三日天下の聖女です!

あんど もあ

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 前を歩いていた護衛さんが縫製部らしき部屋の扉を開けると、王子様に気付いた責任者らしきおじさんが飛んできた。
「殿下! そのワンピースに何か問題がありましたでしょうか」
 部屋にいた人たちに緊張が走ったのがわかる。
「いや、晩餐用にドレスを借りたい」
「さようですか。ではこちらへ」
 お騒がせしてすみません、と思いつつ後につく。

「流行遅れになったドレスは撤去するので、あまり数は無いのですが」
と、案内された保管庫は、それでも色んな年齢、嗜好の人に対応できるラインナップだった。
「ふおおお、匠の技だ」
「たくみのわざもいいけど、自分のドレスを決めるんだよ」
「そうでした」
 とは言っても、私の人生で「こんなドレスを着たいわ」とか「どんなドレスが似合うかしら」とか考えたこと無い……。

 う~んと見渡すと、部屋の隅にお針子らしい女性が二人控えているのを見つけた。
 駆け寄って
「あの! 私のドレスを選んでもらえませんか?」
と言うと、驚かれた。
「それでしたら殿下に……」
「男は『似合うもの』じゃなく『着せたいもの』で選ぶからパス! 彼氏が出来たら服の趣味がおかしく変わる娘っているじゃない!(※個人の見解です)」
 それなら……、と引き受けてくれた。

 彼女たちが選んでくれたのは、えんじ色で飾りの少ない、はっきり言ってオバサンくさいドレス。
 内心「ぴちぴち(死語?)の16歳なのに……」と思いつつ姿見の前でドレスを当ててみると……。
「ほう、これは似合うな」
「誠に」
「私が深窓の令嬢に見える……!」
 めっちゃしっくり来るドレス! ありがとうお二人さん!
 大満足で、合う靴と共に私の部屋に届けてもらう事にした。

「聖女アユミは人を見る目があるな」
「餅は餅屋、ドレスはドレス屋です!」
「もち……?」
 あ、餅が無かったか。

 それから、書庫に行ってラノベとは対照的な大きくて重い本を堪能したり、厨房へ行ってIHもガスコンロも無いかまどに「私には自炊は無理だ」となったり。
「次は庭を案内しよう」
と、手を取られて外に出る時、目の端に金髪の縦ロールが見えた気がした。
 振り返ってもドアが閉まるのが見えるだけ。レティシア様かと思ったんだけど、それなら声をかけるよね……。
 ちらっと思った疑問は美麗な庭に吹き飛んだ。
「すごい! 花の色のバリエーションがこんなに~!」
「これだけの種類を一斉に咲かせるなんて、なんてすごい!」
 すごいすごいと進んで行くと、大きな温室があった。やたら丈夫そうな鍵が付いて、曇りガラスは中を覗かせない。
 物々しい作りに
「これって……?」
と聞くと
「禁断の温室と呼ばれている。門外不出の植物を母が管理しているのだが、見たいかい?」
と、物騒な返事が返って来たので、思いっ切り首を横に振る。
 その先の庭を満喫して、
「そろそろドレスの着付けをしないと」
と言われて部屋に戻った。

 
 先に届いていたドレスに侍女の気合が入りまくっていたようで、既にえんじ色のリボンを用意して手ぐすね引いて待ってくれてた。
 肩までの髪が器用にリボンと編み込まれ、右向いて左向いてばんざいしてと言われるままに着付けしてもらっていたらいつの間にか御令嬢が出来上がってた。おおう、コスプレ感が無い! 侍女マジック!
 一緒に借りた靴を履いて完璧……と思ったのだが、考えてみたらヒールのある靴って初めてだ。どうやってこんな不安定なのを履いて歩くの?

 どうせドレスで見えないんだから私が履いて来たスニーカーと交換したらダメかなぁ……などと考えてたら、王子様が部屋まで迎えに来てくれた。
「どうしたんです? わざわざ」
「ドレスの女性にはエスコートが必要だろう?」
 エスコート! そうだ、それがあった!
 ありがたく王子様の腕に絡みついてバランスを取りながら歩く。楽ちん。

「ん? これってエスコートと言うよりつっかえ棒?」
と言ったら、王子様が吹き出した。王子様もそう思ってたんですね……。

 よく見ると王子様も盛装してくれてる。
 おとぎ話の王子様とお姫様のシーンのようで嬉しいな、と思ったら、目の端に廊下の角を金髪の縦ロールの人が曲がって行ったのが見えた。まただ……。
「どうしました? 聖女アユミ」
「金髪の縦ロールの人って多いんですか?」
「たてろーる?」
 あのヘアスタイルの正式名称って何?!
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