【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

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144:ハインツの前世~⑧~

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 ハインツは姉の件から、貴族の事が一段と嫌いになっていた。もともと学校でも貴族の割合が多い中、平民の自分を見下す輩も少なからずいたからだ。そしてハインツは成績が良かったことから、貴族からのやっかみと反感を余計に買っていたのだ。

 「平民のくせに生意気だ!」
 「本当に実力なのか?何かズルでもしたんじゃないのか?」

 など、いわれのない言葉を投げ付けられることも、ほぼ毎日のことだった。だが皮肉なことに、それらはハインツの原動力になっていた。罵倒されればされるほど、ハインツの闘志に火がついていたのだ。ただ本人はあからさまにそういったことを面に出すタイプではなかったので、表面上は静かあったが。

だがそんな最中少しだけ変化があった。

 いつものように、ハインツに悪態をつく輩がいたのだが、たまたま通りかかったセレスティアがその現場に居合わせたのだ。

 ルーカス・ヘルモントとその取り巻きが、ハインツと一緒にいたテオを罵倒していた。

 「あーあ!ほんっと身の程をわきまえない奴は嫌だよなぁ!」
 「ったく、まともの学費を払えない奴が俺らと一緒の騎士学校とはね!ったく上の奴らも何考えてだが!学校の品位が損なわれるっていうのにな!」

 平民のハインツのように奨学金の制度で学費が免除される者もいるが、それらは当然少数だ。大抵は学費を払うのだが、決して安価ではないことから、ほとんどが貴族であり、平民で払えるのは金持ちの子息であることが通例であった。だが、ハインツは正統な手続きの上で学校に通っているので、ルーカスたちの言うことは只のいちゃもんなのだ。
 セレスティアは立ち止まり無表情で、

 「ルーカス恥ずかしくないの?」

 まさか、セレスティアから声が掛かるなど思っていなかった、ルーカスはあからさまに動揺していた。
 
 「な、何だと?」

 「だから、そんな身のない嫌味を言って恥ずかしくないのか?ってことよ。」
 
 セレスティアは表情を変えることなく言い放った。

 「セ、セレスティアには関係ないだろ!」

 ルーカスは自分がよくないことをしている自覚はあったので、言い返す言葉が見つからなかったのだ。 

 「確かにそうね。ただ少なくともこんなところで、くだらないやっかみで絡んでいる暇があるのなら少しでも鍛錬でもすればいいのに、と思うわね。見ていて気持ちのいいものでもないから。」

 「!!お、女のくせに生意気な!」

 ルーカスは言われて図星であったが、それを認めたくなかったので、今度はセレスティアに、誹謗し始めたが、セレスティアはめんどくさいとばかりに、

 「そこまで言うなら、実力行使でもいいのよ?あとで恥をかかなきゃいいけどね。」

 実際セレスティアは実務でも筆記でも上位5に入るほど優秀だった。女性ならではの身軽さや素早さを武器に、力は男性に及ばなくても避けることや先制攻撃で、相手から遅れをとったことはほとんどない。上位5位内といっても、それは拮抗している序列であった。その実力はほとんどの者には熟知されていたので、ルーカスやその取り巻きも知らないわけではなかった。

 「くっ!」
 「お、おい、不味いんじゃないか?」
 「お、おい行こうぜ。」

 分が悪くなったルーカスとその取り巻き達は早々にその場から逃げ出した。

 「あ、ありがとう。」
 「面倒だったから助かったよ。」

 ハインツとテオは驚きながらも、セレスティアにお礼を言った。

 「いえ、こちらこそ差し出がましい真似をしてしまったわ。だけどああいう輩には私もいい加減文句を言いたくなったからね。」

 「貴族にも君みたいな人がいるんだな・・・」

  ハインツがポロっと言った言葉に、セレスティアは少し驚いた顔をして、

 「?騎士を目指すのに、平民も貴族も関係ないと思うけど?」

 セレスティアは本当に不思議そうな顔をしていた。

 「!」

 「じゃ、お互いに頑張りましょうね。」

 そう言うと、セレスティアは颯爽とその場を離れた。そんなセレスティアの後姿を見て、ハインツは思ったのだ。(そうだよな・・・貴族だからって全員がそんなんじゃない。なんでこんな簡単なことを見失っていたのか・・・)貴族を一括りに嫌うのはやめようと考えを改めたのだった。


 そんな自身のことをハインツは思い返していたのだが・・・
 (とと、今は僕の前世である、イベルナを見ているんだった。)

 イベルナの政略結婚の話で姉のことが重なって、昔のことを思い出していたハインツであったが、今は自身の前世であるというイベルナの生涯を掻い摘んで見ているのである。

 今のところ、魔王になる気配はない・・・この後に一体何があったんだ?

 ハインツは、ここまで見てきたが、イベルナが自身の前世のようではあるが、いまだピンと来るものを感じることはなかった。

 (本当に、僕の前世なのか?)むしろハインツは疑わしいばかりであったが、この後の展開で、あの女が言っていたことが嘘ではなかったのだと、認識することとなった。
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