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氷の姫と悪魔の中間試験
Period.5 試合開始!
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ティエンシアさんの開始の合図と共に目の前が青くなっていく。この輝きは何度も見ているからわかる、転移魔法だ。でもどこに向かうんだ?
「なぁローラン、今からどこに飛ぶんだ?」
「そっか、悠斗君は知らなかったね。今からブレイビンフィールド専用の空間に向かうんだよ。この試合をこんな町中でやったら被害が出てしまうだろう?だからこうやって特設ステージを設けているんだよ。しかも一回使ったらそれっきりの使い捨てだからそこまでコストもかからないしねだからいくらでも暴れていいよ」
「でもそれはこれまでフィールドを破壊する程の力を持った人がいなかったからであって完全に安全とは言えないけどね。悠斗君はどうだろうね?」
「怖いこと言わないでくださいよ結斗さん」
結斗さんがおかしそうに笑う。
「ごめんごめん、でも試合前の緊張は解けただろう?」
「ま、まぁそうですけど……」
そのやり取りを見ていたリーナ先輩がため息をつく。
「もう結斗ったら、もしこのフィールドを破壊し尽くすようなことがあっても大丈夫よ、自己補修プログラムが作動して試合続行可能な状態まで元に戻るし、それも間に合わないと判断されれば強制的にフィールドから脱出させられるわよ」
なんだそうなのか。ほんとに破壊しかねないからビックリした……。
転移が完了して、目の前が再び輝きだす。目を開けるとそこはリーナ先輩の家だった。
「え?本当に転移したんですよね?ここリーナ先輩の家じゃないっすか」
「まさかフィールドがこの街になったとなんてね」
「はい?結斗さん、どういうことですか?」
「ブレイビンフィールドでは様々な場所が用意されているんだよ。海だったり、山だったり、こういう街中だったりね。今回は誰の計らいか知らないけどこの街がフィールドに選ばれたらしい」
リーナ先輩が何か考えながら言う。
「でもこれは有利よ、私たちはこの街について熟知していると言っていい。地の利はこちらにあるわ」
『今回の試合の審判をさせていただくグランシェール家のメイド、シェンティアです。今回のステージはリーナ様の住むこの街になります。試合開始は今から十分後です』
また、アナウンスが届く。今から十分後……そこからはもうここが戦いの場になるのか。
「今からアンリ・マンユ討伐を踏まえた作戦を伝えるわ。よく聞いておいて、まず結斗は───」
作戦を全て伝えられ、確認を済ませると残り時間はあと三分も無かった。
「リーナ、最後に確認するけど、ザスターはもともとあんなやつじゃなかったんだな?」
「えぇ、悪魔としての自信過剰な部分はあのままなのだけれどその中にも他人に対する配慮は少なからずあったわ。あの時はつい大声を上げてしまったけれど私たちの婚約を断ったのはザスターの方なのよ」
「それならよかった、悠斗君、ローラン、舞璃菜さん、俺たちであの男を救ってあげよう」
「「「もちろんです!」」」
俺達の意識が試合に向かったと同時にティエンシアさんのアナウンスが届く。
『それでは、リーナ・グランシェール対ザスター・メフィストの試合を始めます。勝利条件は相手の全滅、もしくはリーダーの撃破です』
ビィィィィィィィィィィッ!
