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143:ハインツの前世~⑦~
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姉は変わってしまっていた。
今目の前にしても信じたくなかった。以前の姉は、ほぼスッピンで薄い紅を差しただけで、身内目線でも美しい女性であったが、今目の前にいるのは、以前とは比べられないほど、濃い化粧に赤い口紅を塗った、派手な化粧と豪華なドレスと宝石を身に纏った女がいたのだ。
あれから___
すぐにクレア大病院にいって、ハインツは母親に面会をしてきた。とは言っても、眠っている状態だったので、話すことは適わなかったが。
病院の話では、母は確かに病状が悪化したとのことだった。そしてそれには、A級の治癒士でないと対処できなかったものらしい。勿論それには高額な治療費がいる。だがそれを姉は支払ったらしい。そしてその後経過はよくなったものの、まだ本調子ではないため、こうやって眠っている時間が長いとのことだった。
「眠って回復を図っておられます。ですので今のところは経過は順調ですよ。ですが、長い間病を患わっておられたようですので、完治には時間はかかります。」
ハインツは主治医から、そう教えてもらった。取り敢えず、山場を超えたと聞いて安心したが、どうして姉はこんなことになっていたのに、何も教えてくれなかったのか。ハインツは解せなかった。そして主治医から姉の現在住んでいる場所を教えてもらい、ハインツは詳しく姉から話を聞くために会いに行ったのだ。
だが、姉に会いに行って驚愕した。外見があまりに以前とかけ離れていたからだ。
ハインツは姉が住む館のテラスに通されていた。小規模な館ではあったが、貴族らしい高価な調度品が置いてあり、趣味の良さは見ただけでわかった。
「だーかーら!何度も言わせないで!ハインツ、あんたを心配させたくなかったからよ!優しいお姉さまででしょ?」
そういった姉の表情は何ともいえぬ、いやらしい笑いを浮かべた知らない女のようであった。
「ローガン様はね、私を囲うかわりに母さんの治療費を払ってくれるっていうのよ!それに・・・見て!私にもこんな豪華な宝石に、それに小さいけれどこの家も用意してくれたの!あんたにこんな真似ができる?できないでしょ!もう今となっては私はあくせくと働くことをしなくても、こんなに生活が潤っているのよ?!バカバカしくて、もう前のように働くなんてできないわ。」
「だから・・・伯爵の愛人になったのか?」
ハインツは静かに姉ペトラに問うた。ただ、どうして家族である自分に真っ先に相談してくれなかったことが、ハインツは悔しかったのだ。
「何よ!私だって、私だって楽をしたかったのよ!!あんたが小さい時からずっと!!ずっと私は働きずくめだったのよ!それに、病院で聞いたでしょ?母さんの治療は緊急を要したの!あんたに連絡をとって返事なんか待ってられなかったわよ!」
ハンイツは言い返すことはできなかった。実際ずっと頑張っていた姉を見ていたし、自分を育ててくれたのは、姉だったからだ。それに緊急性があったことも、確かに自分の返事など待っている状況ではなかったことは、容易に想像できた。
「姉さん、姉さんは今は幸せなの?」
ハインツは真剣な顔をして、ペトラに聞いた。
「?!」
「僕は姉さんが今まで頑張ってきたのは知っている。だから・・・姉さんが今が幸せだって言うんなら、僕はそれでいいよ。」
これは、ハインツの本音だった。愛人という立場でも、姉が幸せだと思うならそれでもいいと。
「・・・・幸せよ。あの頃よりずっとね。お金があるって素敵ね。見てわからないの?」
ペトラはそう言いながら、自身の身に付けている、宝石に目をやりうっとりとしていた。
「・・・わかったよ。もう何も言わない。姉さん」
「ま、とにかく母さんのことは心配しなくてもいいわ。それぐらいはちゃんとするから安心して。夢見が悪くなるようなことは私もいやだからね。」
ペトラはやれやれと仕方ないといった感じで溜息まじりに伝えた。
実際、今ハンイツは学校に通っている身で、王都から離れている母親の病院に通うことは現時点ではかなり難しかった。できるとすれば学校を辞めなければ無理だということも、ハインツはわかっていた。しかしそれならそれで、学校をやめて、働いてもいいと思っていたのだ。
「ま、何かあったらちゃんと手紙は書くから。わかったらさっさと帰ってくれない?あんたを見ていると、貧乏だったことが思い出されて嫌になるのよ!」
ペトラは見下すような視線でハインツを見ていた。
「わかった。何かあれば連絡してくれ・・・」
「はいはい、わかったわ。」
こうしてハンイツは姉ペトラの変貌ぶりに失意して、ペトラの元を去っていった。
(姉さんが、あんな金の亡者になり果てるなんて・・・僕が甲斐性がないばっかりに!!絶対に、騎士になって昔の姉さんを取り戻す!!)
