を言うと大きな口を開けて笑い、また上へ向かって飛んで行った。
───Haruto returned───
目覚めると俺はベットの上で仰向けになっていた。身体を起き上がらせて周りを見渡すと椅子に座って寝ているローランの姿があった。
顔から汗が噴き出していて、とても疲れた顔をしていた。
『流石のこいつもあれだけの長時間坊主に繋ぎ続けるのはキツかったか』
近くからファーブニルの声がした。探してみると俺の上に一つの水晶が置かれていて、それが金色に鼓動している。
「そんなとこにいたのかよ」
『ひとつ言っておかなきゃならんことがあってな。俺達は氷の嬢ちゃんに坊主のことを教えた』
───ッ。
驚き声をあげようとしたのを抑えて、長いため息をつく。
そうか……教えたのか……
『なんでだよ……とは言わないんだな』
「本当は言いてぇよ。でも、言わなきゃいけなかったんだろ?それくらい俺でもわかるさ」
『そうかよ』
「それで、氷翠はなんか言ってたのか?」
『いんや、あの嬢ちゃんはなんも言わなかったよ。今はまぁ、多分自室で泣いてるだろうよ』
「また泣かせちゃったよ。それじゃぁ俺はみんなに謝りに行きますかね」
『あっ!ちょっと待てまだ──』
ベットから起き上がろうと体を持ち上げると腕から「パキッ」と音が鳴った。なった腕を見てみるとヒビが入っており、ちょっとでも力を加えれば割れてしまいそうだった。
『だから待てって言ったのによぉ、おめえさんの腕はまだ治りきってねぇんだ、まだ安静にしてな。俺は嬢ちゃんたちを呼んでくるよ』
ファーブニルがそう言うと水晶の中にあった金色の輝きがなくなった。
凍ったままの腕を見ていると本当に自分が侵食されていってるのを実感する。ちょっと力を込めればすぐにヒビが入り、すぐに修復される。この脆さは氷であることから、そしてこの修復力は『氷姫の慈悲』からきているんだろう。てことは今の俺の中にはアジ・ダハーカとあの氷姫の二人がいることになる。そして氷翠には何も無い……待てよ……?他人から力を抜き取ると死ぬはず、実際にそれで氷翠も一度死んでるわけだし。氷翠の力を俺が奪ったと考えると、なんで氷翠は死んでいないんだ?
「悠斗、もう大丈夫なの?」
部屋と扉が開けられ、里奈先輩と結斗さん、そしてら氷翠が入って来る。
「はい、心配かけてすみませんでした。でもまだ左腕が凍ったままです」
「そう……今からアジ・ダハーカと話がしたいのだけれど呼んでもらえる?」
「あーその、今ちょっと呼べないんですよ」
俺が意識を失っている間に起こったことを全て話した。
「それじゃぁアジ・ダハーカは悠斗が氷をどうにかしない限り出てくることはないってこと?」
「そうっすね、しかもアンリ・マンユを俺一人で相手することになりました。こんな大切な時にすみません」
「気にしないで、その時はその時で考えるわよ。もう夜遅いし、みんな寝ましょう」
そうして今日は解散となった。ローランはどうするか聞いたらそのままにしておこうと言われたので椅子からは下ろして床に布団を敷いて寝かせてある。
…………もしも俺がこの氷をどうにかすることができたらどうなるんだろうか?こいつを完全に使いこなす……もし……もし本当に使えるようになったら?
