【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
93 / 233

92:焦燥

しおりを挟む
 とある森の中にある、洞穴にて___


 (不味い不味い不味い!)ディアナは焦っていた。ダンフィールはまんまと騙し果せたのに、あのユージィンとかいう人族の男とイシュタルという『竜の祖』にはバレていたようだったからだ。(どうして?一体なぜ?それに疑問は他にもあった。あの人族の男が言ったように、炎舞の腕輪がなければ、あの遺跡の門は開かない。なのに、なぜあの男は遺跡に入ってアレを持ちだす事が可能だったの?わからないわ!)ディアナは今の状況が当初描いていたものとかけ離れていることに、かなり焦っていた。(このままじゃ、不味いわ!)咄嗟に眼鏡をかけた人族の男を人質にしたものの、ユージィンが取引に応じてくれるのか、ディアナは不安だった。もし見捨てるようなことをしたら?何故だか分からないか、あの男ならそれくらい平気でやりかねないと、ディアナには思えたのだ。

 「ディアナ、顔色が悪い。大丈夫か?」

 「!、ダ、ダン大丈夫よ。」

 「心配するな。あいつらは絶対にこの眼鏡を助けにくる。ま、あの男はよくわからんが・・・姉貴はそうするだろう。」

 ダンフィールもユージィンについては、何か思うところがあるようだった。眼鏡、つまりはライモンドのことだが、手足を縄で縛られ地面に直に横たわっていた。まだ魔法で眠らされていたようであった。

 「姉貴って・・・あのイシュタルとかいう赤髪の女ね。」

 「あぁ、姉貴はああ見えて昔から面倒見がいいし、優しい女なのは、姉弟なら皆わかってるからな。だから絶対に交渉の場には来るさ。」

 「・・・わかったわ。ダンが言うなら信じる。」

 「だから、そんな不安そうな顔はするな。な?」

 そう言うと、ダンフィールは横に座っていたディアナの肩に武骨な大きな手を乗せ、自分に優しく抱き寄せた。

 「ダン・・・」

 「ん?どうした?」

 「・・・優しいのね。」

 「今更何を言ってるんだ。ディアナは番なのだから、当然だろう?」

 「番(つがい)・・・ね。」

 わかっていたことなのに、ディアナの心はチクりと感じるものがあった。








竜騎士団団長室___


 「で、このうさ耳のお嬢さんが、『炎舞の腕輪』の所有権を主張している、ということだね。」

 「はい、お話しを伺ったところ、遺跡の話が出ましたので、関係があると思いこちらに連れて参りました。」

 あれから、セレスティアとカイエルはエメリーネを竜騎士本部に連れてきた。遺跡の話をテオから詳細に聞くためであるが、まさかひと騒動起こり、まさかライモンドが攫われるような事態に陥っていたとは、思いも寄らず驚いていた。

 「カイエル!てか言ってよ!!」

 「あぁ、兄貴のこと?俺的にはどうでも良かったからな。」

 「カイエル!」

 「いや、だってさ、まさかあのメガネが攫われることになるなんて、誰も思わないだろう?」

 「そ、それはそうだけど・・・」

 セレスティアも言われてみれば、結果論であることに気付くも、何となく腑には落ちなかった。

 「まぁ、それは近々交渉するだろうからね。そしてうさ耳のお嬢さん?」

 「あ、はいエメリーネ・オルタと申します。よろしくお願いします!」

 エメリーネはユージィンに深々と頭を下げていた。 

 「エメリーネさんね、申し訳ないが、何か証拠になるものはないかな?」

 「え、証拠ですか?」
 
 「うん、口頭だけで、あの腕輪が自分の村の物だと言われてもね。言い方は悪いけれど、口ではどうとでも言えるだろう?」

 エメリーネはの顔は、見る見るうちに青ざめていった。自分は勿論嘘は言ってはいないが、言われてみれば第三者から見て、自分の村のモノだと証明するものがないことに気付いたからだ。エメリーネはオロオロして、

 「そ、そんな・・・どうしよう・・・」

 「エ、エメリーネさん、何か託されていない?手紙とか、何か?」

 セレスティアも慌てて、どうにかならないかと提案してみた。

 「・・何も・・・ありません。」

 エメリーネのメガネの奥の瞳からはハラハラと涙が零れていった。

 「ごめんなさい!ごめんなさい!そんなこと何も考えていませんでした。どうしましょう~~」

 「ユージィン、意地悪言っちゃダメよ。」

 イシュタルがユージィンを窘めた。

 「そうかい?事実だと思うけどね?」

 「もう・・・この兎の獣人の彼女の言うことは私が保証するわ。」

 「俺も、多分こいつ嘘は言ってないと思う。」

 思わぬところで、カイエルも賛同した。

 「え?カイエルわかるの?」

 カイエルがまさかここで出てくるとは全く思ってもみなかったセレスティアは驚いた。

 「うーん、嘘かどうかはわからねぇけど、悪意があるかはどうかはわかるからな。こいつには、そういうのは感じられねぇし。」

 「私もカイエルと同意見よ。私とカイエルは悪意には敏感だからわかるのよ。ただ、」

 「ただ?」

 「息を吸うように、嘘や悪事を平然とできる人は、区別できないわね。私とカイエルは良心の呵責の『揺れ』を感じ取って、悪意を判別することができるの。大抵の人はよほど根っからの悪人でない限りは良心の呵責の揺れが大なり小なりあるものなのよ。」 
 
 言われてみて、セレスティアは思い当たることを思い出した。イシュタルことイールは自分が幼い時も継母や義妹の悪意から守ってくれたことがあったが、そういうことだったのかと納得したのだ。

 「し、信じてくれるんですか?」

 「えぇ。」

 イシュタルはエメリーネにニッコリと安心させるように微笑んだ。

 「あ、ありがとうございます!」

 エメリーネは何度も何度も頭を下げていた。


 そこへ、団長室のドアがけたたましいノックと共に、ほぼ同時にドアが開いた。

 「団長!火急の為、取り急ぎ失礼します!」

 「用件は?」

 「これを・・・」

  竜騎士団員から手渡されたメモのような紙切れをユージィンはザっと読んだ。 

 「来たね。」

 それは、交換する物の要求と日時と場所が記してある、ディアナからの人質交渉の招待状であった。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...