ハインツは今通っている騎士学校を必ず上位の成績で維持して、竜騎士を目指すと改めて決意した。
ハンイツが帰る様子を館の2階の窓から、ペトラはできるだけ見えないように盗み見ていた。その眼差しは以前の、弟を慈しむ優しいモノであった。
「ハインツ、ごめんね。貴方はきっとこうでも言わないと、きっと自分を責めるもの。私のことは気にせずに、どうか騎士になれるように頑張って・・・」
ペトラの悪態はハンイツに自分を見限ってもらうための芝居だった。こうでも言わないときっとハンイツが後悔するであろうとわかっていたからだ。
ペトラはわざと、悪女を演じていた。そして実際愛人にならないとお金を支援してもらえないのは、本当だった。母親の容体が悪化したため、緊急に治癒士に診てもらわないと、危ない状況だったのだ。だが、治癒士に見てもらうには、結構な費用がかかる。持ち合わせがなかったペトラは、前から声がかかっていた、貴族のローガン伯爵の話を受け入れることにしたのだ。要は自分を身売りしたのだ。だが、そのことを知れば弟であるハインツは騎士学校を中退して、自分が働くと言いかねないことを、ペトラはよくわかっていたのだ。だから悪態を付くことで、自分を見限ってもらおうと、ハインツが後悔しないようにと、わざと嫌な女を演じたのだ。
「ハインツ、貴方ならきっと立派な騎士に、もし本当に叶うなら竜騎士になれますようにお祈りしてるから・・・」
ペトラの目からは一筋の涙が零れていった。
だが、ハインツはこの時、姉の思いは知る由はなかった。
今目の前にしても信じたくなかった。以前の姉は、ほぼスッピンで薄い紅を差しただけで、身内目線でも美しい女性であったが、今目の前にいるのは、以前とは比べられないほど、濃い化粧に赤い口紅を塗った、派手な化粧と豪華なドレスと宝石を身に纏った女がいたのだ。
あれから___
すぐにクレア大病院にいって、ハインツは母親に面会をしてきた。とは言っても、眠っている状態だったので、話すことは適わなかったが。
病院の話では、母は確かに病状が悪化したとのことだった。そしてそれには、A級の治癒士でないと対処できなかったものらしい。勿論それには高額な治療費がいる。だがそれを姉は支払ったらしい。そしてその後経過はよくなったものの、まだ本調子ではないため、こうやって眠っている時間が長いとのことだった。
「眠って回復を図っておられます。ですので今のところは経過は順調ですよ。ですが、長い間病を患わっておられたようですので、完治には時間はかかります。」
ハインツは主治医から、そう教えてもらった。取り敢えず、山場を超えたと聞いて安心したが、どうして姉はこんなことになっていたのに、何も教えてくれなかったのか。ハインツは解せなかった。そして主治医から姉の現在住んでいる場所を教えてもらい、ハインツは詳しく姉から話を聞くために会いに行ったのだ。
だが、姉に会いに行って驚愕した。外見があまりに以前とかけ離れていたからだ。
ハインツは姉が住む館のテラスに通されていた。小規模な館ではあったが、貴族らしい高価な調度品が置いてあり、趣味の良さは見ただけでわかった。
「だーかーら!何度も言わせないで!ハインツ、あんたを心配させたくなかったからよ!優しいお姉さまででしょ?」
そういった姉の表情は何ともいえぬ、いやらしい笑いを浮かべた知らない女のようであった。
「ローガン様はね、私を囲うかわりに母さんの治療費を払ってくれるっていうのよ!それに・・・見て!私にもこんな豪華な宝石に、それに小さいけれどこの家も用意してくれたの!あんたにこんな真似ができる?できないでしょ!もう今となっては私はあくせくと働くことをしなくても、こんなに生活が潤っているのよ?!バカバカしくて、もう前のように働くなんてできないわ。」
「だから・・・伯爵の愛人になったのか?」
ハインツは静かに姉ペトラに問うた。ただ、どうして家族である自分に真っ先に相談してくれなかったことが、ハインツは悔しかったのだ。