その夜───
「───君、悠斗君、悠斗君起きてる?」
誰かに体を揺さぶられて目が覚める。ぼんやりとした視界からハッキリと見えるようになっていき、そこにいたのは氷翠だった。
「どうしたよ?こんな夜中に」
時計の針は二時をさしており普通に夜中だった。
「ちょっと付き合ってくれない?話があるんだ」
話……多分俺が氷翠に隠していた件についてだろうな。
「分かったよ、ここじゃなんだし外にでも出ようぜ」
外に出て、近くに置いてある椅子に座る。
「今日は星が綺麗だな。知ってるか?俺の中にいるこいつは昔神様と星を賭けて戦ったんだってよ」
「へー、それはすごいね」
「「…………」」
うーん、気まずい……なんとなく要件はわかってるから余計に話しずらい。俺の方から話を切り出すのもなんか違う気がするしな……。何か話題……話題……そうだ。
「いよいよ明日だな、氷翠はどうよ?やっぱ緊張する?相手は悪魔だしな、未知の存在もいいところだぜ」
「………………」
氷翠は何も言わない。こうなったらもうこっちから聞いてみるか……
「俺のこと、結斗さんから聞いたんだって?」
「…………」
「まぁそんなに気にすんなよ、今死ぬって決まったわけじゃないんだしさ」
「…………」
「でももし死んだらゴメンな?なんかファーブニルが試合中に限界が来るって言ってたんだよ」
「違うよ……」
「やっぱ死ぬってのは怖いねぇ」
「なんで……なんで?」
空を見ながらそんなことを言っていると服の襟を掴まれ、引っ張られる。引っ張られた先には氷翠の顔があった。
「なんでそれを言ってくれなかったの!?」
泣いていた。
「友達だよね?仲間だよね?私のこと救ってくれたんなら私にも君を救う機会をくれてもいいじゃん!」
「い、いや……だってその……心配かけるわけにもいかないしさ……別に氷翠のこと信用してないわけじゃないんだけど……えぇっと……」
目を合わせられず、目を逸らしたまま言い訳をするが、どれも苦しい。
「私だって心配かけた!だから私にも心配かけてよ!私のこと守るって言ってるけどずっと私から逃げてるじゃん!」
反論の余地もない。だってそうだったから、真実を伝えず隠し続けて、本当に向き合うことをしなかった。それで俺だけがどうにかなればそれでいいと思っていた。
「ごめん。怖かった、俺だけが悩んでその末に俺だけが滅びればそれでいいって思ってた」
「それが違うって言ってる!」
「ごめん。ごめんな。氷翠の気持ちを考えてなかったよ、これからは何かあったら必ず伝える。どれだけ辛いことでも」
「それでいいの。人に馬鹿って言うくせに自分が一番馬鹿じゃん。悠斗君のそれだってもともと私のものなんだから私に言ってよね」
────あっ……。そうか、それでいいんだ。
氷翠の一言であることを思いついた。
「なぁ氷翠、今から少しだけ時間あるか?少し付き合ってほしい」
「なにするの?」
「明日に使えるとっておきだよ」
俺が満面の笑みでそう言うと、氷翠はなにがなんだかわからないといった表情を見せた。
次の日───時刻は午前十一時、ザスターとの戦いまで、そして、アンリ・マンユと戦うまであと一時間、そして、俺のタイムリミットまであと少し。場所はグランシェール邸の先輩の部屋。
「あと一時間ね、こんなこと言って申しわけないのだけれど、正直言ってザスター勝てる自信は私には無いわ。でも今回はただの試合じゃない。コレはお父さんやお母さん、メフィスト家にも黙ってあるわ。なんとしてもザスターをアンリ・マンユから助けるわよ」
「「「「はい!」」」」
「それと悠斗、アジ・ダハーカはどう?」
「未だに反応ありません。でも任せてください、俺だって今日のために特訓しましたから!」
リーナは俺に手を突きだして、
「そうね、あなたはそれでいいわ。だから今日からこれは解除するわね」
リーナ先輩の手の平に小さな魔法陣が展開される。リーナ先輩が呪文を唱えると、俺の中に熱い何かが広がっていくのがわかる。でもこれは外から入ってきた力じゃない。俺に馴染んでいく……そうか、これは……
「今、悠斗に付けていた枷をひとつ外したわ。これで今までより数段強くなっているはずよ」
ローランと結斗さんが俺のパワーアップに感心していた。
「これが悠斗君の力の一部か……この一週間ですごい強くなってるのが分かるよ」
「枷を外しただけでこんなに変わるなんてね、リーナが初日に付けた枷がいくつあるのか分からないけど、全部解除した時はどうなるんだろか」
あれか、特訓が始まったあの日に感じた体のだるさはこの枷が原因だったのか。自分でも実感できるほどのパワーアップ、魔力が濃く、多くなっている。
「さて、私たちのやれることは全てやったつもりよ。ザスターを救って試合にも勝てたら最高ね、あと一時間、好きな方法で過ごしてちょうだい」
各々が自分のリラックスできるように時間を潰す。
そして一時間が経った。ついに、ついにあの悪神との戦いが始まる。
全員の顔を緊張が走る。だけどここで立ち止まってられない!
