「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ

文字の大きさ
19 / 23

揺れる王都と、始まりの反逆者たち(完)

しおりを挟む
王都地下、かつて演劇と芸術の花が咲いた「旧大劇場」は、今や密やかに息づくレジスタンスの拠点だった。

「ようこそ、“幕間の間”へ」

そう告げたのは、ひときわ鮮やかな赤い外套を纏った青年だった。名はクラウス。元は王国宮廷劇団の座長にして、今はレジスタンスの指導者。

「姫様をお迎えできるとは。……希望というのは、こうやって戻ってくるんですね」

リアナは彼に一礼し、言った。

「今の王都は、父の名を騙る者によって、影で操られている。私たちはそれを終わらせたい」

クラウスは深く頷いた。

「分かりました。ですが……それには時間がかかる。奴らの力は深く、民の心は怯えている」

「時間はある。ただ、黙っている気はない」

ハルトが一歩前に出る。その目には決意が宿っていた。

「俺たちには“幸運”がある。無茶だって、運と力で切り拓いてきた。あとはやるだけだ」

「フッ……いい目をしている」

クラウスは笑みを浮かべた。

「では、最初の作戦です。――王都の北にある“第七倉庫”をご存じですか?」

「軍の補給庫、ですよね?」とリアナ。

「ええ、ですがそれは表向き。あそこには“黒衣の審問官”が管理する、密かな魔道研究の拠点がある。最新の強化薬と、禁忌の魔導兵器が」

一同の表情が引き締まる。

「それを壊せば、奴らの力の源を削れる」

「やる価値はあるな」とレンが呟き、サラは短剣を弄びながら言った。

「抜け道と出入口の地図が手に入れば、潜入も可能ね」

クラウスは地図を差し出しながら言う。

「ですが、問題があります。倉庫には結界があります。普通では近づけません」

「……じゃあ、“運”でどうにかするしかないな」

ハルトの軽口に皆が一瞬呆れたような顔をするが――直後、空気がざわめいた。

《スキル【幸運の加護・改】が条件を満たしました》 《新スキル【運命の糸】を獲得しました》 《効果:仲間との絆が強いほど、共にいる仲間に“幸運”がリンクします》

「……またスキルが?」

「今度は“糸”?」

ハルトの手元から、目に見えない糸が仲間たちへと伸びていく感覚があった。レン、サラ、ミル、そしてリアナ――全員の体に微かな光が灯る。

「これ……私にも、何かの力が……?」

「どうやら、絆ってやつが進化条件だったみたいだな」

ハルトは拳を握る。

「よし、運命の糸で突破口を作ってやる。――みんな、準備はいいか?」

「もちろん」「当然よ」「やるしかねぇだろ」「にゃっ!」

かくして、作戦は動き出す。

夜明け。王都北端、第七倉庫の裏門。

レンが静かに結界の要点を見極め、サラが地面に設置された警報符を解除。ハルトが前線を切り開き、リアナが結界に力を注ぐ。

「今だ、破る!」

「“レイヴァン”、風よ!」

リアナの契約獣が羽ばたくと同時に、結界がひび割れ、破砕される。

「侵入者だ!」「止めろ、装置を護れ!」

敵兵が現れるが、ミルが姿をくらませ混乱を作り、ハルトの《幸運の加護》が敵の足元を滑らせる。レンの一撃が敵陣を斬り裂き、サラの仕掛けが扉のロックを次々と解除していく。

「装置を……破壊しろ!」

ハルトが剣を振り下ろす。

《天穿》が蒼く光り、魔導装置の核を貫く――

爆風の中、倉庫が崩壊していく。

「退け!」

全員が撤退し、屋根の上へ飛び移る。夜明けの空に、煙が立ちのぼる。

「これで……一歩前進か」

「ええ。でも、これは始まりに過ぎないわ」

リアナは振り返り、燃える倉庫を見据えた。

――その裏で、王都の中心では、カリウスが報告を受けていた。

「第七倉庫が……吹き飛んだ?」

「はい、姫と、例の“幸運の剣士”によって……」

カリウスの唇がゆがむ。

「面白い。ならば、そろそろ“あの計画”を始めるとしようか」

彼の背後、闇の中で、何者かの影が笑っていた。

――革命の火は、確かに灯った。

そして、それは王国を根底から変える“運命の歯車”を動かし始める。




---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...