三日天下の聖女です!

あんど もあ

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 元の世界へ戻す準備が出来たと連絡が来て、王子様と最初の魔法陣の部屋へ向かう。

 大神官様や神官たちが見守る中、スタスタと魔法陣の中に入る私に、
「本当に帰る気なんだ……」
と、王子様。
 何を今さら?と思ったら、いきなり距離を詰めて私の前に立ち、私の両肩に手を乗せ
「聖女アユミ。城に残って私のかたわらにいてくれないか」
と、言った。
「はあ……」
「あなたのような聡明な人にずっとそばにいて欲しいんだ」
「つまり……側近のスカウトですか?」

 ガクッと頭を落とした王子様は
「いや……プロポーズだ」
と、言った。

 うわ、私『アルファパレス』テンプレの「鈍感ヒロイン」やっちゃった? いや、女子高生相手に遠回し過ぎるのが悪い! 「好きだ。結婚しよう」なら分かったんだよー!
 これが貴族の遠回しな話術? 鈍感ヒロインの皆さん、今まで「ありえねー」とか思ってごめんね!

 でもね、王子様は絶対に私を誤解している。

 聡明ってのは、私からファイアローズを笑顔で受け取りつつ、頭の中では高速でレティシア様の計画を読み取り、神事を漏らした人、ファイアローズを盗んだ人、間に入った人を割り出して、夜のうちに証拠を固める王妃様みたいな人の事だ。
 そして、レティシア様が祭壇に無い「ファイアローズ」を口に出して逃げ場を無くしてから、行動に出る……。後から説明を聞いて唖然としたよ。
 私に王妃はぜってぇ無理だ!
 
 私がはっきりきっぱり断ろうとしたのを察して、
「今回のお礼に、これを。本当にありがとう、聖女アユミ」
と、私の手のひらに何かを載せてくれた。

 小さなお花のブローチ。花びらは宝石なのだろう。薄暗い部屋の中でも赤く輝いている。
 価値とかよく分からないが、私に似合う物と考えてこの可愛いブローチを選んでくれたのかと思うと笑顔になってしまう。
「ありがとう、王子様」
 ブローチを、落とさないように制服の内ポケットに入れる。

「今更なんですが、王子様の名前って何ですか?」
「本当に今更だね」
「せっかくの初めてのプロポーズなのに、今聞いておかないとこれから何十年も思い出すたびに『あの人誰だったかな~』ってなるかと思って」
 なんてね。本当は、王子様は「王子様」ってキャラで、それ以上でもそれ以下でも無いと思ってたんだ。ごめんね。

 王子様は、少し笑ってから名前を教えてくれた。


 王子様が魔法陣から出ると、神官長や神官たちが呪文のようなものを唱え出した。
 さよなら、みなさん。
 意識が消えていく。



 私の体の中に私がぎゅうぎゅうと押し込められるような不快感。ピッタリ収まった時、誰かに背中を思いっきり押された気がした。
 
 はっと気がつくと、私はいつもの朝の通学路でカバンを持って立っていた。
 内ポケットにはブローチの感触。
 もう少し経ったら、プロポーズを断った事を後悔するかもしれないな。


 感傷に浸る間もなく、私は学校へ走り出した。







*王妃様の禁断の温室*

「ここにある花を外で見たら、引っこ抜きなさい!」という強い毒性のある植物の見本市&研究室。
悪用されないよう口外禁止、入室禁止、持ち出し厳禁。真実を知ってるのはごく一部。
ファイアローズも、あゆみがうっかり口に咥えて「オレ!」などとフラメンコごっこをしてたら死んでた。


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