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92:焦燥
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とある森の中にある、洞穴にて___
(不味い不味い不味い!)ディアナは焦っていた。ダンフィールはまんまと騙し果せたのに、あのユージィンとかいう人族の男とイシュタルという『竜の祖』にはバレていたようだったからだ。(どうして?一体なぜ?それに疑問は他にもあった。あの人族の男が言ったように、炎舞の腕輪がなければ、あの遺跡の門は開かない。なのに、なぜあの男は遺跡に入ってアレを持ちだす事が可能だったの?わからないわ!)ディアナは今の状況が当初描いていたものとかけ離れていることに、かなり焦っていた。(このままじゃ、不味いわ!)咄嗟に眼鏡をかけた人族の男を人質にしたものの、ユージィンが取引に応じてくれるのか、ディアナは不安だった。もし見捨てるようなことをしたら?何故だか分からないか、あの男ならそれくらい平気でやりかねないと、ディアナには思えたのだ。
「ディアナ、顔色が悪い。大丈夫か?」
「!、ダ、ダン大丈夫よ。」
「心配するな。あいつらは絶対にこの眼鏡を助けにくる。ま、あの男はよくわからんが・・・姉貴はそうするだろう。」
ダンフィールもユージィンについては、何か思うところがあるようだった。眼鏡、つまりはライモンドのことだが、手足を縄で縛られ地面に直に横たわっていた。まだ魔法で眠らされていたようであった。
「姉貴って・・・あのイシュタルとかいう赤髪の女ね。」
「あぁ、姉貴はああ見えて昔から面倒見がいいし、優しい女なのは、姉弟なら皆わかってるからな。だから絶対に交渉の場には来るさ。」
「・・・わかったわ。ダンが言うなら信じる。」
「だから、そんな不安そうな顔はするな。な?」
そう言うと、ダンフィールは横に座っていたディアナの肩に武骨な大きな手を乗せ、自分に優しく抱き寄せた。
「ダン・・・」
「ん?どうした?」
「・・・優しいのね。」
「今更何を言ってるんだ。ディアナは番なのだから、当然だろう?」
「番(つがい)・・・ね。」
わかっていたことなのに、ディアナの心はチクりと感じるものがあった。
竜騎士団団長室___
「で、このうさ耳のお嬢さんが、『炎舞の腕輪』の所有権を主張している、ということだね。」
「はい、お話しを伺ったところ、遺跡の話が出ましたので、関係があると思いこちらに連れて参りました。」
あれから、セレスティアとカイエルはエメリーネを竜騎士本部に連れてきた。遺跡の話をテオから詳細に聞くためであるが、まさかひと騒動起こり、まさかライモンドが攫われるような事態に陥っていたとは、思いも寄らず驚いていた。
「カイエル!てか言ってよ!!」
「あぁ、兄貴のこと?俺的にはどうでも良かったからな。」
「カイエル!」
「いや、だってさ、まさかあのメガネが攫われることになるなんて、誰も思わないだろう?」
「そ、それはそうだけど・・・」
セレスティアも言われてみれば、結果論であることに気付くも、何となく腑には落ちなかった。
「まぁ、それは近々交渉するだろうからね。そしてうさ耳のお嬢さん?」
「あ、はいエメリーネ・オルタと申します。よろしくお願いします!」
エメリーネはユージィンに深々と頭を下げていた。
「エメリーネさんね、申し訳ないが、何か証拠になるものはないかな?」
「え、証拠ですか?」
「うん、口頭だけで、あの腕輪が自分の村の物だと言われてもね。言い方は悪いけれど、口ではどうとでも言えるだろう?」
エメリーネはの顔は、見る見るうちに青ざめていった。自分は勿論嘘は言ってはいないが、言われてみれば第三者から見て、自分の村のモノだと証明するものがないことに気付いたからだ。エメリーネはオロオロして、
「そ、そんな・・・どうしよう・・・」
「エ、エメリーネさん、何か託されていない?手紙とか、何か?」
セレスティアも慌てて、どうにかならないかと提案してみた。