ブザーが鳴り、ついに試合が始まる。
「それじゃぁ作戦通りに行くわよ。結斗は悠斗と一緒に学校に向かってちょうだい、詳しい作戦は結斗に伝えてあるわ。もしもアンリ・マンユと出くわしたら二人とも全力で逃げて」
「了解、よろしく悠斗君」
「よろしくお願いします結斗さん」
「舞璃菜は私と来てちょうだい、二人が敵をなんとかしている間にザスターを無力化、アンリ・マンユの力の解除をするわよ」
「わっかりました!」
「ローランは一人でここから相手の本拠地までの最短ルートを探して」
「分かりました」
「何度も言うけど、私一人の事情に付き合わせてしまって申し訳ないわ、でもお願い、私のために力を貸して?」
申し訳なさそうに俺たちに謝ってくる先輩。でも、それは違う。
「そうじゃないっすよ先輩。俺だってアンリ・マンユとかいうめんどくさいやつ連れてきちゃったみたいなんでおあいこですよ。それに皆も先輩を信用してるからついてきたんじゃないっすか?」
先輩が俺たちの顔を見る。それに対して笑顔で応える。
「そうね……行きましょうみんな!相手が悪魔だろうが神だろうが関係ないわ!目の前の敵を倒す、ただそれだけよ!作戦開始!」
「「「「了解!」」」」
───悠斗&結斗
俺と結斗さんはリーナ先輩に言われた通りに俺たちの通う学校、真波学園に向かっていた。リーナ先輩によるとこのフィールドの中で一番広く、監視に使いやすい場所がこの学校だというわけらしい。
「さてと、学校に着いたはいいけどやっぱり考えることは同じだったようだね」
「考えること?まさか!」
「そう、そのまさかだよ、四人いるんだろ、出てこい」
結斗さんが何もないところにそう言うと、右の階段から二人、左の階段から一人、俺たちの後ろから一人、出てきた。
うわ、ほんとに敵がでてきた、今更になって始まったんだなって感じがするな。
「よく分かったな、やはりお前達もここを狙っていたのか。それもそうだろう、ここを取れば試合はかなり有利に進む。そちらのリーダーもだいぶ勉強したようじゃないか」
完全にこちらをなめている、ほかの三人も余裕の表情を浮かべていた。
「はぁ、ここまで完全になめられていると逆に清々しいよね。悠斗君、できたらでいいんだけどこの階層を君の闇で包み込んでくれないかな?」
「は、はぁ……分かりました……?」
言われた通り、この階層を闇で支配する。結斗さん、一体何するんだろう?
「こんなものを広げてもそちらの視界も妨害されるだけではないか」
そう言って、四人は同時に俺たちに向かって突っ込んできた。
「はぁ、これだからテメェらはダメなんだよ、敵の力を見切った上で戦うことを知らない。悠斗君、君は左から来る敵を頼む、あとは俺がなんとかするよ」
魔法陣を展開して、左から来た相手の剣戟を防ぐ、ローランを相手してたから相手の剣がだいぶ遅く見える。
相手の攻撃を防いで安心していると、隣から声とも言えない声が聞こえ異様な雰囲気を感じる。
そちらを見ると結斗さんの体から黒い霧が出ていた。
『水鏡、天を覆い、その顎を以て砕け』
黒い霧が広がり、結斗さんが見えなくなる。
『こい、ただしテメェの力を受ける覚悟があるやつが、だ』
三人が結斗さんに向かって攻撃を繰り返すも、全て躱すか、結斗さんの体を通り過ぎる。
「すげぇ……」
「何よそ見している!お前の相手この私だ!」
また俺に向かって件が振られる。がそれを難なくよけ、逃げ続ける。
「ちょこまかと鬱陶しいわね……!男なら正々堂々と戦いのなさいよ!」
「俺はあんたを相手してる余裕なんか無いんだよ!確かミラとか言ったな!悪いけど俺はここでずらかるぜ」
そう言って玄関から全力で走って逃げる。これも俺の判断ではなく、結斗さんにある程度時間が経ったら逃げろとの指示があったからだ。
『よし、じゃぁなお前ら、つまらない余興だったよ』
「な!待て!」
『待たねぇよ、悠斗、ここらにリーナから貰った結界張れ』
は、悠斗?結斗さん悠斗君って呼ばなかったっけ?
そんなことを思いながら、リーナ先輩か事前に受けとった結界を張る。
「何だこの結界は!出せ!」
敵が全員で結界を攻撃しているが全く壊れる気配が無い。なんて頑丈な結界なんだ。
『これは俺からの土産だ、受け取れ』
結斗さんはその黒い手からとんでもない規模の炎を出し、それを学校に放り込んだ。その炎は校舎全体を囲う程の爆発を起こし、俺たちの学校は完全に崩壊した。
「なるほど、相手の攻撃を受け続けるためにわざと」
「ふぅ、その通り、さて、コレでフィールドの把握はこちらが上手となった。それじゃぁここから去ろうか」
『ザスター様のチーム四名リタイヤ、残り九名です』
あいつのチーム十三人もいるのかよ!こっちは五人だぞ!ずりぃ!
