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揺れる王都と、始まりの反逆者たち(完)
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王都地下、かつて演劇と芸術の花が咲いた「旧大劇場」は、今や密やかに息づくレジスタンスの拠点だった。
「ようこそ、“幕間の間”へ」
そう告げたのは、ひときわ鮮やかな赤い外套を纏った青年だった。名はクラウス。元は王国宮廷劇団の座長にして、今はレジスタンスの指導者。
「姫様をお迎えできるとは。……希望というのは、こうやって戻ってくるんですね」
リアナは彼に一礼し、言った。
「今の王都は、父の名を騙る者によって、影で操られている。私たちはそれを終わらせたい」
クラウスは深く頷いた。
「分かりました。ですが……それには時間がかかる。奴らの力は深く、民の心は怯えている」
「時間はある。ただ、黙っている気はない」
ハルトが一歩前に出る。その目には決意が宿っていた。
「俺たちには“幸運”がある。無茶だって、運と力で切り拓いてきた。あとはやるだけだ」
「フッ……いい目をしている」
クラウスは笑みを浮かべた。
「では、最初の作戦です。――王都の北にある“第七倉庫”をご存じですか?」
「軍の補給庫、ですよね?」とリアナ。
「ええ、ですがそれは表向き。あそこには“黒衣の審問官”が管理する、密かな魔道研究の拠点がある。最新の強化薬と、禁忌の魔導兵器が」
一同の表情が引き締まる。
「それを壊せば、奴らの力の源を削れる」
「やる価値はあるな」とレンが呟き、サラは短剣を弄びながら言った。
「抜け道と出入口の地図が手に入れば、潜入も可能ね」
クラウスは地図を差し出しながら言う。
「ですが、問題があります。倉庫には結界があります。普通では近づけません」
「……じゃあ、“運”でどうにかするしかないな」
ハルトの軽口に皆が一瞬呆れたような顔をするが――直後、空気がざわめいた。
《スキル【幸運の加護・改】が条件を満たしました》 《新スキル【運命の糸】を獲得しました》 《効果:仲間との絆が強いほど、共にいる仲間に“幸運”がリンクします》
「……またスキルが?」
「今度は“糸”?」
ハルトの手元から、目に見えない糸が仲間たちへと伸びていく感覚があった。レン、サラ、ミル、そしてリアナ――全員の体に微かな光が灯る。
「これ……私にも、何かの力が……?」
「どうやら、絆ってやつが進化条件だったみたいだな」
ハルトは拳を握る。
「よし、運命の糸で突破口を作ってやる。――みんな、準備はいいか?」
「もちろん」「当然よ」「やるしかねぇだろ」「にゃっ!」
かくして、作戦は動き出す。
夜明け。王都北端、第七倉庫の裏門。
レンが静かに結界の要点を見極め、サラが地面に設置された警報符を解除。ハルトが前線を切り開き、リアナが結界に力を注ぐ。
「今だ、破る!」
「“レイヴァン”、風よ!」
リアナの契約獣が羽ばたくと同時に、結界がひび割れ、破砕される。
「侵入者だ!」「止めろ、装置を護れ!」
敵兵が現れるが、ミルが姿をくらませ混乱を作り、ハルトの《幸運の加護》が敵の足元を滑らせる。レンの一撃が敵陣を斬り裂き、サラの仕掛けが扉のロックを次々と解除していく。
「装置を……破壊しろ!」
ハルトが剣を振り下ろす。
《天穿》が蒼く光り、魔導装置の核を貫く――
爆風の中、倉庫が崩壊していく。
「退け!」
全員が撤退し、屋根の上へ飛び移る。夜明けの空に、煙が立ちのぼる。
「これで……一歩前進か」
「ええ。でも、これは始まりに過ぎないわ」
リアナは振り返り、燃える倉庫を見据えた。
――その裏で、王都の中心では、カリウスが報告を受けていた。
「第七倉庫が……吹き飛んだ?」
「はい、姫と、例の“幸運の剣士”によって……」
カリウスの唇がゆがむ。
「面白い。ならば、そろそろ“あの計画”を始めるとしようか」
彼の背後、闇の中で、何者かの影が笑っていた。
