12 / 23
追われる者たちと、風の剣士②
しおりを挟む
「――それにしても、本当に巻き込まれるのが得意ね、あんた」
焚き火の灯りの中、サラがハルトをじっと見つめながら言った。
夜の野営地。ブレイニアの町を出た彼らは、街道脇の林に小さなキャンプを設けていた。レンは木にもたれてうたた寝をしており、ミルは薪の上で丸くなっている。
「まあ、好きでやってるわけじゃないけどな。気がつけば“困ってる奴を放っておけない病”になってたらしい」
「……バカみたい」
そう言いつつも、サラの口元はわずかに笑っていた。
リアナが湯を注いだスープを差し出す。
「サラ、薬……守りたかったんだよね。孤児院の子たちのこと、話してくれる?」
しばしの沈黙の後、サラはぽつぽつと語り始めた。
ブレイニアの外れにある古い孤児院。町の人々からも見放されたその場所では、数人の子供たちが細々と暮らしていた。領主は金にならないという理由で薬の供給を止め、反抗する者には見せしめを与える。
「でも、あたし……あいつらの泣き顔を、見たくなかった。だから盗んだの。そしたら“反逆者”だってさ」
彼女の声には怒りと悔しさ、そして強い決意が混ざっていた。
「それで追われてたのか……なるほどな」
「盗賊は信用できない? って顔してるけど、そう思うなら別に――」
「思ってないよ」
ハルトは笑う。
「俺も似たようなもんさ。“役立たず”って追い出されたのに、運だけで生き延びてる。気がついたら仲間が増えてた」
サラは驚いたように瞬きをして、それからぽつりと呟いた。
「……変な人」
「よく言われる」
焚き火のパチパチという音だけが、しばし夜の静寂を彩った。
そこへ、レンが目を覚ます。
「……風が変わった。妙な気配がある。北から、だ」
「追手か?」
「いや、もっと……禍々しいものだ。生き物の気配じゃない。闇のような、影のような」
レンの言葉に、ミルの毛が逆立つ。
「感じる。あの時の“影喰い”と、同じ匂い」
一同の空気が引き締まる。
「まだ姿は見えないけど、確実にこっちに向かってきてる。しかも、こっちは増えてる可能性がある」
ハルトは立ち上がり、剣の柄に手を添える。
「……旅の終わりが近いのか、それとも新しい始まりか」
彼の脳裏に浮かぶのは、王都での戦い。そしてその先に待つ、“何か”の存在。
《スキル【幸運の加護・改】の進化条件:仲間との絆・累積中……》
ふと、胸元が仄かに光る。まるで仲間との信頼が、力に変わっていくように。
「明日には、王都に入る道を選ぼう。だけど、その前にやるべきことがある」
「……孤児院の薬、届けに行くの?」
サラが小さく問う。ハルトは頷いた。
「もちろん。やりたいことがあるなら、まずは自分の手で終わらせようぜ。それが“仲間”ってもんだろ?」
サラは目を伏せて、そしてそっと微笑んだ。
「……ありがとう。ハルト」
月が森の上空に昇っていた。風は静かに木々を揺らし、確かに“何か”が近づいていることを告げていた。
だが今の彼らには、信じるものがある。
絆。信頼。そして――
「よし、明日が勝負だ」
ハルトの声に、レンとリアナ、サラ、ミルが頷いた。
その夜、誰よりも早く、星空に向けて《幸運》が微かに輝いた。
---
焚き火の灯りの中、サラがハルトをじっと見つめながら言った。
夜の野営地。ブレイニアの町を出た彼らは、街道脇の林に小さなキャンプを設けていた。レンは木にもたれてうたた寝をしており、ミルは薪の上で丸くなっている。
「まあ、好きでやってるわけじゃないけどな。気がつけば“困ってる奴を放っておけない病”になってたらしい」
「……バカみたい」
そう言いつつも、サラの口元はわずかに笑っていた。
リアナが湯を注いだスープを差し出す。
「サラ、薬……守りたかったんだよね。孤児院の子たちのこと、話してくれる?」
しばしの沈黙の後、サラはぽつぽつと語り始めた。
ブレイニアの外れにある古い孤児院。町の人々からも見放されたその場所では、数人の子供たちが細々と暮らしていた。領主は金にならないという理由で薬の供給を止め、反抗する者には見せしめを与える。
「でも、あたし……あいつらの泣き顔を、見たくなかった。だから盗んだの。そしたら“反逆者”だってさ」
彼女の声には怒りと悔しさ、そして強い決意が混ざっていた。
「それで追われてたのか……なるほどな」
「盗賊は信用できない? って顔してるけど、そう思うなら別に――」
「思ってないよ」
ハルトは笑う。
「俺も似たようなもんさ。“役立たず”って追い出されたのに、運だけで生き延びてる。気がついたら仲間が増えてた」
サラは驚いたように瞬きをして、それからぽつりと呟いた。
「……変な人」
「よく言われる」
焚き火のパチパチという音だけが、しばし夜の静寂を彩った。
そこへ、レンが目を覚ます。
「……風が変わった。妙な気配がある。北から、だ」
「追手か?」
「いや、もっと……禍々しいものだ。生き物の気配じゃない。闇のような、影のような」
レンの言葉に、ミルの毛が逆立つ。
「感じる。あの時の“影喰い”と、同じ匂い」
一同の空気が引き締まる。
「まだ姿は見えないけど、確実にこっちに向かってきてる。しかも、こっちは増えてる可能性がある」
ハルトは立ち上がり、剣の柄に手を添える。
「……旅の終わりが近いのか、それとも新しい始まりか」
彼の脳裏に浮かぶのは、王都での戦い。そしてその先に待つ、“何か”の存在。
《スキル【幸運の加護・改】の進化条件:仲間との絆・累積中……》
ふと、胸元が仄かに光る。まるで仲間との信頼が、力に変わっていくように。
「明日には、王都に入る道を選ぼう。だけど、その前にやるべきことがある」
「……孤児院の薬、届けに行くの?」
サラが小さく問う。ハルトは頷いた。
「もちろん。やりたいことがあるなら、まずは自分の手で終わらせようぜ。それが“仲間”ってもんだろ?」
サラは目を伏せて、そしてそっと微笑んだ。
「……ありがとう。ハルト」
月が森の上空に昇っていた。風は静かに木々を揺らし、確かに“何か”が近づいていることを告げていた。
だが今の彼らには、信じるものがある。
絆。信頼。そして――
「よし、明日が勝負だ」
ハルトの声に、レンとリアナ、サラ、ミルが頷いた。
その夜、誰よりも早く、星空に向けて《幸運》が微かに輝いた。
---
97
あなたにおすすめの小説
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる