卒業パーティーのその後は

あんど もあ

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後編

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「ひどぉい。ガイア様ぁ~」
と、ガイア王子に身を押し付ける度に髪飾りとイヤリングとネックレスとブレスレットの宝石がキラキラ輝きます。あなた、平民でしたわよね…?

「きっとアルテミス様には、私なんていじめられて死んじゃっても気にならない存在なんですぅ」
「なんと傲慢な!」
「だから、何もしていませんわ」

 「いじめた」「いじめてない」と、頭の悪い水掛け論が続く。証拠くらい捏造しといていただきたいわ。

「アルテミス様ぁ、どうして罪を認めてくださらないのですかぁ?」
 サンディが私に駆け寄る。
「やっていないことを認めるわけにはいきません」
 悪役令嬢としては、断罪されるのは仕事の一環ですが、冤罪をかけられるのは許容できません。

「私、怖かったのにぃ。一言、謝ってさえくだされば…」
 ウルウルと私を見上げるサンディ。ガイア王子はサンディの健気さに打ち震えているようですが、そのサンディは
「あんたには分からないだろうけどぉ、あんたは悪役令嬢なんだからどっちみち断罪されんのよ」
と、小さな声で嬉しそうに伝えてますわよ。

「知ってますわ。前のサンディが教えてくれました。若くしてお亡くなりになったそうですね。お気の毒に」
「…えっ?」
 あら、『乙女ゲームとは乙女がするゲーム』と聞いたので乙女だったのだと思ったのですが。そうですね、乙女と決めつけるのは早計でしたわ。

「私が……死んだ?」
 あ、そっちでしたか。死んだと自覚の無い方もいらっしゃるのですね。

 バッと後ろを振り向き、自分を見つめるガイア王子に目を見開くサンディ。
「何よこれ、もうエンディングじゃない」
「王子ルート攻略成功、ですね。おめでとうございます」
「エンディングの後、どうなるの? …まさか地獄?」

 物騒な言葉が聞こえました。そうだわ、亡くなる理由は病気とは限りません。このサンディは、ろくな死に方をしなかったのかもしれませんわね。

「さあ……。私はまた入学式で新しいサンディと出会うので」
 失礼します、とカーテシーをして背を向ける。出口へと歩き出すと、後ろから「嫌よ! こんなクソな世界…冗談じゃないわ!」と声が聞こえ、サンディが私を追い越して走り去って行きました。

 皆、サンディが扉の向こうに消えるのを、呆然と見送るしかありません。



 そして、サンディはそのまま姿を消してしまいました。扉の横に立っていた衛兵にすら気付かれずに。

 なぜか、もう時間は巻き戻りませんでした。
 多分、ゲームの神様(?)が、ヒロインのサンディにこの世界を否定されたことで、もうサンディを招くのはやめたのではないかしら。(神様のくせに打たれ弱い…)

 初めて迎える、卒業パーティの後の生活。
 ガイア王子は勝手な婚約破棄を国王陛下に叱責され、挽回を目指して公務に励んでいます。サンディは逃走中(という事に)。

 私は王子有責の婚約解消となり、「これからはキズモノ令嬢として念願の地味で静かな生活を…!」と、思っていたのですが。


「ニシダ王国は鳥を神の遣いと考え、決して食べません。晩餐会には鶏料理を出さないでください。特に第三王子は神官になる清浄なお身体なので、卵も禁止です」
「ミナミノ王国の王妃様は職人の手作業を尊びますので、お土産にクフ織を差し上げては? 我が国では地味だとあまり人気が無いクフ織ですが、あの緻密な地模様は王妃様のお気に召すはずです」
「クフ織の職人ですか? クフ山の麓の村に三人いますわ」

 うんざりするほど繰り返した日々のおかげでたっぷり溜まった知識を求められるままに使っていたら、宰相補佐室に私の机が用意されました。

「それはいいのですが、何故か私がどの補佐官とくっつくか皆さんの話題になってるみたいなんですの」
 仕事で顔を合わせたガイア王子とおしゃべり。強制力が無くなり、婚約者でも無くなったガイア王子は、今は話しやすい元同級生です。

「そりゃそうだよ。王子を振った君が次に誰を選ぶか、皆興味津々だから」
「王子を振った? 王子が私を振ったんですよ?」
「世間では、才女の君がアホな王子を見限ったと思ってるのさ。君を狙ってるのは宰相補佐官たちだけじゃないよ。蝗害予防の防御魔法を打ち合わせに行った魔法省の人や、土砂崩れへの救助を頼みに行った騎士団の人とか、貧民街への定期的な炊き出しの予算をもぎ取りに行った財務省の人とか…」
「女子力のカケラもない仕事の事しか話してませんわよ?」
「ちなみに君を国外に出させないように、誰かが君を射止めるように父上も彼らを煽ってる」 

「……めんどくさい」

 つい、淑女らしからぬ声が出て、ガイア王子が大笑いしてます。





 ねえゲームの神様、まさか私がヒロインの乙女ゲームが始まっていませんよね…?
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