「相手は人が多くて羨ましいねぇ、リーナは選ぶ時に慎重になりすぎだんだよ」
結斗さんも同じことを思っていたようだ。
「悠斗君、君は多分『紅煉』の他にもう一つ何か隠しているだろう?それがこれから役立つかもしれないから準備しておいてくれ」
走りながらそんなことを言われてしまった。
なんだ、バレてたのかよ。全員驚かせてやろうとか思ったのに、残念だな。
「分かりました、でもこれ消耗が以上に激しいんで、そこの所はご了承願いたいです」
「分かった」
───ローラン
僕はリーナ姉さんに言われた通りに敵の本拠地を探して今そこまでの最短ルートを探っている。なんだけど、道中めんどくさいものと出会ってしまったみたいだ。
「まさか、あの場所を捨てるなんて思っても見ませんでしたが、まぁここがあなた達が住んでいる街であることを考慮すれば当然といえば当然ですわね」
そうか、さっきの爆発は結斗さんか悠斗君がか、それはいいことを聞いたね。僕も頑張らないとな。
「しかし、貴様がここから無事に出られるかどうかは関係ない」
後ろからまた一人出てきた。
よく見れば僕の周りを五人の悪魔が囲うように立っていた。しかも結界に閉じこめられたか……。面白じゃないか。
「まさか君たち五人が僕の相手をするなんて言わないよね?正直手に余るな」
その言葉で五人の魔力が膨れ上がる。
「この際だし、自己紹介でもしておこうかな?僕はローラン、ローラン・マゼストだ」
僕の正面にいる悪魔が嬉しそうな顔をしていた。
「自分から名乗るとはなかなか分かっているではないか!先程はあまりに挑発してくるのでムカついていたが……そういう正直なやつは私は大好きだぞ!」
「まだ自己紹介の途中なんだけど?」
正面の悪魔は首を傾げる。
「マゼスト姓は今のものだ。僕の本当の名はローラン・デミディーユ。元シャルルマーニュの一人にして『七極騎士』の一人だ」
それを聞いた五人は驚きの表情を浮かべる。
「貴様が、あの英雄?」
「そんな馬鹿な、あの英雄はもう既に死んだはず」
「ありえないわ、そんなことがあっていいものですか!」
僕は不敵な笑みをわざと見せて、宣戦布告する。
「本当かどうかはその目で確かめてくれ」
まずは目の前の敵を斬り捨てる、悠斗君と戦う時に使ったあの技術で。
地面に転がる的に剣を突き立て、周りで呆然としている四人に話しかける。
「はぁ、この程度のスピードに反応できないなんて……これならまだ悠斗君の方が強いかな?」
『ザスター様のチーム一名リタイヤ、残り八名です』
剣を突き立てられていた悪魔は光の粒子となってこの場から消えた。リタイヤする時に出るものらしいが、実際に見るのは初めてだ。
「人間の動きではない……!」
地面から剣を引き抜き、敵に歩み寄ると残り四人が後ずさる。
「いいや、人間だよ。でも、多分君たちよりかは強い人間だ。でも一つ間違っていることがある、僕は君達が言うような『英雄』じゃない」
四人から同時に魔術を行使されるが、左手を突き出しその魔力を霧散させる。どれだけ強力な魔法、魔術であろうと自分には関係無い。僕はその場に立ったまま敵の攻撃を無力化し続ける。
遂にこれ以上無駄だと分かったのか、敵の攻撃が止まった。体内の魔力をほとんど消費したようで、顔を疲れが出ている。
「…………なに?これで終わりなの?」
「これが……これがあの『英雄』と畏れ、讃えられた者の力……」
「イーナス、まだ負けたわけじゃないわ!この者がザスター様と敵対した時最も危険な存在よ!私達でできるだけ消耗させましょう!」
一人が絶望しきっていた三人を鼓舞しそれと同時に僕に向かって全力で攻撃を仕掛けてくる。体術、魔術、その全てを使って。
そしてその激闘が終わり、舞っていた砂煙が止んだと同時にそこに現れたのは、無情に切り捨てられた四人の姿だった。
───リーナ&舞璃菜
「ねぇねぇリーナちゃん先輩、私達はまだ出ないの?はなく出ないとやられちゃうよ?早く行こうよ」
「落ち着きなさい、まだ試合は始まったばかりこんな早くに私が出ても相手には勝ってくださいと言ってるようなものだわ」
