傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う

ノルジャン

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16戦争

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 毎日が過ぎていく。

 自分でも気づかないうちに彼の姿を探して窓の外を見つめていた。

 もう来ない彼を毎日待っていた。

 彼が来ないことを望んだのは自分のはずなのに、どうしてこんなにも切なくなるのだろう。彼が恋しくて泣きたくなるのだろう。私はどうしたかったのか。どうしたらよかったのか。

 全てを話してランドルフと3人で暮らせると期待してしまったのだろうか。
 だからこんなにも心に彼が残っている。
 
 でもこれでいいんだ。そう自分に思い込ませようとした。

 もう彼を忘れて前に進みたい。

 

 私はケビンの寝室へと足を踏み入れた。

「ケビン、抱きしめてほしいの」

 暗くなった寝室のベッドで小さなライトをたよりにケビンが新聞を読んでいる。見出しにはでかでかと「開戦」の文字が印字されていた。最近情勢があやしく、近々戦争が起こるのだ。

「抱きしめてって……どうしたんだジュリア?」

 うろたえながらもケビンがベッドの端によって私の入るスペースを作ってくれた。
 
「なにかあったのか?」

 心配そうに、彼は隣に座った私の顔を覗き込む。彼の温かな手が頬に触れる。じんわりと温かくて、ぽかぽかとあたたまってくるようだ。

 こんな優しい手を、私は利用しようとしている。

「お願い、抱いて」

 彼に自分から抱きついた。強く抱き返して欲しいのに、彼は私をなにか力を入れたら壊れてしまう花のように優しく両腕で包み込んだ。

「本当にいいのかい?」

 彼のいつもとは違う熱の入った声色で、私の耳元で囁いた。

「ええ」

「後悔しない?」

「しないわ」

 強く抱きついているから互いの表情を確認することはできない。

 彼が私の腕を解きほぐして、顔を近づけてきた。ぎゅっと目を瞑ってその時を待った。

 けれどなかなか彼の唇は来ない。

 なぜ? ケビンたらどうしちゃったの、と私がやっと目を開けると、ぎゅっと鼻をつままれて変な声が出た。

「んぐっ!」

「強がるからこんなことになるんだ」

「つ、強がってなんかないわよ!」

 つままれた鼻を手で庇いながら鼻声で答えた。さっきまでのあやしい雰囲気は完全に消し飛んでしまった。

「僕の前では無理をしないでくれ」

「……してない」

「約束して。もうこんなことはしないって」

「無理なんてしてないのに」

「ジュリア」

 生徒と先生だった頃のように、聞き分けのない子に言い聞かせるみたいな口調だ。
 ため息を吐いて観念した。
 
「わかったわ」

「よし、いい子だ」

「もうっ、子ども扱いしないでよ」

 まだ私のことを生徒だと思っているのかしら。不機嫌さを曝け出して顔を背けた。

「子どもだなんて思ってたらこんなことしないよ」
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