異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ

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第1章 転生と牧場のはじまり

第4話「収穫箱と、最初の贈り物」

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「……おおっ!」

 朝日が昇るなか、はるとは畑の前で思わず声を上げた。
 昨日まで小さかったにんじんの葉が、すっかり伸びて、土から鮮やかなオレンジ色の根をのぞかせている。

「初収穫……だよな、これ!」

 手をそっと伸ばして、葉をつかみ、ゆっくり引っ張る。
 するりと抜けたにんじんは、形こそ少し歪んでいるが、艶があって立派な出来だ。手触り、香り、すべてが現実そのもの。

「すごい……本当に育ってる。ゲームの世界だけど、本物だ……」

 そのまま、畑の他の作物も収穫していく。小麦やハーブも混ざっていて、計10個ほど収穫できた。
 ジョウロで水を撒き、新しい種も植えながら、はるとは自然と口笛を吹いていた。



 収穫した作物を、木製の出荷箱に丁寧に並べる。
 ふと、昨日リンネが持ってきた干し果物の残りが袋に入っていたのを思い出し、それも添える。

「トコトコの“おやつセット”として、試してみようかな」

 箱のふたを閉じた瞬間──

【本日出荷:にんじん×4、小麦×3、ハーブ×2、おやつセット×1】
【出荷予測金額:285G】
【出荷報酬ボーナス:品質評価+10% → 合計313G】

「おお……なにこのボーナス演出。たのしっ!」

 仕事に追われていた頃には感じなかった、“結果が目に見える喜び”。
 この世界は、頑張ればちゃんと応えてくれる。



 昼近くになると、見慣れたふわふわ耳が柵の向こうからぴょこんと顔を出す。

「はるとー! おじゃましまーす!」

「お、リンネ。来ると思ってたよ」

「うふふ、ちゃんとトコトコの様子も見に来たんだからね!」

 牧場の片隅、木陰に置いた小さな布団の上では、コトコ(トコトコ)が丸くなって寝ていた。ときおり鼻をぴくぴくさせ、幸せそうに呼吸している。

「ね、あの子ね、たぶん“個体識別タグ”ってのがついてないと思う。つまり、完全に野生のトコトコ。飼いならせば、あたし達だけの子になるよ!」

「タグ? この世界、意外と管理がしっかりしてるんだな」

「そりゃそうだよ~。村も小さいけど、ちゃんと役場あるし、登録しないと“公式ペット”にはできないんだから」

「……それ、まるで住民登録みたいだな」

「そうそう! だから今度、村役場に行って、正式に“コトコ”をうちの子にしよう!」

 リンネが嬉しそうに言ってくれて、はるとは自然と笑顔になった。
 ──自分の“うち”に、誰かを迎え入れるという感覚。それが、こんなにも嬉しいものだとは思っていなかった。



 その日の夕方。出荷箱の横に、見慣れない小さな袋が置いてあった。
 タグには、丁寧な手書きの文字でこう書かれていた。

《出荷品、美味しかったよ! またよろしく! by 村のパン屋さん》

「……えっ」

 思わず袋を開けると、中には焼き立てのパンが2つ。まだほんのり温かい。

「これ……お礼の、品?」

 見上げた空が少しだけ深いオレンジに染まりかけている。風がふっと吹き、パンの香ばしい匂いが牧場に広がった。

「うまい……っ」

 ひと口かじったパンは、驚くほどしっとりしていて、小麦の甘みが口いっぱいに広がる。
 はるとはしばらく無言でかみしめ、ゆっくりと飲み込んだ。

「こんなふうに、誰かの生活とつながっていけるんだな……」

 パンの袋を見つめながら、胸の奥がじんわりと温かくなる。
 都市の雑踏で消耗し、褒められるどころか“できて当たり前”に押し潰されていた頃。
 こんなふうに、目に見える“ありがとう”をもらうことなんて──なかった。



 その夜。焚き火の前でリンネと並んで座っていると、彼女がぽつりと口を開いた。

「はると、さ……ここに来る前、どんな仕事してたの?」

「……んー、ブラック企業。朝も夜もなかったよ」

「そっか。でも、ちゃんと逃げて来られて、よかった」

「……逃げた、か……。うん。そうだな。逃げたんだ。俺」

 そう言って、はるとは火を見つめた。
 もう戻れない場所、でも戻りたくはない。
 この場所でなら、自分を取り戻せる気がする。

「なぁ、リンネ。ここで……ずっと生きていくって、できるかな」

「できるよっ!」

 リンネは即答して、にっと笑った。

「あたしも一緒だし!」

 その言葉は、不思議と心の奥にすとんと落ちた。



 そして翌朝。

【出荷売上:313G → 残高:403G】
【新アイテム解放:「飼葉セット」「動物用おやつ」】
【コトコの好感度が上がった!】
【リンネとの親密度が上がった! ★☆☆☆☆ → ★★☆☆☆】
【特別会話イベントが開放されました】

 小さな実りの積み重ねが、確かに前へ進んでいる。
 はるとは今日もまた、牧場の一日を始めるのだった。


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