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第1章 転生と牧場のはじまり
第8話「森の魔獣と、妹の気配」
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「……また来てた、か」
はるとは、朝の牧場をぐるりと見回しながら呟いた。
設置した“匂い札”のおかげで被害は出ていないものの、柵の外にはまたあの細長い足跡が残っていた。
「昨日より数が多い……これ、やっぱり“偵察”ってやつか」
ガルクの群れは通常では考えにくい。だが、群れる個体も稀にいる──と、雑貨屋マリアの話を思い出す。
「単体で来るぶんには対処できるけど、複数なら……ちょっと厄介だな」
ちらりとナナちゃんを見ると、今朝は落ち着いて朝草を食べている様子。
けれど、それが逆に不安をあおる。“嵐の前の静けさ”に思えた。
*
村へ出かけ、念のため役場に報告しに行くと、思ったよりも事態は深刻だった。
「最近、村の南側の森でも“動物が怯えて逃げ出す”って報告が続いててね……」
対応してくれた役場の青年、ジークが眉をひそめる。
「村のハンターに調査を依頼してるけど、もし牧場周辺にも被害が出るようなら、避難も考えておいたほうがいい」
「避難、ですか……」
「最悪の場合な。だが、はるとの牧場は森と近い。気をつけてくれ」
その言葉に、はるとは静かに頷いた。
「……わかりました」
*
帰り道。リンネと合流し、途中の道を歩きながら、はるとは報告を済ませた。
「えっ、群れ、かも……って?」
「完全に決まったわけじゃないけど、状況は悪化してる」
リンネの顔から笑顔が消える。
「ねぇ、はると。もし……もし本当に魔獣の群れが来たら、どうするの?」
「……守るよ。この牧場も、ナナちゃんも。……お前のことも」
その言葉に、リンネが目を見開いた。
けれどすぐに、ふっと力が抜けたように笑う。
「そっか。……そっか。うん。大丈夫だよね、はるとがいるなら」
その笑顔が、妙に切なげに見えたのは、なぜだろう。
*
その夜。再び足跡が見つかる。
今度は、畑のすぐそばまで来ていた。出荷箱の匂いに惹かれたのかもしれない。
地面には爪痕も残っていて、今までより明らかに“攻撃的”だった。
「これ……もはや時間の問題かもしれないな」
はるとは、柵の補強を繰り返しながら、対策の計画を練る。
「明日は……動物屋のエマさんにも相談してみよう。もし、避難ルートが必要なら──ナナちゃんを最優先で動かせるようにしておく」
その決意が固まりかけたそのときだった。
風が、一瞬止まった。
空気が凍るような気配。
──何かが、すぐそこにいる。
「……っ!」
振り向いた先の林の影に、何かが光った。
黄色く、細長い、目。
──獣の目だ。
だが、声を出す間もなく、それはすっと林の奥へと消えた。
「見られてる……」
背筋を冷たいものが走る。
*
一方、現実世界。
天城ひなのは、部屋に戻っても心臓が落ち着かずにいた。
ゲーム機の画面には、まだあの選択肢が残っている。
【あなたも、こちらの世界に来ますか?】
まるで“誰か”が、自分に呼びかけているようだった。
ひなのはそっと指を画面に乗せる。
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
「っ……!」
眩しさと耳鳴り。そして、風の音。
気がついたとき──彼女は、小さな丘の上に立っていた。
遠くに見える、木造の家。畑。柵。そして、牛舎。
「あれ……? ここって……」
彼女の目に映ったその風景は──
かつて兄が夢中になっていた、“ほのぼのライフ”の中の、あの牧場だった。
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はるとは、朝の牧場をぐるりと見回しながら呟いた。
設置した“匂い札”のおかげで被害は出ていないものの、柵の外にはまたあの細長い足跡が残っていた。
「昨日より数が多い……これ、やっぱり“偵察”ってやつか」
ガルクの群れは通常では考えにくい。だが、群れる個体も稀にいる──と、雑貨屋マリアの話を思い出す。
「単体で来るぶんには対処できるけど、複数なら……ちょっと厄介だな」
ちらりとナナちゃんを見ると、今朝は落ち着いて朝草を食べている様子。
けれど、それが逆に不安をあおる。“嵐の前の静けさ”に思えた。
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村へ出かけ、念のため役場に報告しに行くと、思ったよりも事態は深刻だった。
「最近、村の南側の森でも“動物が怯えて逃げ出す”って報告が続いててね……」
対応してくれた役場の青年、ジークが眉をひそめる。
「村のハンターに調査を依頼してるけど、もし牧場周辺にも被害が出るようなら、避難も考えておいたほうがいい」
「避難、ですか……」
「最悪の場合な。だが、はるとの牧場は森と近い。気をつけてくれ」
その言葉に、はるとは静かに頷いた。
「……わかりました」
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帰り道。リンネと合流し、途中の道を歩きながら、はるとは報告を済ませた。
「えっ、群れ、かも……って?」
「完全に決まったわけじゃないけど、状況は悪化してる」
リンネの顔から笑顔が消える。
「ねぇ、はると。もし……もし本当に魔獣の群れが来たら、どうするの?」
「……守るよ。この牧場も、ナナちゃんも。……お前のことも」
その言葉に、リンネが目を見開いた。
けれどすぐに、ふっと力が抜けたように笑う。
「そっか。……そっか。うん。大丈夫だよね、はるとがいるなら」
その笑顔が、妙に切なげに見えたのは、なぜだろう。
*
その夜。再び足跡が見つかる。
今度は、畑のすぐそばまで来ていた。出荷箱の匂いに惹かれたのかもしれない。
地面には爪痕も残っていて、今までより明らかに“攻撃的”だった。
「これ……もはや時間の問題かもしれないな」
はるとは、柵の補強を繰り返しながら、対策の計画を練る。
「明日は……動物屋のエマさんにも相談してみよう。もし、避難ルートが必要なら──ナナちゃんを最優先で動かせるようにしておく」
その決意が固まりかけたそのときだった。
風が、一瞬止まった。
空気が凍るような気配。
──何かが、すぐそこにいる。
「……っ!」
振り向いた先の林の影に、何かが光った。
黄色く、細長い、目。
──獣の目だ。
だが、声を出す間もなく、それはすっと林の奥へと消えた。
「見られてる……」
背筋を冷たいものが走る。
*
一方、現実世界。
天城ひなのは、部屋に戻っても心臓が落ち着かずにいた。
ゲーム機の画面には、まだあの選択肢が残っている。
【あなたも、こちらの世界に来ますか?】
まるで“誰か”が、自分に呼びかけているようだった。
ひなのはそっと指を画面に乗せる。
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
「っ……!」
眩しさと耳鳴り。そして、風の音。
気がついたとき──彼女は、小さな丘の上に立っていた。
遠くに見える、木造の家。畑。柵。そして、牛舎。
「あれ……? ここって……」
彼女の目に映ったその風景は──
かつて兄が夢中になっていた、“ほのぼのライフ”の中の、あの牧場だった。
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