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第四話 運命の出会い 4
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「私の祖国ではコリーナ丘陵で夕日を見たふたりは永遠に結ばれるというジンクスがあるのです。噂が噂を呼び、丘は別名恋人たちの丘と呼ばれるようになって、観光地として有名になってしまい、次々と訪れる人々が後を絶たないのです。素敵だと思いませんかリヴェラ様。いつか一緒に行きましょう。案内しますわ」
嬉々として伝えると、「必要ないでしょう」と、リヴェラはそっけなく呟く。
自分たちはいずれ結婚するのだからという意味だからだろうか。
神頼み、他力本願と云われようがこういうロマンチックなイベントごとが好きなので、否定されると傷付くものだ。リヴェラはこのテのことには興味がないのだ。
残念に思いつつ、気を取り直すことにする。
「楽しかったです。いろいろありましたね、今日は」
夕日に照らされるリヴェラの横顔を見ながら今日会った出来事を反芻する。
「城の中を案内していただき、リヴェラ様といっしょに川を渡って、見つけた落とし穴で綺麗な景色が見れて、グリフォンの背に乗ったこと。とても充実した一日でした。あいにくリヴェラ様にご案内していただく予定だった花畑には行けませんでしたが、またのご機会に必ず行きましょう」
シファが感慨に浸りながら伝えると、リヴェラは俯き、驚くような一言を発する。
「今日一日一緒にいて思ったのだが、どうやらあなたとは合わないらしい。この話はなかったことにしていただきたい」
突然切り出された宣告に、えっ、と動揺を隠せない。
「なぜですか、なぜ急にそのようなことを。今日一日、だいぶ仲良くなれたと思っていたのに。それはこちらの勝手な思い込みなのでしょうか!?何が悪かったのでしょう。理由を、理由をお聞かせ願えませんか!?」
シファの懇願にリヴェラは眉間の皺を深くさせた。
「見たところ、あなたは俺より十歳ぐらい年上だし、それに俺よりも十センチ以上背が高いのも許せない!」
コンプレックスなのかなぁ。気にする必要ないのにな。ま、平均程度だろう。そんなに背が低いわけじゃないと思うけどなぁ。
シファは声に出さずに思った。
「あまり年上だと子がたくさんもうけられない。世継ぎは最低十人ほしい。俺は一人っ子で寂しい思いもしたし、ひとりしかいないせいで重責がひどかった。たくさんいていいに越したことはない」
十人……と呟き、「へぇ、それは嬉しいなぁ」そう云ってシファはニヤリとした。
美しい顔が奇妙に歪んだ。
ぞっとした。とても他人に見せてもいいような表情ではなかった。
一瞬見間違いではないのだろうかと思うほどのものだったが、シファはさっとすぐに戻した。
「兄弟は多い方がにぎやかでいいですもの。私にも妹が四人いますし、楽しいものですよ」
ふふっと、思い出しながら笑うと、リヴェラがわなわなと震える。
「あんたとは子どもを作る気がない。_________それに、そもそもあんた、男だろ……!」
「あ、バレてたか」
元々中性的な容姿だから、なんとかいけると思ったんだけどなー。
思いながらガシガシ頭を掻く。
白粉と自身の唇の色を生かした桜色のリップを塗っているだけで、大した化粧はしていないのに、誰にも気付かれなかった。
「さっき神官って云っていたけど、神官って男だろ。女の場合は巫女だろ」
そうだった。ついうっかり云ってしまっていた。
神官は男子しかなれないのだった。ついでに男子の巫女は覡(げき)や巫(かんなぎ)と呼ばれている。
「どうしてもダメですか」
ああ、とリヴェラは頷き、そっぽを向く。
「どうしても女子でないと嫌だ。譲れない条件だ」
困りましたね。と、シファは声のトーンを落とす。
「私はあなた様の妃になるためにはるばるアズカヴァルに参りました。もしかしたら二度とリゼルハイドの地を踏むことはかなわないことになるかもしれない。この地に骨を埋める覚悟でおりましたのに。そんな無下なこと仰るなんて、あんまりです。どうか考え直していただけないでしょうか」
「いやだ、俺は女がいいんだ。お前の事情は知らないし、しおらしくしていても騙されないからな」
「女子であろうと男子であろうと人を想う気持ちは同じではないでしょうか。この気持ち、分かっていただけないのでしょうか」
「気持ちは同じかもしれんが、身体のつくりがまるっきり違うだろう。あれやこれが、な。まぁ、最初から縁がなかったということだ。諦めろ」
そんな……とシファは残念がる。
