「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ

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追われる者たちと、風の剣士②

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「――それにしても、本当に巻き込まれるのが得意ね、あんた」

焚き火の灯りの中、サラがハルトをじっと見つめながら言った。

夜の野営地。ブレイニアの町を出た彼らは、街道脇の林に小さなキャンプを設けていた。レンは木にもたれてうたた寝をしており、ミルは薪の上で丸くなっている。

「まあ、好きでやってるわけじゃないけどな。気がつけば“困ってる奴を放っておけない病”になってたらしい」

「……バカみたい」

そう言いつつも、サラの口元はわずかに笑っていた。

リアナが湯を注いだスープを差し出す。

「サラ、薬……守りたかったんだよね。孤児院の子たちのこと、話してくれる?」

しばしの沈黙の後、サラはぽつぽつと語り始めた。

ブレイニアの外れにある古い孤児院。町の人々からも見放されたその場所では、数人の子供たちが細々と暮らしていた。領主は金にならないという理由で薬の供給を止め、反抗する者には見せしめを与える。

「でも、あたし……あいつらの泣き顔を、見たくなかった。だから盗んだの。そしたら“反逆者”だってさ」

彼女の声には怒りと悔しさ、そして強い決意が混ざっていた。

「それで追われてたのか……なるほどな」

「盗賊は信用できない? って顔してるけど、そう思うなら別に――」

「思ってないよ」

ハルトは笑う。

「俺も似たようなもんさ。“役立たず”って追い出されたのに、運だけで生き延びてる。気がついたら仲間が増えてた」

サラは驚いたように瞬きをして、それからぽつりと呟いた。

「……変な人」

「よく言われる」

焚き火のパチパチという音だけが、しばし夜の静寂を彩った。

そこへ、レンが目を覚ます。

「……風が変わった。妙な気配がある。北から、だ」

「追手か?」

「いや、もっと……禍々しいものだ。生き物の気配じゃない。闇のような、影のような」

レンの言葉に、ミルの毛が逆立つ。

「感じる。あの時の“影喰い”と、同じ匂い」

一同の空気が引き締まる。

「まだ姿は見えないけど、確実にこっちに向かってきてる。しかも、こっちは増えてる可能性がある」

ハルトは立ち上がり、剣の柄に手を添える。

「……旅の終わりが近いのか、それとも新しい始まりか」

彼の脳裏に浮かぶのは、王都での戦い。そしてその先に待つ、“何か”の存在。

《スキル【幸運の加護・改】の進化条件:仲間との絆・累積中……》

ふと、胸元が仄かに光る。まるで仲間との信頼が、力に変わっていくように。

「明日には、王都に入る道を選ぼう。だけど、その前にやるべきことがある」

「……孤児院の薬、届けに行くの?」

サラが小さく問う。ハルトは頷いた。

「もちろん。やりたいことがあるなら、まずは自分の手で終わらせようぜ。それが“仲間”ってもんだろ?」

サラは目を伏せて、そしてそっと微笑んだ。

「……ありがとう。ハルト」

月が森の上空に昇っていた。風は静かに木々を揺らし、確かに“何か”が近づいていることを告げていた。

だが今の彼らには、信じるものがある。

絆。信頼。そして――

「よし、明日が勝負だ」

ハルトの声に、レンとリアナ、サラ、ミルが頷いた。

その夜、誰よりも早く、星空に向けて《幸運》が微かに輝いた。


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