妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ

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中編

 城の外に出たがりの殿下は、五年前に私と婚約してからは私の家を新しい遊び場と認定し、「婚約者との交流」の名目で家に来ては妹たちも交えてカードやボードゲームをしていました。
 と、言うと微笑ましい話のようですが、外を怖がり屋敷に引き篭もりっぱなしのジョフロアに殿下は興味を持ち、色々と無神経な質問を繰り出しては怒った私に「デリカシーをお待ちくださいませ!」と、スパーンと後ろ頭を引っぱたかれるのがお約束でした。
 最初は「不敬な!」と殺気立った殿下の護衛たちも、当の殿下がキョトンとして「何が悪かったのだ?」と聞いているので怒るに怒れず。そのうち、毎回やってる見慣れた風景になったようですわ。
 
 そう、毎回なので、最初はめそめそしていたジョフロアが「これが侯爵家以外の人が私を見て思う事なんだ」と考えるようになりました。
 殿下と違って成長してますわね。

「それで、ジョフロアは外の人間に何を言われたのだ?」
「そうですね……。『アストリエ侯爵家の子なら、こうあるべき』とか『こうでなくてはならない』とか……。それが当然と決めつけた感じなんです」
「それは期待されているのではないか? 喜ばしいではないか。それを糧にして」
 スパーーン!
「痛っ! いきなり何なんだカミーユ!」
「自分がそうだから相手もそうあるべきだと決めつけないでください! ……そうですね、殿下が、『王子なのだから、歴代国王の暗唱など簡単に出来て当然だ』と言われたらどうします?」
「う……」
「ええっ? 殿下ってば王子なのに暗唱出来ないんですか?」
 下の妹のキャシーが遠慮の無いツッコミを入れます。
「出来なくは無い、の、だが……。ナントカ2世とか3世とかがちょこちょこ入るのが面倒でな……」
「もし殿下が即位されたら、フランツ何世になるんですか?」
「フランツ2世だ」
「3世です!」
「キャハハハ!」

 殿下がぽろっと無神経な事を聞き、ジョフロアが精一杯自分の考えを答え、私が「いい加減になさいませ」と殿下を引っぱたいて、下の妹が大笑い、というのがいつもの流れでした。
 そして、いつしかジョフロアは殿下に恋をしていました。

 家族は皆、ジョフロアの失恋を確信していました。
 だって、殿下がジョフロアを選ぶという事は、王座を諦めるという事。国王陛下も貴族議会も、私を捨ててジョフロアと婚姻するなど許すはずがありませんから。
 時折り、殿下がジョフロアを優しい目で見るようになったのは気付いていました。
 でも、「婚姻とは、国を運営するためのビジネスパートナーとするもの」と私との婚約を決めた殿下(私も同感ですが)が、とても王家の妃に相応しいとは言えないジョフロアを選ぶ事など……。

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