実際にそうなのだ、もしここで自分が出てしまったらその時点で負けが決まってしまう。リーダーは試合終盤までは安全な場所にいることが鉄則、そこの裏をかいてリーダー含めた全員で突貫していくという戦い方もない訳では無いが。しかし完全に初心者の自分達が紛いにもプロの世界で戦う相手にそんな奇策が通じるとは思えない。ここは定石通り動いて、相手の出方を伺った方が得策だろう。しかも向こうには神がいる。それだけで戦力は雲泥の差がある。
『リーナ、こっちは学校の破壊に成功。ついでに何人か倒しておいたよ』
結斗か連絡が入った。どうやら作戦は成功したらしい。
「ご苦労さま、結斗、悠斗。そのまま街の中央公園に向かってちょうだい。恐らくそこに残りの的も向かってくるはずだから」
『了解』
学校の破壊に成功したのは大きい、それならもう自分達も出て大丈夫だろう。
「さてと、舞璃菜、私たちもそろそろ出ましょうか」
「オッケー、いつでもいいよ」
この子は本当に素直で純粋だ、こんなに汚い世界に入れてしまったことを後悔するほどに、だからこのこの子の前では絶対に敗北は見せない、常にかっこいい先輩でいてあげよう。
「舞璃菜、私について来て欲しいけれどもザスターとおそらく彼の近くにいる人との戦闘は禁止よ」
「了解です!私だってね、先輩程じゃないけど戦えるよ」
「それは頼もしいわね、それじゃぁ行きましょうか」
ザスターを救うために敵の本拠地へと向かう。
どうかこの戦いが無事に終わりますように…………。
「なぁローラン、今からどこに飛ぶんだ?」
「そっか、悠斗君は知らなかったね。今からブレイビンフィールド専用の空間に向かうんだよ。この試合をこんな町中でやったら被害が出てしまうだろう?だからこうやって特設ステージを設けているんだよ。しかも一回使ったらそれっきりの使い捨てだからそこまでコストもかからないしねだからいくらでも暴れていいよ」
「でもそれはこれまでフィールドを破壊する程の力を持った人がいなかったからであって完全に安全とは言えないけどね。悠斗君はどうだろうね?」
「怖いこと言わないでくださいよ結斗さん」
結斗さんがおかしそうに笑う。
「ごめんごめん、でも試合前の緊張は解けただろう?」
「ま、まぁそうですけど……」
そのやり取りを見ていたリーナ先輩がため息をつく。
「もう結斗ったら、もしこのフィールドを破壊し尽くすようなことがあっても大丈夫よ、自己補修プログラムが作動して試合続行可能な状態まで元に戻るし、それも間に合わないと判断されれば強制的にフィールドから脱出させられるわよ」
なんだそうなのか。ほんとに破壊しかねないからビックリした……。
転移が完了して、目の前が再び輝きだす。目を開けるとそこはリーナ先輩の家だった。
「え?本当に転移したんですよね?ここリーナ先輩の家じゃないっすか」
「まさかフィールドがこの街になったとなんてね」
「はい?結斗さん、どういうことですか?」
「ブレイビンフィールドでは様々な場所が用意されているんだよ。海だったり、山だったり、こういう街中だったりね。今回は誰の計らいか知らないけどこの街がフィールドに選ばれたらしい」
リーナ先輩が何か考えながら言う。
「でもこれは有利よ、私たちはこの街について熟知していると言っていい。地の利はこちらにあるわ」
『今回の試合の審判をさせていただくグランシェール家のメイド、シェンティアです。今回のステージはリーナ様の住むこの街になります。試合開始は今から十分後です』
また、アナウンスが届く。今から十分後……そこからはもうここが戦いの場になるのか。
「今からアンリ・マンユ討伐を踏まえた作戦を伝えるわ。よく聞いておいて、まず結斗は───」
作戦を全て伝えられ、確認を済ませると残り時間はあと三分も無かった。
「リーナ、最後に確認するけど、ザスターはもともとあんなやつじゃなかったんだな?」
「えぇ、悪魔としての自信過剰な部分はあのままなのだけれどその中にも他人に対する配慮は少なからずあったわ。あの時はつい大声を上げてしまったけれど私たちの婚約を断ったのはザスターの方なのよ」
「それならよかった、悠斗君、ローラン、舞璃菜さん、俺たちであの男を救ってあげよう」
「「「もちろんです!」」」
俺達の意識が試合に向かったと同時にティエンシアさんのアナウンスが届く。
『それでは、リーナ・グランシェール対ザスター・メフィストの試合を始めます。勝利条件は相手の全滅、もしくはリーダーの撃破です』
ビィィィィィィィィィィッ!