「お慕いしております。あなたじゃないとダメなんです。死ぬほど好きです。好きで好きで堪らないほど好きです」
「じゃあ、死ねばいいだろう」
「それは無理ですけど」
「じゃあ云うなよ、軽率に」
「それほど好きだということですよ。分かっていらっしゃらない。私、リヴェラ様の御心に沿えるように努力いたします。ご希望があれば何なりと申しつけ下さい」
「では、今すぐ引き下がって、リゼルハイドに帰ってくれ」
「えー、それは云っちゃいけない台詞ですよ。覚悟してここまで来たのに」
「何でも云う事を聞くと云っただろうが、今」
「ご希望に沿えるとはいいましたが、そういう意味ではございません。どうしてもダメですかー。こんなに頼んでいるのに」
「くどい!嫌だと云ったら嫌だ!」
「私にチャンスを下さい。絶対、リヴェラ様のことを好きにさせてみせますから!」
「しつこい!!」
ぐだぐだと云い合いにつきあって疲れてしまった。
しまいにはずっとここにいる。離れない。の一点張りでリゼルハイドには絶対に帰らないからと聞き分けのないことを云い出す始末。折れるつもりは毛頭ないらしい。
オレンジ色の夕日の差し込む空は多様なグラデーションに彩られていた。
赤みがかった強いオレンジ色に、黄色を含んだ淡いオレンジ色に移り変わり、やがて空の上層にはパープルが混じり、濃い色へと変化を遂げてゆく。
だが二人には時間の経過で変わりゆく色合いを楽しむ余裕はなく、あたりはすっかり薄暗くなっていった。
「私はどうしてもあなたのことが諦められそうにありません。こういう場合ってどうしたらいいんでしたっけ?」
小首を傾げながらシファは考え込む。
並の男ならこの美貌に陥落するだろうが、リヴェラの場合はそうはいかない。
「俺に訊くなよ……」
「そうだ!よく恋愛小説ではひとりの女性を巡って二人の男が決闘してどちらか勝った方が女性を獲得できるという展開がありました。いいと思いませんか」
これは遠回しに云うと、闘って決めろ。ということを突きつけている。
困り果てたリヴェラはシファの提案に乗る。
「__________仕方がない。では決闘しよう魔法で。あんたが勝てば云うとおりにしてやるし、俺が勝てばこの話はなかったことにして、負けたら潔く諦めろ」
「はい、勝てばいいわけですね」
「ああ、勝負がついた後でゴチャゴチャ云うなよ」
「勝てば、わたしのものになってください」
生々しい云い方が大変不快だが、リヴェラは苦々しい顔で「わかった」と答える。
勝てば妃になれるということだ。晴れ晴れしい顔でシファは応じる。
「手加減は無用です」
「望むところだ」
嬉々として伝えると、「必要ないでしょう」と、リヴェラはそっけなく呟く。
自分たちはいずれ結婚するのだからという意味だからだろうか。
神頼み、他力本願と云われようがこういうロマンチックなイベントごとが好きなので、否定されると傷付くものだ。リヴェラはこのテのことには興味がないのだ。
残念に思いつつ、気を取り直すことにする。
「楽しかったです。いろいろありましたね、今日は」
夕日に照らされるリヴェラの横顔を見ながら今日会った出来事を反芻する。
「城の中を案内していただき、リヴェラ様といっしょに川を渡って、見つけた落とし穴で綺麗な景色が見れて、グリフォンの背に乗ったこと。とても充実した一日でした。あいにくリヴェラ様にご案内していただく予定だった花畑には行けませんでしたが、またのご機会に必ず行きましょう」
シファが感慨に浸りながら伝えると、リヴェラは俯き、驚くような一言を発する。
「今日一日一緒にいて思ったのだが、どうやらあなたとは合わないらしい。この話はなかったことにしていただきたい」
突然切り出された宣告に、えっ、と動揺を隠せない。
「なぜですか、なぜ急にそのようなことを。今日一日、だいぶ仲良くなれたと思っていたのに。それはこちらの勝手な思い込みなのでしょうか!?何が悪かったのでしょう。理由を、理由をお聞かせ願えませんか!?」
シファの懇願にリヴェラは眉間の皺を深くさせた。
「見たところ、あなたは俺より十歳ぐらい年上だし、それに俺よりも十センチ以上背が高いのも許せない!」
コンプレックスなのかなぁ。気にする必要ないのにな。ま、平均程度だろう。そんなに背が低いわけじゃないと思うけどなぁ。
シファは声に出さずに思った。
「あまり年上だと子がたくさんもうけられない。世継ぎは最低十人ほしい。俺は一人っ子で寂しい思いもしたし、ひとりしかいないせいで重責がひどかった。たくさんいていいに越したことはない」
十人……と呟き、「へぇ、それは嬉しいなぁ」そう云ってシファはニヤリとした。
美しい顔が奇妙に歪んだ。
