異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ

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第1章 転生と牧場のはじまり

第3話「畑の来訪者と、兎耳の少女」

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 朝の光が、静かに牧場を照らしはじめる。
 天城悠翔──はるとは、いつもより少し早く目を覚ました。

「今日は……リンネが来るんだったな」

 あの、元気いっぱいの兎獣人少女。昨日の勢いからして、本当に朝一で来そうだと思い、急いで顔を洗って畑へ向かう。



 ジョウロに水をくみ、昨日買った種を植えていく。
 小麦の芽は順調に育ち、にんじんの葉がぴょこっと顔を出している。朝露の匂いに混ざって、どこかほんのり甘い香り。

 その時だった。

 ──バキッ。

「……ん?」

 畑の奥から、何かが枝を踏んだような音が聞こえた。
 振り返ると、柵の外に何かの影がちらりと動いた。

 姿は見えないが、草が踏まれ、土が乱れている。
 まるで獣の足跡のような──でも、大きさがおかしい。

「まさか……」

 はるとは、慌てて家の裏に回り、農具置き場から棒を一本取り出した。
 万が一に備えて、何か武器になりそうなものを持っておきたい。

「まさか、熊とか、そんな大物じゃないよな……?」

 その時、

「おーい、はるとーっ! 来たよーっ!」

 元気な声とともに、ぴょんぴょん跳ねる影が視界に飛び込んできた。
 ふわふわの白い耳としっぽ、そして大きなリュックを背負った少女──リンネだった。

「おはよっ! 来ちゃった!」

「……来たのは嬉しいけど、静かにして! 何か、変な足跡があって──」

「足跡? どんなの? 見せて!」

 はるとが案内すると、リンネは畑の隅にしゃがみこみ、鼻をひくひくと動かす。

「うん、これはね、トコトコっていう小型獣の足跡だと思う。匂いでわかるよ!」

「トコトコ?」

「うん、ふわふわしたイタチみたいな動物! 甘い果物が大好きで、たまに村の畑にも出てくるんだ」

「……じゃあ、昨日出荷した果物の匂いに惹かれて来たのかも?」

「かもねー! でも心配しないで。トコトコは人には絶対に害を与えないし、仲良くすればペットにできるんだよ!」

 リンネはそう言って、リュックから小さな袋を取り出した。中には干した果物や野菜の皮。

「これ、トコトコが好きなやつ。ちょっと置いて様子見てみよう!」

 そうして、畑の端に少しだけ餌を置いて、その場を離れる二人。

「ね、せっかくだし、牧場を案内してよ!」

 リンネの無邪気な笑顔に誘われ、はるとはログハウスや道具小屋、井戸などを案内する。
 あちこちに「すごーい!」「ゲームの世界みたい!」と素直な反応をしてくれる彼女を見て、はるとは思わず口元を緩めていた。

「ほんとに、楽しそうに見てくれるんだな」

「うんっ。……あたし、小さい頃から動物と暮らすのが夢だったの。自分の牧場って、すごく憧れだったから」

 リンネはふと真面目な顔になって、はるとを見つめた。

「だから、あたしも……手伝いたいな。ここのお手伝い。だめ?」

「いや、むしろ助かるよ。ありがとう、リンネ」

「やったーっ!」

 リンネがぱあっと笑顔になった瞬間──

 ──「ぴいっ!」

 小さな鳴き声が畑の方から聞こえた。

 二人が走って戻ると、餌を置いていた場所に、ふさふさの毛玉のような小動物がいた。丸くて短い足、ちょこちょこ動くしっぽ。目が合うと、ぴっと小さな声を上げて隠れようとした。

「出た! トコトコだ!」

「かわ……いい……」

 はるとは思わず声を漏らす。ゲームでも見たことのあるマスコット動物、まさか本物を見られるとは。
 リンネがそっと手を伸ばすと、トコトコは逃げる素振りを見せつつも、餌に惹かれて少しずつ近づいてくる。

「焦らず、ゆっくり。トコトコは最初の一口が信頼の証なんだよ」

 リンネの声に合わせて、はるともゆっくりしゃがむ。
 やがて、トコトコは一口、二口と干し果物をかじり──最後には、リンネの手のひらにちょこんと乗った。

「うわぁ……成功だね!」

「ねぇ、はると。こいつ、牧場で飼おうよ!」

「うん、いいと思う。名前、つけなきゃな」

「ふふっ……じゃあ、“コトコ”ってどう?」

「……逆読み? それ、いいな」

 こうして、牧場に最初の動物が仲間入りした。
 畑も少しずつ育ち、仲間も増えていく。はるとは実感する。

「この世界でなら──また、人と繋がれるかもしれないな」

 静かな春の風の中、兎耳の少女とふさふさの仲間と、新しい一歩が始まった。



 一方そのころ、現実世界。
 ひなのは兄のゲームデータが消えたまま起動できなくなっていることに気づき、首を傾げていた。

「壊れたのかな……?」

 ゲーム画面には、ただ“ほのぼのライフ”のロゴだけが表示されている。
 しかしその文字は、ほんの一瞬、金色に揺らめいて──次の物語へと、密かに繋がれていた。


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