「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ

文字の大きさ
13 / 23

追われる者たちと、風の剣士③

しおりを挟む
朝靄の中、ハルトたちはブレイニアの北にある山裾の村――サラの育った孤児院へと足を運んでいた。

道中は静かだった。だがその静けさが、かえって不安を煽る。

「……ここだよ。あの奥の建物」

サラが指さしたのは、崩れかけた石塀の向こうにある、古びた一軒家だった。木造の屋根は一部が抜け、庭には雑草が生い茂っている。

けれど、確かに子どもたちの笑い声が、風の中に紛れて聞こえた。

「お姉ちゃーん!」

「サラお姉ちゃんが帰ってきたー!」

小さな子どもたちが駆け寄ってきて、サラに抱きついた。彼女の顔が、驚きと安心で綻ぶ。

「みんな……無事でよかった」

「薬、持ってきたんでしょ?」

「うん、たっぷり。もう我慢しなくていい」

リアナがそっと包を差し出し、サラが頷いて受け取る。

「ありがとう、ハルト、リアナ……それに、レンも」

「礼は不要だ。俺はただ、風の向くままに」

レンは肩をすくめ、木陰に寄りかかる。

「ふふっ……やっぱり、変な仲間ばっか」

子どもたちに薬を配り、簡単な手当を終えたころ、サラがふと立ち上がった。

「もう……ここには戻れないって思ってた。ずっと一人で、戦っていくんだって。でも今は、ちょっとだけ違う」

その目は、確かに前を向いていた。

「もう一度、ちゃんと向き合うよ。あたしの居場所、仲間、そして――戦う理由に」

そのとき、ミルが耳をぴくりと動かした。

「来るにゃ。悪い気配、さっきの夜の“影”と同じにゃ」

空がわずかに陰り、木々がざわめき始める。

「……まさか、ここまで追ってきたのか?」

ハルトが剣を抜き、レンも静かに立ち上がる。

影のような霧が、森の奥から這い寄ってきた。そして、その中から姿を現したのは、黒衣に身を包んだ人影――いや、もはや“人”とは呼べない何かだった。

「“影従者(シャドウ・サーヴァント)”……!」

リアナが顔を強張らせる。

「王都の地下に封じられたはずの……なぜここに!」

「たぶん、俺たちが狙いだ。特に……リアナ、君が」

ハルトが言いかけた瞬間、黒き影が一斉に飛びかかってきた。

「下がれ、子どもたちを守れ!」

ハルトが前へ、レンが横に展開する。

サラは素早くナイフを構え、影の間を縫うように駆け抜けた。

「……こいつら、殺気だけで動いてる。意思がないのに、執念がある……!」

剣を振るうたび、黒い靄が舞い、地面を黒く焦がす。

ハルトのスキルが光り――

《スキル【幸運の加護・改】が発動》 《対象:サラ、レン、リアナ》

彼らの動きが一瞬、軽くなった。攻撃がすれすれで避けられ、隙が生まれる。

「やっぱり、“絆”が力になるってことか……!」

戦いは激しさを増すが、連携が徐々に形を作っていく。

「いけっ!」

リアナの光魔法、レンの風刃、サラの急所突き――そしてハルトの剣が、最後の影を貫いた。

霧が晴れ、静けさが戻る。

「ふぅ……終わったか?」

「一時的には、ね。でもこれはきっと、始まりに過ぎないわ」

リアナが呟いた。

その手には、黒い痕跡が残された破片。魔力が歪んでおり、明らかに“禁術”の類だった。

「王都で何かが動いている。これはその前兆……間違いない」

「よし、だったら乗り込むだけだろ」

ハルトの声に、皆が頷く。

旅はもう、ただの道のりではない。

――運命を変える戦いが、いよいよ王都で始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

貧乏貴族の俺が貴族学園随一の麗しき公爵令嬢と偽装婚約したら、なぜか溺愛してくるようになった。

ななよ廻る
恋愛
貴族のみに門戸を開かれた王国きっての学園は、貧乏貴族の俺にとって居心地のいい場所ではなかった。 令息令嬢の社交場。 顔と身分のいい結婚相手を見つけるための場所というのが暗黙の了解とされており、勉強をしに来た俺は肩身が狭い。 それでも通い続けているのは、端的に言えば金のためだ。 王国一の学園卒業という箔を付けて、よりよい仕事に就く。 家族を支えるため、強いては妹に望まない結婚をさせないため、俺には嫌でも学園に通う理由があった。 ただ、どれだけ強い決意があっても、時には1人になりたくなる。 静かな場所を求めて広大な学園の敷地を歩いていたら、薔薇の庭園に辿り着く。 そこで銀髪碧眼の美しい令嬢と出会い、予想もしなかった提案をされる。 「それなら、私と“偽装婚約”をしないかい?」 互いの利益のため偽装婚約を受け入れたが、彼女が学園唯一の公爵令嬢であるユーリアナ・アルローズと知ったのは後になってからだ。 しかも、ユーリアナは偽装婚約という関係を思いの外楽しみ始めて―― 「ふふ、君は私の旦那様なのだから、もっと甘えてもいいんだよ?」 偽装婚約、だよな……? ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』『アルファポリス』に掲載しております※ ※ななよ廻る文庫(個人電子書籍出版)にて第1巻発売中!※

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...