ブザーが鳴り、ついに試合が始まる。
「それじゃぁ作戦通りに行くわよ。結斗は悠斗と一緒に学校に向かってちょうだい、詳しい作戦は結斗に伝えてあるわ。もしもアンリ・マンユと出くわしたら二人とも全力で逃げて」
「了解、よろしく悠斗君」
「よろしくお願いします結斗さん」
「舞璃菜は私と来てちょうだい、二人が敵をなんとかしている間にザスターを無力化、アンリ・マンユの力の解除をするわよ」
「わっかりました!」
「ローランは一人でここから相手の本拠地までの最短ルートを探して」
「分かりました」
「何度も言うけど、私一人の事情に付き合わせてしまって申し訳ないわ、でもお願い、私のために力を貸して?」
申し訳なさそうに俺たちに謝ってくる先輩。でも、それは違う。
「そうじゃないっすよ先輩。俺だってアンリ・マンユとかいうめんどくさいやつ連れてきちゃったみたいなんでおあいこですよ。それに皆も先輩を信用してるからついてきたんじゃないっすか?」
先輩が俺たちの顔を見る。それに対して笑顔で応える。
「そうね……行きましょうみんな!相手が悪魔だろうが神だろうが関係ないわ!目の前の敵を倒す、ただそれだけよ!作戦開始!」
「「「「了解!」」」」
───悠斗&結斗
俺と結斗さんはリーナ先輩に言われた通りに俺たちの通う学校、真波学園に向かっていた。リーナ先輩によるとこのフィールドの中で一番広く、監視に使いやすい場所がこの学校だというわけらしい。
「さてと、学校に着いたはいいけどやっぱり考えることは同じだったようだね」
「考えること?まさか!」
「そう、そのまさかだよ、四人いるんだろ、出てこい」
結斗さんが何もないところにそう言うと、右の階段から二人、左の階段から一人、俺たちの後ろから一人、出てきた。
うわ、ほんとに敵がでてきた、今更になって始まったんだなって感じがするな。
「よく分かったな、やはりお前達もここを狙っていたのか。それもそうだろう、ここを取れば試合はかなり有利に進む。そちらのリーダーもだいぶ勉強したようじゃないか」
完全にこちらをなめている、ほかの三人も余裕の表情を浮かべていた。
「はぁ、ここまで完全になめられていると逆に清々しいよね。悠斗君、できたらでいいんだけどこの階層を君の闇で包み込んでくれないかな?」
「は、はぁ……分かりました……?」
言われた通り、この階層を闇で支配する。結斗さん、一体何するんだろう?
