卒業パーティーのその後は

あんど もあ

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前編

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「アルテミス・ダークムーン! お前とは今日で婚約破棄だ!」

 卒業パーティでガイア王子が私の名を呼びました。断罪シーンの始まりです。私はガイア王子の前へ足を運びます。

 ガイア王子の腕に絡みつくのは、魔力の多さから学園の奨学生になった平民のサンディ。
 勝ち誇った視線を私に投げかけますが、薔薇無し・BGM無し・エフェクト無しって、歴代サンディで最も地味な婚約破棄シーンですわ。あなた、本当にガイア王子の好感度を上げる以外なんにもしてなかったんですのね…。

 こちらを窺う周りの人たちも、あなたたちに興味無さそうですわよ。ヒロインがそれでいいんですの?

「婚約破棄の理由をお聞かせください」
「お前が私の婚約者の座に胡坐あぐらをかいて、いたいけなサンディをいじめたからだ!」

 もう何十回目かのやりとり。
 そう、私は数えきれないほど学園の入学式から卒業パーティまでの時間を繰り返している。私が何かをしてもしなくても、ガイア王子はサンディを好きになり、私がいじめてもいじめなくても、卒業パーティで婚約破棄される。
 やっと卒業パーティまで来たと思えば、また入学式になって新しいサンディが現れる。

 周りの誰にも理解されず、絶望する事にすら疲れた頃、当時のサンディが私が記憶を持ったまま人生を繰り返している事に気付いて、この世界について教えてくれました。

 ここは「太陽の乙女は約束の地でキスをする」というハレンチな題名の乙女ゲームの世界で、サンディはヒロイン、アルテミスは悪役令嬢なのだと。

『ここはね、このゲームが好きだった人の、最後の夢なのよ!』
『夢?』
『そう! 病院のベッドでスマホ越しにしかお目にかかれなかった推しのガイア王子とリアルに触れ合えて、ガチで話せて、マジで恋愛できるんだよ! きっとゲームの神様からのプレゼントだよ!』
 分からない単語が飛び交ってますが、かなり嬉しいのですね。

『アルテミスはつらいだろうけど、私たちには最初で最後の最っっ高の夢なの! どうか立派な悪役令嬢であって』
 そう言われたら、腹を括って悪役令嬢するしかないではないですか。

 そう決心してからどれくらいの時がたったのでしょう。私は、たくさんのサンディに満足いくエンディングを提供できたと自負しております。


「私はいじめたりなどしていませんわ」
 だけど、今回のサンディにだけは私は何もしてませんの。ガイア王子にお似合いのサンディなら、ちゃんと自分の役目を果たすのですが(階段から突き落としても膝を擦りむくだけですものね。さすがはヒロイン)、今回のサンディは魔法を使う練習もせず、当然その魔法で人を救う事も無く、学業もほっぽり出してガイア王子と遊び歩き、ガイア王子の威を借りて身分の低い生徒たちに嫌がらせ。

 そんな人をいじめるなんて、悪役令嬢の矜持が許しませんわ。私にいじめられたかったら、私が認めるだけのサンディと成りなさいませ。
ガイア王子は、どんなサンディでも好きになるみたいですけど。(「強制力」と言うそうです)
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