「・・何も・・・ありません。」
エメリーネのメガネの奥の瞳からはハラハラと涙が零れていった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!そんなこと何も考えていませんでした。どうしましょう~~」
「ユージィン、意地悪言っちゃダメよ。」
イシュタルがユージィンを窘めた。
「そうかい?事実だと思うけどね?」
「もう・・・この兎の獣人の彼女の言うことは私が保証するわ。」
「俺も、多分こいつ嘘は言ってないと思う。」
思わぬところで、カイエルも賛同した。
「え?カイエルわかるの?」
カイエルがまさかここで出てくるとは全く思ってもみなかったセレスティアは驚いた。
「うーん、嘘かどうかはわからねぇけど、悪意があるかはどうかはわかるからな。こいつには、そういうのは感じられねぇし。」
「私もカイエルと同意見よ。私とカイエルは悪意には敏感だからわかるのよ。ただ、」
「ただ?」
「息を吸うように、嘘や悪事を平然とできる人は、区別できないわね。私とカイエルは良心の呵責の『揺れ』を感じ取って、悪意を判別することができるの。大抵の人はよほど根っからの悪人でない限りは良心の呵責の揺れが大なり小なりあるものなのよ。」
言われてみて、セレスティアは思い当たることを思い出した。イシュタルことイールは自分が幼い時も継母や義妹の悪意から守ってくれたことがあったが、そういうことだったのかと納得したのだ。
「し、信じてくれるんですか?」
「えぇ。」
イシュタルはエメリーネにニッコリと安心させるように微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!」
エメリーネは何度も何度も頭を下げていた。
そこへ、団長室のドアがけたたましいノックと共に、ほぼ同時にドアが開いた。
「団長!火急の為、取り急ぎ失礼します!」
「用件は?」
「これを・・・」
竜騎士団員から手渡されたメモのような紙切れをユージィンはザっと読んだ。
「来たね。」
それは、交換する物の要求と日時と場所が記してある、ディアナからの人質交渉の招待状であった。
(不味い不味い不味い!)ディアナは焦っていた。ダンフィールはまんまと騙し果せたのに、あのユージィンとかいう人族の男とイシュタルという『竜の祖』にはバレていたようだったからだ。(どうして?一体なぜ?それに疑問は他にもあった。あの人族の男が言ったように、炎舞の腕輪がなければ、あの遺跡の門は開かない。なのに、なぜあの男は遺跡に入ってアレを持ちだす事が可能だったの?わからないわ!)ディアナは今の状況が当初描いていたものとかけ離れていることに、かなり焦っていた。(このままじゃ、不味いわ!)咄嗟に眼鏡をかけた人族の男を人質にしたものの、ユージィンが取引に応じてくれるのか、ディアナは不安だった。もし見捨てるようなことをしたら?何故だか分からないか、あの男ならそれくらい平気でやりかねないと、ディアナには思えたのだ。
「ディアナ、顔色が悪い。大丈夫か?」
「!、ダ、ダン大丈夫よ。」
「心配するな。あいつらは絶対にこの眼鏡を助けにくる。ま、あの男はよくわからんが・・・姉貴はそうするだろう。」
ダンフィールもユージィンについては、何か思うところがあるようだった。眼鏡、つまりはライモンドのことだが、手足を縄で縛られ地面に直に横たわっていた。まだ魔法で眠らされていたようであった。
「姉貴って・・・あのイシュタルとかいう赤髪の女ね。」
「あぁ、姉貴はああ見えて昔から面倒見がいいし、優しい女なのは、姉弟なら皆わかってるからな。だから絶対に交渉の場には来るさ。」
「・・・わかったわ。ダンが言うなら信じる。」
「だから、そんな不安そうな顔はするな。な?」
そう言うと、ダンフィールは横に座っていたディアナの肩に武骨な大きな手を乗せ、自分に優しく抱き寄せた。
「ダン・・・」
「ん?どうした?」
「・・・優しいのね。」
「今更何を言ってるんだ。ディアナは番なのだから、当然だろう?」