「こんなものを広げてもそちらの視界も妨害されるだけではないか」
そう言って、四人は同時に俺たちに向かって突っ込んできた。
「はぁ、これだからテメェらはダメなんだよ、敵の力を見切った上で戦うことを知らない。悠斗君、君は左から来る敵を頼む、あとは俺がなんとかするよ」
魔法陣を展開して、左から来た相手の剣戟を防ぐ、ローランを相手してたから相手の剣がだいぶ遅く見える。
相手の攻撃を防いで安心していると、隣から声とも言えない声が聞こえ異様な雰囲気を感じる。
そちらを見ると結斗さんの体から黒い霧が出ていた。
『水鏡、天を覆い、その顎を以て砕け』
黒い霧が広がり、結斗さんが見えなくなる。
『こい、ただしテメェの力を受ける覚悟があるやつが、だ』
三人が結斗さんに向かって攻撃を繰り返すも、全て躱すか、結斗さんの体を通り過ぎる。
「すげぇ……」
「何よそ見している!お前の相手この私だ!」
また俺に向かって件が振られる。がそれを難なくよけ、逃げ続ける。
「ちょこまかと鬱陶しいわね……!男なら正々堂々と戦いのなさいよ!」
「俺はあんたを相手してる余裕なんか無いんだよ!確かミラとか言ったな!悪いけど俺はここでずらかるぜ」
そう言って玄関から全力で走って逃げる。これも俺の判断ではなく、結斗さんにある程度時間が経ったら逃げろとの指示があったからだ。
『よし、じゃぁなお前ら、つまらない余興だったよ』
「な!待て!」
『待たねぇよ、悠斗、ここらにリーナから貰った結界張れ』
は、悠斗?結斗さん悠斗君って呼ばなかったっけ?
そんなことを思いながら、リーナ先輩か事前に受けとった結界を張る。
「何だこの結界は!出せ!」
敵が全員で結界を攻撃しているが全く壊れる気配が無い。なんて頑丈な結界なんだ。
『これは俺からの土産だ、受け取れ』
結斗さんはその黒い手からとんでもない規模の炎を出し、それを学校に放り込んだ。その炎は校舎全体を囲う程の爆発を起こし、俺たちの学校は完全に崩壊した。
「なるほど、相手の攻撃を受け続けるためにわざと」
「ふぅ、その通り、さて、コレでフィールドの把握はこちらが上手となった。それじゃぁここから去ろうか」
『ザスター様のチーム四名リタイヤ、残り九名です』
あいつのチーム十三人もいるのかよ!こっちは五人だぞ!ずりぃ!
「相手は人が多くて羨ましいねぇ、リーナは選ぶ時に慎重になりすぎだんだよ」
結斗さんも同じことを思っていたようだ。
「悠斗君、君は多分『紅煉』の他にもう一つ何か隠しているだろう?それがこれから役立つかもしれないから準備しておいてくれ」
走りながらそんなことを言われてしまった。
なんだ、バレてたのかよ。全員驚かせてやろうとか思ったのに、残念だな。
「分かりました、でもこれ消耗が以上に激しいんで、そこの所はご了承願いたいです」
「分かった」
───ローラン
僕はリーナ姉さんに言われた通りに敵の本拠地を探して今そこまでの最短ルートを探っている。なんだけど、道中めんどくさいものと出会ってしまったみたいだ。
「まさか、あの場所を捨てるなんて思っても見ませんでしたが、まぁここがあなた達が住んでいる街であることを考慮すれば当然といえば当然ですわね」
そうか、さっきの爆発は結斗さんか悠斗君がか、それはいいことを聞いたね。僕も頑張らないとな。
「しかし、貴様がここから無事に出られるかどうかは関係ない」
後ろからまた一人出てきた。
よく見れば僕の周りを五人の悪魔が囲うように立っていた。しかも結界に閉じこめられたか……。面白じゃないか。
「まさか君たち五人が僕の相手をするなんて言わないよね?正直手に余るな」
その言葉で五人の魔力が膨れ上がる。
「この際だし、自己紹介でもしておこうかな?僕はローラン、ローラン・マゼストだ」
僕の正面にいる悪魔が嬉しそうな顔をしていた。
「自分から名乗るとはなかなか分かっているではないか!先程はあまりに挑発してくるのでムカついていたが……そういう正直なやつは私は大好きだぞ!」
「まだ自己紹介の途中なんだけど?」
正面の悪魔は首を傾げる。
「マゼスト姓は今のものだ。僕の本当の名はローラン・デミディーユ。元シャルルマーニュの一人にして『七極騎士』の一人だ」
