三日天下の聖女です!

あんど もあ

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 翌朝、王子様と朝食を食べていたら
「予定を決めてなかった午後は、城の中を案内する事にしようと思うんだけど」
と、提案された。
「見たいです!」
 大喜びで食いついた。
 その手があった! これなら外に出なくても安全に異世界を堪能できるじゃん。楽しみ! 王子様いい奴!


 ご機嫌で部屋に戻ったら、大神官様が神事の資料を抱えてやって来た。お勉強会が始まる。

「こちらが当日の祭壇です」
と、見せてくれた図解は、二年前のじいちゃんの葬式の祭壇と似てた。こういうのって異世界でも共通なのかな。
 左側に5脚椅子が並び、
「こちらは王族三人と、護衛二人です。物々しくならないよう二人にしていますが、あらゆる所に騎士が控えていますから警備はご安心ください」
そして、右側に椅子が30脚。
「こちらは貴族席です」
 元の世界と違うのは、椅子が祭壇に向かって置いてあるのではなく、ハの字というか、王族と貴族が向かい合って座るように置いてあるくらい。

 椅子の並んだ奥が1メートルくらい高くなっていて、中央と左右に数段の階段がある。その上にお葬式の飾り付けのような装飾がされていて、真ん中にある椅子、元の世界ならお坊さんがいる所が私の場所。
「この、少し離れた左側の椅子に私が控えています」
「それなら心強いです!」
 
「次は式次第ですが」
 幼い信徒たちが祭壇の前で聖歌(讃美歌の事だね)を歌って神事がスタート。貴族が入場して着席した後に王族が入場して着席すると、聖歌は終わり信徒たちが退場する。
 そして、大神官様にエスコートされて聖女が入場。祭壇に上り椅子に座って祈りを捧げる。

 祈りの方法は、
「亡くなった人たちよ安らかにあれ」
と、思うだけで、決まった祈りの言葉などは無いそうだ。
 これは、神社仏閣教会お墓神棚お稲荷さんお地蔵さんで祈りまくる日本人は得意かも。

 浄化されたら大神官様が合図するので、立ち上がって右手に置いてある一輪の花を手に取って祭壇に捧げて神事が終わる。
「花ですか」
「花にも決まりは無いのですが、希望の花はありますか?」
 この世界にどんな花があるのか分からないので、お任せする事にした。

「後は、聖女の衣装ですね」
 大神官様がドアに声を掛けると、待ち構えたように大きな箱を抱えた侍女と女性神官たちが部屋に雪崩れ込んできた。
 ワンピースを着たまま試着、というか試巻きされる。光沢のある白い布だ。
 インドのサリーみたいな、「ブルータスお前もか」の人みたいな、布をグルグル巻いて引っ掛ける形で、侍女たちも初めてだから試行錯誤してる。

「これは代々伝わる衣装なんですか?」
 衣装と言うより布だな。
「いえ、今回のために用意しました」
 何せ、聖女の体型が来るまで分からないので、布だけを用意して、言い伝えられている巻き付け方をするのだそうだ。まあ、召喚してからサイズを計って仕立てるより確実だよね。神事が終わったら布に戻せるし。


 何とか終わって、届いた昼食を食べ終わった頃、王子様が城の案内にやって来た。
 
 私と王子の前後にさりげなく護衛らしき人がついてる。
 嬉々として歩いて行くが、城は入り組んでいて、すぐに方向感覚が無くなってどこを歩いているのか分からなくなった。
「分かりにくくてすみません」
「いえ、こうしないと敵が襲撃した時すぐに目的地へ行けて、城を制圧されてしまいますよね」
「聖女アユミはよくご存知ですね」
 でも『アルファパレス』では大抵妾腹の第二王子とか王弟が敵に協力していて、あっさり王の元へ行けちゃうんだけどね……。この国にはそんな王子いないのかな。

 歩きながら、「さすがはお城。廊下もドアも広~い!」などと思ってたら、ドレスを着ている人がいるから幅が必要なんだと気付いた。
 もし我が家にレティシア様がやってきたら、廊下でドレスが引っ掛かるな、などと想像してつい笑ってしまい、王子様に何を笑っているのか聞かれたので教えてあげたら
「くくっ、聖女アユミの家ではドレスが引っ掛かるのか。聖女アユミの国はドレスを着ないのか?」
と、聞かれた。
「着ませんねぇ。着るとしたら自分の結婚式くらいですね」
 当然、予定など無い!

「なら、着てみるか。縫製部へ行こう」
「い、いえ! もったいないからいいです!」
「ああ、わざわざ作るのでは無い。お客のドレスが汚れたり破れた時に備えて用意してあるドレスがあるのだ。今日はドレスを着て夕食をとらないか?」
 あ、『アルファパレス』でドレスに赤ワインを掛けられた時に登場するやつですね。
 それなら喜んで、と付いて行く。
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