――革命の火は、確かに灯った。
そして、それは王国を根底から変える“運命の歯車”を動かし始める。
---
「ようこそ、“幕間の間”へ」
そう告げたのは、ひときわ鮮やかな赤い外套を纏った青年だった。名はクラウス。元は王国宮廷劇団の座長にして、今はレジスタンスの指導者。
「姫様をお迎えできるとは。……希望というのは、こうやって戻ってくるんですね」
リアナは彼に一礼し、言った。
「今の王都は、父の名を騙る者によって、影で操られている。私たちはそれを終わらせたい」
クラウスは深く頷いた。
「分かりました。ですが……それには時間がかかる。奴らの力は深く、民の心は怯えている」
「時間はある。ただ、黙っている気はない」
ハルトが一歩前に出る。その目には決意が宿っていた。
「俺たちには“幸運”がある。無茶だって、運と力で切り拓いてきた。あとはやるだけだ」
「フッ……いい目をしている」
クラウスは笑みを浮かべた。
「では、最初の作戦です。――王都の北にある“第七倉庫”をご存じですか?」
「軍の補給庫、ですよね?」とリアナ。
「ええ、ですがそれは表向き。あそこには“黒衣の審問官”が管理する、密かな魔道研究の拠点がある。最新の強化薬と、禁忌の魔導兵器が」
一同の表情が引き締まる。
「それを壊せば、奴らの力の源を削れる」
「やる価値はあるな」とレンが呟き、サラは短剣を弄びながら言った。
「抜け道と出入口の地図が手に入れば、潜入も可能ね」
クラウスは地図を差し出しながら言う。
「ですが、問題があります。倉庫には結界があります。普通では近づけません」
「……じゃあ、“運”でどうにかするしかないな」
ハルトの軽口に皆が一瞬呆れたような顔をするが――直後、空気がざわめいた。
《スキル【幸運の加護・改】が条件を満たしました》 《新スキル【運命の糸】を獲得しました》 《効果:仲間との絆が強いほど、共にいる仲間に“幸運”がリンクします》
「……またスキルが?」
「今度は“糸”?」
ハルトの手元から、目に見えない糸が仲間たちへと伸びていく感覚があった。レン、サラ、ミル、そしてリアナ――全員の体に微かな光が灯る。
「これ……私にも、何かの力が……?」
「どうやら、絆ってやつが進化条件だったみたいだな」
ハルトは拳を握る。
「よし、運命の糸で突破口を作ってやる。――みんな、準備はいいか?」
「もちろん」「当然よ」「やるしかねぇだろ」「にゃっ!」
かくして、作戦は動き出す。
夜明け。王都北端、第七倉庫の裏門。
レンが静かに結界の要点を見極め、サラが地面に設置された警報符を解除。ハルトが前線を切り開き、リアナが結界に力を注ぐ。
「今だ、破る!」
「“レイヴァン”、風よ!」
リアナの契約獣が羽ばたくと同時に、結界がひび割れ、破砕される。
「侵入者だ!」「止めろ、装置を護れ!」
敵兵が現れるが、ミルが姿をくらませ混乱を作り、ハルトの《幸運の加護》が敵の足元を滑らせる。レンの一撃が敵陣を斬り裂き、サラの仕掛けが扉のロックを次々と解除していく。
「装置を……破壊しろ!」
ハルトが剣を振り下ろす。
《天穿》が蒼く光り、魔導装置の核を貫く――
爆風の中、倉庫が崩壊していく。
「退け!」
全員が撤退し、屋根の上へ飛び移る。夜明けの空に、煙が立ちのぼる。
「これで……一歩前進か」
「ええ。でも、これは始まりに過ぎないわ」
リアナは振り返り、燃える倉庫を見据えた。
――その裏で、王都の中心では、カリウスが報告を受けていた。
「第七倉庫が……吹き飛んだ?」
「はい、姫と、例の“幸運の剣士”によって……」
カリウスの唇がゆがむ。
「面白い。ならば、そろそろ“あの計画”を始めるとしようか」
彼の背後、闇の中で、何者かの影が笑っていた。
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そして、それは王国を根底から変える“運命の歯車”を動かし始める。
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