「番(つがい)・・・ね。」
わかっていたことなのに、ディアナの心はチクりと感じるものがあった。
竜騎士団団長室___
「で、このうさ耳のお嬢さんが、『炎舞の腕輪』の所有権を主張している、ということだね。」
「はい、お話しを伺ったところ、遺跡の話が出ましたので、関係があると思いこちらに連れて参りました。」
あれから、セレスティアとカイエルはエメリーネを竜騎士本部に連れてきた。遺跡の話をテオから詳細に聞くためであるが、まさかひと騒動起こり、まさかライモンドが攫われるような事態に陥っていたとは、思いも寄らず驚いていた。
「カイエル!てか言ってよ!!」
「あぁ、兄貴のこと?俺的にはどうでも良かったからな。」
「カイエル!」
「いや、だってさ、まさかあのメガネが攫われることになるなんて、誰も思わないだろう?」
「そ、それはそうだけど・・・」
セレスティアも言われてみれば、結果論であることに気付くも、何となく腑には落ちなかった。
「まぁ、それは近々交渉するだろうからね。そしてうさ耳のお嬢さん?」
「あ、はいエメリーネ・オルタと申します。よろしくお願いします!」
エメリーネはユージィンに深々と頭を下げていた。
「エメリーネさんね、申し訳ないが、何か証拠になるものはないかな?」
「え、証拠ですか?」
「うん、口頭だけで、あの腕輪が自分の村の物だと言われてもね。言い方は悪いけれど、口ではどうとでも言えるだろう?」
エメリーネはの顔は、見る見るうちに青ざめていった。自分は勿論嘘は言ってはいないが、言われてみれば第三者から見て、自分の村のモノだと証明するものがないことに気付いたからだ。エメリーネはオロオロして、
「そ、そんな・・・どうしよう・・・」
「エ、エメリーネさん、何か託されていない?手紙とか、何か?」
セレスティアも慌てて、どうにかならないかと提案してみた。
「・・何も・・・ありません。」
エメリーネのメガネの奥の瞳からはハラハラと涙が零れていった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!そんなこと何も考えていませんでした。どうしましょう~~」
「ユージィン、意地悪言っちゃダメよ。」
イシュタルがユージィンを窘めた。
「そうかい?事実だと思うけどね?」
「もう・・・この兎の獣人の彼女の言うことは私が保証するわ。」
「俺も、多分こいつ嘘は言ってないと思う。」
思わぬところで、カイエルも賛同した。
「え?カイエルわかるの?」
カイエルがまさかここで出てくるとは全く思ってもみなかったセレスティアは驚いた。
「うーん、嘘かどうかはわからねぇけど、悪意があるかはどうかはわかるからな。こいつには、そういうのは感じられねぇし。」
「私もカイエルと同意見よ。私とカイエルは悪意には敏感だからわかるのよ。ただ、」
「ただ?」
「息を吸うように、嘘や悪事を平然とできる人は、区別できないわね。私とカイエルは良心の呵責の『揺れ』を感じ取って、悪意を判別することができるの。大抵の人はよほど根っからの悪人でない限りは良心の呵責の揺れが大なり小なりあるものなのよ。」
言われてみて、セレスティアは思い当たることを思い出した。イシュタルことイールは自分が幼い時も継母や義妹の悪意から守ってくれたことがあったが、そういうことだったのかと納得したのだ。
「し、信じてくれるんですか?」
「えぇ。」
イシュタルはエメリーネにニッコリと安心させるように微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!」
エメリーネは何度も何度も頭を下げていた。
そこへ、団長室のドアがけたたましいノックと共に、ほぼ同時にドアが開いた。
「団長!火急の為、取り急ぎ失礼します!」
「用件は?」
「これを・・・」
竜騎士団員から手渡されたメモのような紙切れをユージィンはザっと読んだ。
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