「さぁ、行くわよみんな!」
「「はい!」」
「おー!」
「うん」
どこからかアナウンスが届く。
『正午になりました。これより、リーナ・グランシェール様対ザスター・メフィスト様のブレイビンフィールドを始めます』
「それで、僕は何をすればいいんだい?」
『おめぇさんに残ってもらったのはそれもあるがその前に聞きてぇことがある』
「聞きたいこと?」
『そうだ、デュランダルはどうした?ローラン・デミディーユ』
……………………バレていたのか。
「さて、なんのことかな?」
『しらばっくれても無駄だぜ?何度も転生してその姿を眩ませ続けたらしいが、俺ら古参からしたらお前なんて一目見れば一発だ』
そこまでバレてしまったなら仕方が無いか……。
「そうだよ、僕はローラン・デミディーユ。元シャルルマーニュの一人にして、『七極騎士』の一人さ。今となってはただの学生だけどね」
それを聞いたファーブニルはやはりといった様子だった。
『ケッ!やっぱりそうかよ。それで、相棒のオリヴィエはどうしたよ?』
「彼女とは別れたよ……僕の勝手にいつまでも付き合わせても悪いからね。そんなことより今は悠斗君だ、早く助ける方法を教えてくれ」
悠斗君の方に向き直り、ファーブニルに指示を促す。
『まずはおめぇの『魔力無効領域』を発動させろ。させたらその手をそこの坊主の紋様に触れるんだ』
言われた通りに、悠斗君の左腕に触れる。腕はもうほとんど凍っており、刺すように冷たい。
『そのままキープだ、絶対に切らすなよ?今から俺があの坊主の意識を引っ張り出してやるからな』
「何するつもりだい?」
『今、お前さんに開いてもらった経路から坊主の意識の中に入るんだよ』
そう言ってファーブニルは本当に悠斗君の中に入っていってしまった。
今までの中で他人に『魔力無効領域』を繋げるのは初めてだった。繋がっている間、ずっと悠斗君のことが流れ込んでくる。記憶然り、感情然り……。こっちの意識が無くなりそうだ、頼むから早く戻ってきてくれよ、ファーブニル。
───Fervnir───
一応氷の嬢ちゃんの魔力に穴開けてもらってそこから侵入することには成功したが、ここからどうするかね。まさかあのクソ陰湿ドラゴンですら食い止められないなんてな。ククク、これはあいつをいびるネタが増えたと喜ぶべきかね?
ファーブニルが泳いでいる空間は悠斗の心の中、もっと言えば悠斗の魔力の中だ。
「こりゃひでぇな……ここまで侵食が進んでいるなんてよ、よく耐えてたぜあの坊主。多分ここら辺にいると思うんだが……お!いたいた。」
現在悠斗の魔力は半分が凍らされており、今もパリパリと音をたてながら広がっている。この状態になるまでよく平気でいられるものだとファーブニルは賞賛を送った。
辺りを見渡して探してみると助けを探してキョロキョロしている小さい一人の人間を見つける。
「おーい坊主!迎えに来てやったぞ!」
自分の名前が呼ばれたことに気がついた様子の坊主は上を見上げてその声がする方を探している。
「こっちだこっち!俺だよ!ファーブニルだよ!」
俺の姿を見た坊主は本当に嬉しそうな顔をしていた。
「ファーブニル!」
───Haruto───
「あの野郎……勝手に追い出しやがって、ここは俺の中だぞ?」
ファーブニルが助けにくる少し前、魔力の中核から追い出された悠斗は半分が凍らされた空間を歩いていた。
「にしても、ほんとにすごいな……これが全部氷翠の魔力のせいで起こってるっていうのかよ。俺ほんとにこのまま死んじまうのかな?……いや、アジ・ダハーカが三日は持たせるって言ってたんだ!伝説の邪龍の言うことを信じよう」
気を改めて凍った空間を再び歩き回るがどこにも出口がない。ただあるのは氷──ただただ凍った世界が広がるだけだった。
ひたすら歩いていると見覚えのある場所に辿り着く。あの少年と出会った場所だ。あれから一度も見ていないが、自分の推測が正しければあの少年がアンリ・マンユだということになる。しかしあの子は悪神と呼ばれるほど悪い奴に見えなかった。
「ん?なんだこれ?」
そこで見つけたのは俺よりも一回り度大きな青い氷塊だった。その中をよくよく見ると、その中に目を瞑った女性がいた。
「おーい!聞こえますかー!」
声をかけてみてもなんの反応も無い。
「これぶっ壊せないんかな?」
試しに氷を殴ってみる。しかし氷には傷一つ付かなかった。それだけではなく、氷に触れた俺の拳が凍ってしまっている。
「うわ!手が凍ってやがるよ……くっそぉ、ほんとに帰れないじゃんかよ……誰か助けに来てくれないかなー」
そう一人呟きながらまた歩き出す。するとその時、聞き覚えのあるふざけた声が聞こえてきた。