それを聞いた五人は驚きの表情を浮かべる。
「貴様が、あの英雄?」
「そんな馬鹿な、あの英雄はもう既に死んだはず」
「ありえないわ、そんなことがあっていいものですか!」
僕は不敵な笑みをわざと見せて、宣戦布告する。
「本当かどうかはその目で確かめてくれ」
まずは目の前の敵を斬り捨てる、悠斗君と戦う時に使ったあの技術で。
地面に転がる的に剣を突き立て、周りで呆然としている四人に話しかける。
「はぁ、この程度のスピードに反応できないなんて……これならまだ悠斗君の方が強いかな?」
『ザスター様のチーム一名リタイヤ、残り八名です』
剣を突き立てられていた悪魔は光の粒子となってこの場から消えた。リタイヤする時に出るものらしいが、実際に見るのは初めてだ。
「人間の動きではない……!」
地面から剣を引き抜き、敵に歩み寄ると残り四人が後ずさる。
「いいや、人間だよ。でも、多分君たちよりかは強い人間だ。でも一つ間違っていることがある、僕は君達が言うような『英雄』じゃない」
四人から同時に魔術を行使されるが、左手を突き出しその魔力を霧散させる。どれだけ強力な魔法、魔術であろうと自分には関係無い。僕はその場に立ったまま敵の攻撃を無力化し続ける。
遂にこれ以上無駄だと分かったのか、敵の攻撃が止まった。体内の魔力をほとんど消費したようで、顔を疲れが出ている。
「…………なに?これで終わりなの?」
「これが……これがあの『英雄』と畏れ、讃えられた者の力……」
「イーナス、まだ負けたわけじゃないわ!この者がザスター様と敵対した時最も危険な存在よ!私達でできるだけ消耗させましょう!」
一人が絶望しきっていた三人を鼓舞しそれと同時に僕に向かって全力で攻撃を仕掛けてくる。体術、魔術、その全てを使って。
そしてその激闘が終わり、舞っていた砂煙が止んだと同時にそこに現れたのは、無情に切り捨てられた四人の姿だった。
───リーナ&舞璃菜
「ねぇねぇリーナちゃん先輩、私達はまだ出ないの?はなく出ないとやられちゃうよ?早く行こうよ」
「落ち着きなさい、まだ試合は始まったばかりこんな早くに私が出ても相手には勝ってくださいと言ってるようなものだわ」
実際にそうなのだ、もしここで自分が出てしまったらその時点で負けが決まってしまう。リーダーは試合終盤までは安全な場所にいることが鉄則、そこの裏をかいてリーダー含めた全員で突貫していくという戦い方もない訳では無いが。しかし完全に初心者の自分達が紛いにもプロの世界で戦う相手にそんな奇策が通じるとは思えない。ここは定石通り動いて、相手の出方を伺った方が得策だろう。しかも向こうには神がいる。それだけで戦力は雲泥の差がある。
『リーナ、こっちは学校の破壊に成功。ついでに何人か倒しておいたよ』
結斗か連絡が入った。どうやら作戦は成功したらしい。
「ご苦労さま、結斗、悠斗。そのまま街の中央公園に向かってちょうだい。恐らくそこに残りの的も向かってくるはずだから」
『了解』
学校の破壊に成功したのは大きい、それならもう自分達も出て大丈夫だろう。
「さてと、舞璃菜、私たちもそろそろ出ましょうか」
「オッケー、いつでもいいよ」
この子は本当に素直で純粋だ、こんなに汚い世界に入れてしまったことを後悔するほどに、だからこのこの子の前では絶対に敗北は見せない、常にかっこいい先輩でいてあげよう。
「舞璃菜、私について来て欲しいけれどもザスターとおそらく彼の近くにいる人との戦闘は禁止よ」
「了解です!私だってね、先輩程じゃないけど戦えるよ」
「それは頼もしいわね、それじゃぁ行きましょうか」
ザスターを救うために敵の本拠地へと向かう。
どうかこの戦いが無事に終わりますように…………。
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捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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