ぞっとした。とても他人に見せてもいいような表情ではなかった。
一瞬見間違いではないのだろうかと思うほどのものだったが、シファはさっとすぐに戻した。
「兄弟は多い方がにぎやかでいいですもの。私にも妹が四人いますし、楽しいものですよ」
ふふっと、思い出しながら笑うと、リヴェラがわなわなと震える。
「あんたとは子どもを作る気がない。_________それに、そもそもあんた、男だろ……!」
「あ、バレてたか」
元々中性的な容姿だから、なんとかいけると思ったんだけどなー。
思いながらガシガシ頭を掻く。
白粉と自身の唇の色を生かした桜色のリップを塗っているだけで、大した化粧はしていないのに、誰にも気付かれなかった。
「さっき神官って云っていたけど、神官って男だろ。女の場合は巫女だろ」
そうだった。ついうっかり云ってしまっていた。
神官は男子しかなれないのだった。ついでに男子の巫女は覡(げき)や巫(かんなぎ)と呼ばれている。
「どうしてもダメですか」
ああ、とリヴェラは頷き、そっぽを向く。
「どうしても女子でないと嫌だ。譲れない条件だ」
困りましたね。と、シファは声のトーンを落とす。
「私はあなた様の妃になるためにはるばるアズカヴァルに参りました。もしかしたら二度とリゼルハイドの地を踏むことはかなわないことになるかもしれない。この地に骨を埋める覚悟でおりましたのに。そんな無下なこと仰るなんて、あんまりです。どうか考え直していただけないでしょうか」
「いやだ、俺は女がいいんだ。お前の事情は知らないし、しおらしくしていても騙されないからな」
「女子であろうと男子であろうと人を想う気持ちは同じではないでしょうか。この気持ち、分かっていただけないのでしょうか」
「気持ちは同じかもしれんが、身体のつくりがまるっきり違うだろう。あれやこれが、な。まぁ、最初から縁がなかったということだ。諦めろ」
そんな……とシファは残念がる。
「お慕いしております。あなたじゃないとダメなんです。死ぬほど好きです。好きで好きで堪らないほど好きです」
「じゃあ、死ねばいいだろう」
「それは無理ですけど」
「じゃあ云うなよ、軽率に」
「それほど好きだということですよ。分かっていらっしゃらない。私、リヴェラ様の御心に沿えるように努力いたします。ご希望があれば何なりと申しつけ下さい」
「では、今すぐ引き下がって、リゼルハイドに帰ってくれ」
「えー、それは云っちゃいけない台詞ですよ。覚悟してここまで来たのに」
「何でも云う事を聞くと云っただろうが、今」
「ご希望に沿えるとはいいましたが、そういう意味ではございません。どうしてもダメですかー。こんなに頼んでいるのに」
「くどい!嫌だと云ったら嫌だ!」
「私にチャンスを下さい。絶対、リヴェラ様のことを好きにさせてみせますから!」
「しつこい!!」
ぐだぐだと云い合いにつきあって疲れてしまった。
しまいにはずっとここにいる。離れない。の一点張りでリゼルハイドには絶対に帰らないからと聞き分けのないことを云い出す始末。折れるつもりは毛頭ないらしい。
オレンジ色の夕日の差し込む空は多様なグラデーションに彩られていた。
赤みがかった強いオレンジ色に、黄色を含んだ淡いオレンジ色に移り変わり、やがて空の上層にはパープルが混じり、濃い色へと変化を遂げてゆく。
だが二人には時間の経過で変わりゆく色合いを楽しむ余裕はなく、あたりはすっかり薄暗くなっていった。
「私はどうしてもあなたのことが諦められそうにありません。こういう場合ってどうしたらいいんでしたっけ?」
小首を傾げながらシファは考え込む。
並の男ならこの美貌に陥落するだろうが、リヴェラの場合はそうはいかない。
「俺に訊くなよ……」
「そうだ!よく恋愛小説ではひとりの女性を巡って二人の男が決闘してどちらか勝った方が女性を獲得できるという展開がありました。いいと思いませんか」
これは遠回しに云うと、闘って決めろ。ということを突きつけている。
困り果てたリヴェラはシファの提案に乗る。
「__________仕方がない。では決闘しよう魔法で。あんたが勝てば云うとおりにしてやるし、俺が勝てばこの話はなかったことにして、負けたら潔く諦めろ」
「はい、勝てばいいわけですね」
「ああ、勝負がついた後でゴチャゴチャ云うなよ」
「勝てば、わたしのものになってください」
生々しい云い方が大変不快だが、リヴェラは苦々しい顔で「わかった」と答える。
勝てば妃になれるということだ。晴れ晴れしい顔でシファは応じる。
「手加減は無用です」
「望むところだ」
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