「おーい坊主!迎えに来てやったぞ!」
「ファーブニル!?」
周りを見渡してみるが、ファーブニルの姿が見えない。
「こっちだこっち!俺だよ!ファーブニルだよ!」
後ろを振り向くと巨大な全身金のドラゴンが俺に向かって急降下してきた。
「ファーブニル!迎えに来てくれたのか!てゆうかお前でかいなぁ、よくここでアジ・ダハーカと話すけどあいつよりでかいんじゃねぇの?」
俺のそばに降り立ったファーブニルは頭を地面につけて俺に乗るように催促する。
「今はそんなことどうでもいいだろこの馬鹿。ほら乗れ、早くここから出るぞ」
「マジでありがたいよ!このままでられなかったらどうしようかと……」
ファーブニルが飛び上がり、そのまま上を目指す。
「なぁ坊主、あいつはこのことについてなんか言ってなかっのか?」
「あぁ、そういえばな、三日は持たせるからそれまでにどうにかしろってさ」
「三日……多分だがそれは安静にしていた場合の話だな、これからのことを考えると多分明日がタイムリミットだ」
「はぁ!?全然言ってたのと違うじゃねぇかよ!それってつまりザスターとの試合中に限界が来るってことじゃねぇか!」
「んなこと俺に怒んじゃねぇよ!だからそれまでには絶対なんとかしろよ。いいな?」
ちっくしょぉ、そんな理不尽な話普通無いだろ……明日までに……しかもそれまであいつと戦えないってことはアンリ・マンユを俺だけで倒さなきゃいけないってことだろ?俺だけで『紅煉』使えるか心配しかない。
「そろそろ出るぞ?ローランのやつもそろそろ限界に近いだろう。この経路が閉まる前に出るぞ」
「ローランがいるのか?」
「そうだよ、あいつの『魔力無効領域』で氷の嬢ちゃんの力を無効にしてもらってここまで来たんだ。後でちゃんとお礼言っとけよ?」
「わーってるよ、お?あの黒い穴が出口か?」
少し先にある黒い穴を見るとファーブニルは少し厳しそうな顔をした。
「チッ、もうあそこまで小さくなってやがるか、坊主、スピード上げるからちゃんと捕まっとけよ!」
「え?ちょ……なに?うわぁぁああああああああああ!」
そのままものすごいスピードで穴に入る。そこに入るといつも俺とアジ・ダハーカが会う空間にそっくりな場所に出た。
「もう降りていいぞ?ここは坊主の意識の中だからな」
言われた通りにファーブニルの背中から降りる。すると何もないところに立った。
「それじゃぁ俺はここでずらかるぜ?またこの姿で会える時が来たらよろしくな?」
「おう、正直ここからどうすればいいかさっぱりだけどありがとな」
礼を言うと大きな口を開けて笑い、また上へ向かって飛んで行った。
───Haruto returned───
目覚めると俺はベットの上で仰向けになっていた。身体を起き上がらせて周りを見渡すと椅子に座って寝ているローランの姿があった。
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『流石のこいつもあれだけの長時間坊主に繋ぎ続けるのはキツかったか』
近くからファーブニルの声がした。探してみると俺の上に一つの水晶が置かれていて、それが金色に鼓動している。
「そんなとこにいたのかよ」
『ひとつ言っておかなきゃならんことがあってな。俺達は氷の嬢ちゃんに坊主のことを教えた』
───ッ。
驚き声をあげようとしたのを抑えて、長いため息をつく。
そうか……教えたのか……
『なんでだよ……とは言わないんだな』
「本当は言いてぇよ。でも、言わなきゃいけなかったんだろ?それくらい俺でもわかるさ」
『そうかよ』
「それで、氷翠はなんか言ってたのか?」
『いんや、あの嬢ちゃんはなんも言わなかったよ。今はまぁ、多分自室で泣いてるだろうよ』
「また泣かせちゃったよ。それじゃぁ俺はみんなに謝りに行きますかね」
『あっ!ちょっと待てまだ──』
ベットから起き上がろうと体を持ち上げると腕から「パキッ」と音が鳴った。なった腕を見てみるとヒビが入っており、ちょっとでも力を加えれば割れてしまいそうだった。
『だから待てって言ったのによぉ、おめえさんの腕はまだ治りきってねぇんだ、まだ安静にしてな。俺は嬢ちゃんたちを呼んでくるよ』
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「悠斗、もう大丈夫なの?」
部屋と扉が開けられ、里奈先輩と結斗さん、そしてら氷翠が入って来る。
「はい、心配かけてすみませんでした。でもまだ左腕が凍ったままです」
「そう……今からアジ・ダハーカと話がしたいのだけれど呼んでもらえる?」
「あーその、今ちょっと呼べないんですよ」
俺が意識を失っている間に起こったことを全て話した。
