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追われる者たちと、風の剣士③
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朝靄の中、ハルトたちはブレイニアの北にある山裾の村――サラの育った孤児院へと足を運んでいた。
道中は静かだった。だがその静けさが、かえって不安を煽る。
「……ここだよ。あの奥の建物」
サラが指さしたのは、崩れかけた石塀の向こうにある、古びた一軒家だった。木造の屋根は一部が抜け、庭には雑草が生い茂っている。
けれど、確かに子どもたちの笑い声が、風の中に紛れて聞こえた。
「お姉ちゃーん!」
「サラお姉ちゃんが帰ってきたー!」
小さな子どもたちが駆け寄ってきて、サラに抱きついた。彼女の顔が、驚きと安心で綻ぶ。
「みんな……無事でよかった」
「薬、持ってきたんでしょ?」
「うん、たっぷり。もう我慢しなくていい」
リアナがそっと包を差し出し、サラが頷いて受け取る。
「ありがとう、ハルト、リアナ……それに、レンも」
「礼は不要だ。俺はただ、風の向くままに」
レンは肩をすくめ、木陰に寄りかかる。
「ふふっ……やっぱり、変な仲間ばっか」
子どもたちに薬を配り、簡単な手当を終えたころ、サラがふと立ち上がった。
「もう……ここには戻れないって思ってた。ずっと一人で、戦っていくんだって。でも今は、ちょっとだけ違う」
その目は、確かに前を向いていた。
「もう一度、ちゃんと向き合うよ。あたしの居場所、仲間、そして――戦う理由に」
そのとき、ミルが耳をぴくりと動かした。
「来るにゃ。悪い気配、さっきの夜の“影”と同じにゃ」
空がわずかに陰り、木々がざわめき始める。
「……まさか、ここまで追ってきたのか?」
ハルトが剣を抜き、レンも静かに立ち上がる。
影のような霧が、森の奥から這い寄ってきた。そして、その中から姿を現したのは、黒衣に身を包んだ人影――いや、もはや“人”とは呼べない何かだった。
「“影従者(シャドウ・サーヴァント)”……!」
リアナが顔を強張らせる。
「王都の地下に封じられたはずの……なぜここに!」
「たぶん、俺たちが狙いだ。特に……リアナ、君が」
ハルトが言いかけた瞬間、黒き影が一斉に飛びかかってきた。
「下がれ、子どもたちを守れ!」
ハルトが前へ、レンが横に展開する。
サラは素早くナイフを構え、影の間を縫うように駆け抜けた。
「……こいつら、殺気だけで動いてる。意思がないのに、執念がある……!」
剣を振るうたび、黒い靄が舞い、地面を黒く焦がす。
ハルトのスキルが光り――
《スキル【幸運の加護・改】が発動》 《対象:サラ、レン、リアナ》
彼らの動きが一瞬、軽くなった。攻撃がすれすれで避けられ、隙が生まれる。
「やっぱり、“絆”が力になるってことか……!」
戦いは激しさを増すが、連携が徐々に形を作っていく。
「いけっ!」
リアナの光魔法、レンの風刃、サラの急所突き――そしてハルトの剣が、最後の影を貫いた。
霧が晴れ、静けさが戻る。
「ふぅ……終わったか?」
「一時的には、ね。でもこれはきっと、始まりに過ぎないわ」
リアナが呟いた。
その手には、黒い痕跡が残された破片。魔力が歪んでおり、明らかに“禁術”の類だった。
「王都で何かが動いている。これはその前兆……間違いない」
「よし、だったら乗り込むだけだろ」
ハルトの声に、皆が頷く。
旅はもう、ただの道のりではない。
――運命を変える戦いが、いよいよ王都で始まる。
道中は静かだった。だがその静けさが、かえって不安を煽る。
「……ここだよ。あの奥の建物」
サラが指さしたのは、崩れかけた石塀の向こうにある、古びた一軒家だった。木造の屋根は一部が抜け、庭には雑草が生い茂っている。
けれど、確かに子どもたちの笑い声が、風の中に紛れて聞こえた。
「お姉ちゃーん!」
「サラお姉ちゃんが帰ってきたー!」
小さな子どもたちが駆け寄ってきて、サラに抱きついた。彼女の顔が、驚きと安心で綻ぶ。
「みんな……無事でよかった」
「薬、持ってきたんでしょ?」
「うん、たっぷり。もう我慢しなくていい」
リアナがそっと包を差し出し、サラが頷いて受け取る。
「ありがとう、ハルト、リアナ……それに、レンも」
「礼は不要だ。俺はただ、風の向くままに」
レンは肩をすくめ、木陰に寄りかかる。
「ふふっ……やっぱり、変な仲間ばっか」
子どもたちに薬を配り、簡単な手当を終えたころ、サラがふと立ち上がった。
「もう……ここには戻れないって思ってた。ずっと一人で、戦っていくんだって。でも今は、ちょっとだけ違う」
その目は、確かに前を向いていた。
「もう一度、ちゃんと向き合うよ。あたしの居場所、仲間、そして――戦う理由に」
そのとき、ミルが耳をぴくりと動かした。
「来るにゃ。悪い気配、さっきの夜の“影”と同じにゃ」
空がわずかに陰り、木々がざわめき始める。
「……まさか、ここまで追ってきたのか?」
ハルトが剣を抜き、レンも静かに立ち上がる。
影のような霧が、森の奥から這い寄ってきた。そして、その中から姿を現したのは、黒衣に身を包んだ人影――いや、もはや“人”とは呼べない何かだった。
「“影従者(シャドウ・サーヴァント)”……!」
リアナが顔を強張らせる。
「王都の地下に封じられたはずの……なぜここに!」
「たぶん、俺たちが狙いだ。特に……リアナ、君が」
ハルトが言いかけた瞬間、黒き影が一斉に飛びかかってきた。
「下がれ、子どもたちを守れ!」
ハルトが前へ、レンが横に展開する。
サラは素早くナイフを構え、影の間を縫うように駆け抜けた。
「……こいつら、殺気だけで動いてる。意思がないのに、執念がある……!」
剣を振るうたび、黒い靄が舞い、地面を黒く焦がす。
ハルトのスキルが光り――
《スキル【幸運の加護・改】が発動》 《対象:サラ、レン、リアナ》
彼らの動きが一瞬、軽くなった。攻撃がすれすれで避けられ、隙が生まれる。
「やっぱり、“絆”が力になるってことか……!」
戦いは激しさを増すが、連携が徐々に形を作っていく。
「いけっ!」
リアナの光魔法、レンの風刃、サラの急所突き――そしてハルトの剣が、最後の影を貫いた。
霧が晴れ、静けさが戻る。
「ふぅ……終わったか?」
「一時的には、ね。でもこれはきっと、始まりに過ぎないわ」
リアナが呟いた。
その手には、黒い痕跡が残された破片。魔力が歪んでおり、明らかに“禁術”の類だった。
「王都で何かが動いている。これはその前兆……間違いない」
「よし、だったら乗り込むだけだろ」
ハルトの声に、皆が頷く。
旅はもう、ただの道のりではない。
――運命を変える戦いが、いよいよ王都で始まる。
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