妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ

文字の大きさ
3 / 3

後編

しおりを挟む
 そう思っていたのに。
「何故、そなたもそなたの父も私の申し込みを疑う。口先の言葉が信じられないと言うのなら、私は王位継承権を捨てよう」
「それほどのお覚悟ですか……!」
 会場にどよめきが広がります。なんて爆弾発言してくれてるんでしょう。

「……分かりました。婚約破棄を受け入れますわ」
「カミーユ……。すまない」
「いいえ。おめでとう、ジョフロア」
「姉様……」
 あり得ないと思っていた妹の初恋が叶った…! 私とジョフロアは手を取り合う。

「ここに宣言する! 私は、このアストリエ侯爵家 長男 ジョフロアと婚約する!」

 一瞬の沈黙の後、
「長男ーーーーーー?!」
という皆の叫びが会場を揺らしました。



「殿下! 何をお考えなのですか!」
「わが国では男同士の婚姻は許されませんぞ!」
 殿下が、興奮した貴族たちに囲まれています。
「なら、法を変える。変えられなければ、生涯婚約者でいればいい事だ」
「そうはまいりません!」
 ……仕事面ではやたら優秀な殿下に、口では勝てないでしょうねぇ。

 私とジョフロアの事は、声をかけたいけどためらっている令嬢たちが遠巻きに見ています。

 弟として生まれたジョフロア。鬼神と言われた将軍の名前をいただいたのに、幼い頃は病弱で、丈夫に育つまじないに女の子の格好をさせていたので、キャシーと遊ぶ姿は姉妹のようでした。
 やがて健康になり男の子の格好になったのですが、本人はそれを歓迎していないのが分かりました。戸惑っているのかと見守っている間に、目に見えて元気が無くなり、とうとう「無理です」と泣き出して私と両親は驚きました。

 自分は男の子として生きられない。周りに「男の子なんだから」「嫡男なんだから」と言われるのがつらい。自分は期待に応えられない。
「こんなでごめんなさい」
 そう言うあなたに、私たちは何としてもあなたを守ると決めたのですよ。

 こちらをうかがっている令嬢たちに、こちらに来るように手を振ります。
 恐る恐る近づいてきた人たちの中で、親しくしている伯爵令嬢が
「ジョフロア様は……、男性なのに『妹』なのですか?」
と、皆を代表して尋ねます。
 殿下が最初に聞いた事と同じ事を聞きますのね。
「この子が妹でなくて何ですの?」
 笑顔で答えました。



 ……本当は、最初の頃はジョフロアがいつか男の子に戻るだろうと思ってましたのよ。女の子の姿は、幼い頃の微笑ましい思い出になるのでは、と。
 でも、あなたが殿下に、男性に恋をしたのに気付いた時に分かったんです。あなたは婚約者よりずっと大切な私の妹なのだ、と。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

病弱令嬢…?いいえ私は…

月樹《つき》
恋愛
 アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。 (ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!) 謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。 このお話は他サイトにも投稿しております。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

愛に代えて鮮やかな花を

ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。 彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。 王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。 ※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。

だってあの子は欲しがりさん

Mag_Mel
恋愛
エレナとマルティナは貴族の姉妹。幼い頃から妹のマルティナは、姉が持つものを何でも欲しがり、両親の後押しもあって、それらを次々と奪ってきた。 そしてついには、エレナの婚約者までもが妹の手に渡ってしまう。 親友のトゥーリは憤るが、エレナはただ微笑み「仕方がない」とすべてを受け入れるだけ。 その姿に耐えきれなくなったトゥーリは、マルティナに苦言を呈することを決意するが……。

処理中です...