「何よ!私だって、私だって楽をしたかったのよ!!あんたが小さい時からずっと!!ずっと私は働きずくめだったのよ!それに、病院で聞いたでしょ?母さんの治療は緊急を要したの!あんたに連絡をとって返事なんか待ってられなかったわよ!」
ハンイツは言い返すことはできなかった。実際ずっと頑張っていた姉を見ていたし、自分を育ててくれたのは、姉だったからだ。それに緊急性があったことも、確かに自分の返事など待っている状況ではなかったことは、容易に想像できた。
「姉さん、姉さんは今は幸せなの?」
ハインツは真剣な顔をして、ペトラに聞いた。
「?!」
「僕は姉さんが今まで頑張ってきたのは知っている。だから・・・姉さんが今が幸せだって言うんなら、僕はそれでいいよ。」
これは、ハインツの本音だった。愛人という立場でも、姉が幸せだと思うならそれでもいいと。
「・・・・幸せよ。あの頃よりずっとね。お金があるって素敵ね。見てわからないの?」
ペトラはそう言いながら、自身の身に付けている、宝石に目をやりうっとりとしていた。
「・・・わかったよ。もう何も言わない。姉さん」
「ま、とにかく母さんのことは心配しなくてもいいわ。それぐらいはちゃんとするから安心して。夢見が悪くなるようなことは私もいやだからね。」
ペトラはやれやれと仕方ないといった感じで溜息まじりに伝えた。
実際、今ハンイツは学校に通っている身で、王都から離れている母親の病院に通うことは現時点ではかなり難しかった。できるとすれば学校を辞めなければ無理だということも、ハインツはわかっていた。しかしそれならそれで、学校をやめて、働いてもいいと思っていたのだ。
「ま、何かあったらちゃんと手紙は書くから。わかったらさっさと帰ってくれない?あんたを見ていると、貧乏だったことが思い出されて嫌になるのよ!」
ペトラは見下すような視線でハインツを見ていた。
「わかった。何かあれば連絡してくれ・・・」
「はいはい、わかったわ。」
こうしてハンイツは姉ペトラの変貌ぶりに失意して、ペトラの元を去っていった。
(姉さんが、あんな金の亡者になり果てるなんて・・・僕が甲斐性がないばっかりに!!絶対に、騎士になって昔の姉さんを取り戻す!!)
ハインツは今通っている騎士学校を必ず上位の成績で維持して、竜騎士を目指すと改めて決意した。
ハンイツが帰る様子を館の2階の窓から、ペトラはできるだけ見えないように盗み見ていた。その眼差しは以前の、弟を慈しむ優しいモノであった。
「ハインツ、ごめんね。貴方はきっとこうでも言わないと、きっと自分を責めるもの。私のことは気にせずに、どうか騎士になれるように頑張って・・・」
ペトラの悪態はハンイツに自分を見限ってもらうための芝居だった。こうでも言わないときっとハンイツが後悔するであろうとわかっていたからだ。
ペトラはわざと、悪女を演じていた。そして実際愛人にならないとお金を支援してもらえないのは、本当だった。母親の容体が悪化したため、緊急に治癒士に診てもらわないと、危ない状況だったのだ。だが、治癒士に見てもらうには、結構な費用がかかる。持ち合わせがなかったペトラは、前から声がかかっていた、貴族のローガン伯爵の話を受け入れることにしたのだ。要は自分を身売りしたのだ。だが、そのことを知れば弟であるハインツは騎士学校を中退して、自分が働くと言いかねないことを、ペトラはよくわかっていたのだ。だから悪態を付くことで、自分を見限ってもらおうと、ハインツが後悔しないようにと、わざと嫌な女を演じたのだ。
「ハインツ、貴方ならきっと立派な騎士に、もし本当に叶うなら竜騎士になれますようにお祈りしてるから・・・」
ペトラの目からは一筋の涙が零れていった。
だが、ハインツはこの時、姉の思いは知る由はなかった。
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