「それじゃぁアジ・ダハーカは悠斗が氷をどうにかしない限り出てくることはないってこと?」
「そうっすね、しかもアンリ・マンユを俺一人で相手することになりました。こんな大切な時にすみません」
「気にしないで、その時はその時で考えるわよ。もう夜遅いし、みんな寝ましょう」
そうして今日は解散となった。ローランはどうするか聞いたらそのままにしておこうと言われたので椅子からは下ろして床に布団を敷いて寝かせてある。
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その夜───
「───君、悠斗君、悠斗君起きてる?」
誰かに体を揺さぶられて目が覚める。ぼんやりとした視界からハッキリと見えるようになっていき、そこにいたのは氷翠だった。
「どうしたよ?こんな夜中に」
時計の針は二時をさしており普通に夜中だった。
「ちょっと付き合ってくれない?話があるんだ」
話……多分俺が氷翠に隠していた件についてだろうな。
「分かったよ、ここじゃなんだし外にでも出ようぜ」
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「いよいよ明日だな、氷翠はどうよ?やっぱ緊張する?相手は悪魔だしな、未知の存在もいいところだぜ」
「………………」
氷翠は何も言わない。こうなったらもうこっちから聞いてみるか……
「俺のこと、結斗さんから聞いたんだって?」
「…………」
「まぁそんなに気にすんなよ、今死ぬって決まったわけじゃないんだしさ」
「…………」
「でももし死んだらゴメンな?なんかファーブニルが試合中に限界が来るって言ってたんだよ」
「違うよ……」
「やっぱ死ぬってのは怖いねぇ」
「なんで……なんで?」
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「なんでそれを言ってくれなかったの!?」
泣いていた。
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「なぁ氷翠、今から少しだけ時間あるか?少し付き合ってほしい」
「なにするの?」
「明日に使えるとっておきだよ」
俺が満面の笑みでそう言うと、氷翠はなにがなんだかわからないといった表情を見せた。
次の日───時刻は午前十一時、ザスターとの戦いまで、そして、アンリ・マンユと戦うまであと一時間、そして、俺のタイムリミットまであと少し。場所はグランシェール邸の先輩の部屋。
「あと一時間ね、こんなこと言って申しわけないのだけれど、正直言ってザスター勝てる自信は私には無いわ。でも今回はただの試合じゃない。コレはお父さんやお母さん、メフィスト家にも黙ってあるわ。なんとしてもザスターをアンリ・マンユから助けるわよ」
「「「「はい!」」」」
「それと悠斗、アジ・ダハーカはどう?」
「未だに反応ありません。でも任せてください、俺だって今日のために特訓しましたから!」
リーナは俺に手を突きだして、
「そうね、あなたはそれでいいわ。だから今日からこれは解除するわね」
リーナ先輩の手の平に小さな魔法陣が展開される。リーナ先輩が呪文を唱えると、俺の中に熱い何かが広がっていくのがわかる。でもこれは外から入ってきた力じゃない。俺に馴染んでいく……そうか、これは……
「今、悠斗に付けていた枷をひとつ外したわ。これで今までより数段強くなっているはずよ」
ローランと結斗さんが俺のパワーアップに感心していた。
「これが悠斗君の力の一部か……この一週間ですごい強くなってるのが分かるよ」
「枷を外しただけでこんなに変わるなんてね、リーナが初日に付けた枷がいくつあるのか分からないけど、全部解除した時はどうなるんだろか」
あれか、特訓が始まったあの日に感じた体のだるさはこの枷が原因だったのか。自分でも実感できるほどのパワーアップ、魔力が濃く、多くなっている。
「さて、私たちのやれることは全てやったつもりよ。ザスターを救って試合にも勝てたら最高ね、あと一時間、好きな方法で過ごしてちょうだい」
各々が自分のリラックスできるように時間を潰す。
そして一時間が経った。ついに、ついにあの悪神との戦いが始まる。
全員の顔を緊張が走る。だけどここで立ち止まってられない!
「さぁ、行くわよみんな!」
「「はい!」」
「おー!」
「うん」
どこからかアナウンスが届く。
『正午になりました。これより、リーナ・グランシェール様対ザスター・メフィスト様のブレイビンフィールドを始めます』
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