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「婚約破棄をありがとう」の続編です。
できればこちらを先にお読みください。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「パトリシア・オーズ! 貴様とは婚約破棄だ!」
王立高等学院の卒業パーティー。
いきなり名指しされてあっけにとられていたパーちゃんが口を開く。
「……どちら様ですか?」
パーちゃん、半年もこの国に住んでたんだから第三王子の顔くらい覚えておこうよ!
* * * * * * * *
「パトリシアに、隣国の王立高等学院に留学してらもらいたいの」
ある日辺境にやって来たグレイシア・オーズ公爵令嬢は、案内された応接室でパトリシアより一歳年下とは思えない堂々とした態度で命じた。
「私、半年も前にこの国の王立学園を卒業してますよ」
きょとんとするパーちゃんが今日も愛らしい。
ちなみに、パーちゃんの生まれたオーズ伯爵家は何代か前にオーズ公爵家から分家した家だそうだが、今ではほとんど血のつながりは無いらしい。パーちゃんは、単にグレイシア嬢と気が合うので付き合っているそうだ。どう見ても反対のタイプなのに。
「知ってるわよそんな事。あの卒業パーティーは今じゃ伝説よ」
パーちゃんは、卒業パーティーでリシャール殿下から婚約破棄されて辺境にやって来て俺の婚約者になった。あれからもう半年か……。
「綺麗になったわね。パトリシア」
「ラルフ様が毎晩可愛がってくださるからです」
「うらやましいわ。体力のある殿方で」
「うらやましいでしょう」
笑い合う二人。
色っぽい話をしてるようだが、パーちゃんの言う「毎晩可愛がる」は、いつまでも本を読んでいたいパーちゃんを、俺が椅子ごと浴室まで引きずって行ってスタンバっている侍女にパス。(屋敷の者たちも、パーちゃんの取り扱いに慣れた)風呂上がりの可愛くなったパーちゃんを今度は寝室に引きずって可愛い可愛いと寝かし付ける、というルーティンの事だ。
グレイシア嬢もそれを分かっているようなので、本当にパーちゃんと仲がいいみたいだ。
「実は私も縁談が決まったのよ」
「え? 隣国の王太子と上手く行ったんですか?」
「ええ、やっと本決まりになったの」
「おめでとうございます!」
「お、おめでとうございます」
いいのかそんな重大な事を公表前にここで言って。
「でもね、向こうの貴族たちには王太子の婚約者に色々な考えの人がいてね……。私が嫁ぐ前に膿を出し切ろうと思うのよ」
含みのある顔でグレイシア嬢が笑う。
「へー」
パーちゃんの辞書に「緊張感」という文字は無い。
「だから、パトリシアに留学してもらって掻き回してもらおうと思って」
「へぇっ? 無理ですよ!」
「魔導物理学のブライト博士」
逃げ腰だったパーちゃんの動きが停止する。
「彼が今年から王立高等学院の教授になったのよ」
「!!」
ギギツと音を立てるようにぎこちなく、パーちゃんの首がグレイシア嬢に向く。
「ブ……ブライト博士の授業を受けられる……」
ま、待て! 落ち着けパーちゃん! 目が輝いているぞ!
「でも、私に掻き回すなんて無理……」
「パトリシアが普通にしてるだけで充分よ。もし、王太子の婚約者なのか聞かれても否定していいわ。どうせ自分に都合よく解釈するんだから」
「それなら……」
待て、君は俺の婚約者だぞ? あと半年で結婚だよ? と、焦っていたら、グレイシア嬢が笑顔で言った。
「ラルフ様も護衛として一緒に行かれては? 婚前旅行ですわ」
この人はいい人だー!!
* * * * * * * *
できればこちらを先にお読みください。
ー ー ー ー ー ー ー ー
「パトリシア・オーズ! 貴様とは婚約破棄だ!」
王立高等学院の卒業パーティー。
いきなり名指しされてあっけにとられていたパーちゃんが口を開く。
「……どちら様ですか?」
パーちゃん、半年もこの国に住んでたんだから第三王子の顔くらい覚えておこうよ!
* * * * * * * *
「パトリシアに、隣国の王立高等学院に留学してらもらいたいの」
ある日辺境にやって来たグレイシア・オーズ公爵令嬢は、案内された応接室でパトリシアより一歳年下とは思えない堂々とした態度で命じた。
「私、半年も前にこの国の王立学園を卒業してますよ」
きょとんとするパーちゃんが今日も愛らしい。
ちなみに、パーちゃんの生まれたオーズ伯爵家は何代か前にオーズ公爵家から分家した家だそうだが、今ではほとんど血のつながりは無いらしい。パーちゃんは、単にグレイシア嬢と気が合うので付き合っているそうだ。どう見ても反対のタイプなのに。
「知ってるわよそんな事。あの卒業パーティーは今じゃ伝説よ」
パーちゃんは、卒業パーティーでリシャール殿下から婚約破棄されて辺境にやって来て俺の婚約者になった。あれからもう半年か……。
「綺麗になったわね。パトリシア」
「ラルフ様が毎晩可愛がってくださるからです」
「うらやましいわ。体力のある殿方で」
「うらやましいでしょう」
笑い合う二人。
色っぽい話をしてるようだが、パーちゃんの言う「毎晩可愛がる」は、いつまでも本を読んでいたいパーちゃんを、俺が椅子ごと浴室まで引きずって行ってスタンバっている侍女にパス。(屋敷の者たちも、パーちゃんの取り扱いに慣れた)風呂上がりの可愛くなったパーちゃんを今度は寝室に引きずって可愛い可愛いと寝かし付ける、というルーティンの事だ。
グレイシア嬢もそれを分かっているようなので、本当にパーちゃんと仲がいいみたいだ。
「実は私も縁談が決まったのよ」
「え? 隣国の王太子と上手く行ったんですか?」
「ええ、やっと本決まりになったの」
「おめでとうございます!」
「お、おめでとうございます」
いいのかそんな重大な事を公表前にここで言って。
「でもね、向こうの貴族たちには王太子の婚約者に色々な考えの人がいてね……。私が嫁ぐ前に膿を出し切ろうと思うのよ」
含みのある顔でグレイシア嬢が笑う。
「へー」
パーちゃんの辞書に「緊張感」という文字は無い。
「だから、パトリシアに留学してもらって掻き回してもらおうと思って」
「へぇっ? 無理ですよ!」
「魔導物理学のブライト博士」
逃げ腰だったパーちゃんの動きが停止する。
「彼が今年から王立高等学院の教授になったのよ」
「!!」
ギギツと音を立てるようにぎこちなく、パーちゃんの首がグレイシア嬢に向く。
「ブ……ブライト博士の授業を受けられる……」
ま、待て! 落ち着けパーちゃん! 目が輝いているぞ!
「でも、私に掻き回すなんて無理……」
「パトリシアが普通にしてるだけで充分よ。もし、王太子の婚約者なのか聞かれても否定していいわ。どうせ自分に都合よく解釈するんだから」
「それなら……」
待て、君は俺の婚約者だぞ? あと半年で結婚だよ? と、焦っていたら、グレイシア嬢が笑顔で言った。
「ラルフ様も護衛として一緒に行かれては? 婚前旅行ですわ」
この人はいい人だー!!
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