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10 復讐だった ランドルフ視点
しおりを挟むドッドッと心臓が飛び出してきそうなくらいに鳴っている。苦しい。吐き出してしまいたいほどに苦しい。
「兄さんへの復讐だよ」
弟は何の感情も映さずにそう言った。
「アガトンお前……!」
俺の中に色んな感情が湧き上がり、最後には大きな怒りとなった。
弟の胸ぐらを掴んだが、酔った体では力が入らずに弟の細腕でも簡単に腕を外されてしまった。
歪んだ表情で俺を責め立てる。
「全部兄さんのせいだよ。こんなことになったのは全部……!」
ドン! と体を押されて床に倒れ込んだ。体の内側が酒と胃液とで混ざり合ったみたいになって気分は最悪だった。
◇◇◇
ある日、弟の部屋を訪れると、アガトンと同じ年くらいの執事見習いと2人、ベッドの上で裸でいるのを目の当たりにした。
衝撃的なシーンだった。
今でもその光景は目に焼き付いて離れない。
「何をしている?!」
「に、兄さん……!」
「ら、ランドルフ様」
真っ青になる見習い。アガトンはさっと腕で体を隠したが、隠せるはずもない。すぐにそばにあったシーツをアガトンは手繰り寄せた。
それでも何をしていたかは明白だった。
拳を握り込み、ギリギリと奥歯を噛み締めた。
俺の怒りを感じ取ったのか、2人はベッドの上でひっ、と声を漏らして固まったまま動けなくなっていた。
それすらも俺の神経を逆撫でた。
「さっさと服を着ろ」
俺の静かな怒りの声に即座に反応し、2人は脱ぎ捨てられていた服を急いで着はじめた。焦りすぎて、ボタンをかけ違えていたが、執事見習いの方はそのまま部屋飛び出るように出て行った。
アガトンは震える手で衣服を着ることができず、まだ半裸のままだ。
――なぜこんな情けない男が俺の弟なんだ。なぜこいつが正当な後継者なんだ。どうして。俺はどれだけ努力しても父親にも認められなかったのに。どうしてどうしてどうして。
2人が何をしていたかなど想像もしたくないほどにおぞましい。男同士で抱き合い、ベッドをともにするなど、なんということをしてくれたのか。神に背く冒涜だ。どうしてこんなことをする? ただ、普通にしていればお前は全てを手に入れられるのに、なぜこんな罪深いことをやってのけるのだろう。
不思議で仕方ない。情けなくてどうしようもない。理解に及ばない。負の感情が一気に押し寄せて、アガトン1人へ向かう。
「アガトン、お前は一体何をしているんだ? プロミネンス伯爵家を継ぐ正当な後継者はお前なんだぞ?」
「兄さん、僕には伯爵家を継ぐなんて無理だよ。男の人しか愛せないんだ」
情けない声でそう訴える。
弟はゲイだった。
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