76 / 102
第8章 世界を揺らす黒雲
第77話「沈み谷の伝承と、眠る水の鍵」
しおりを挟む
牧場に迫った“黒の徒”を退けた翌朝、悠翔は塔の使者ラグスとレーンとともに、北方の「沈み谷」へ向かうことを決めた。
「ひなの、牧場のことは頼んだよ。しばらく留守にするから」
「うん……絶対気をつけて、にいに」
妹の小さな手をぎゅっと握り、悠翔は出発の準備を整えた。
* * *
沈み谷は、かつて大洪水で村ごと沈んだと言われる場所。
年中冷たい霧が漂い、地形も不安定で、普通の地図には記載されていない。
ラグスが持つ古い「塔の記録文書」だけが頼りだった。
「水の核は“最奥の泉”に封印されていると伝えられています。ただし……“守り手”が存在する、とも」
「守り手?」
「詳細は不明ですが、巫女たちの間では“水の巫女”と呼ばれる存在が、何世代にも渡り核を見守っていると言われています」
3人は険しい山道を抜け、ついに霧の沈み谷へとたどり着いた。
足元の草が濡れ、木々の間に静かに揺れる霧の中に、何かの気配を感じる。
「ここ……息が詰まるような感じだ」
「これは、封印の影響でしょう。結界の力が“内へ内へ”と沈んでいっている証拠です」
歩みを進めるうちに、霧が一際濃くなり、視界がぼやけた。
そして現れたのは──
「……あなたたち、何者?」
水色の髪、銀の瞳。透き通るような衣を纏った少女が、泉のほとりに立っていた。
その姿はまるで霧そのものが人の形を取ったかのようで、美しく、しかしどこか儚げだった。
「……あなたが、“水の巫女”?」
「……そう呼ばれることに、慣れてしまった」
彼女は静かに微笑むと、泉へ手を差し出した。
次の瞬間、霧の中から“黒い触手”のような魔の力が、泉を狙って現れた。
「来たのね、“あの影”……!」
悠翔がとっさに風の結界を展開。ラグスとレーンもそれに続き、三重の魔法陣が泉を守る。
「巫女さん、核はどこに!?」
「ここよ──この泉の底、けれど……私の力だけでは、もう引き上げられない」
悠翔は前に出た。
「なら、僕がやる。僕の“風”で、核を呼び出す!」
目を閉じ、精霊たちの声に耳を澄ませる。
泉の水と風が交わり、小さな渦を描きながら中心へ収束していく。
やがて泉の底から、一筋の光が──
「出た!」
“水の核”は、青く輝く水晶のような球体。触れた瞬間、悠翔の胸元で“風紋石”が共鳴し、核と一体化するように融合した。
「……これで三つ。結界完成まで、あと一つ」
しかし油断したその瞬間、黒の徒の一団が霧の中から襲いかかってきた。
「悠翔様、下がってください!」
ラグスとレーンが盾となって立ちはだかる。
水の巫女もまた、手を組み、祈りの呪文を紡いだ。
──泉から立ち上る、水の守護精霊。
その一撃で、黒の徒は一時退却するが、巫女は言った。
「……次は、彼ら本体が来るでしょう。結界が完成する前に、全てを壊すために」
悠翔は頷いた。
「……なら、こっちも急がないと」
* * *
沈み谷を離れた彼らは、牧場へ帰る途中、小さな祠の前で足を止めた。
風、水、そして──最後の属性。
「“火”の核……それが最後か」
レーンが静かに言った。
「そしてその場所は……“竜の火山”です」
風が、霧の中に新たな戦いの火種を運んでいた。
---
【イベントログ】
イベント発生:「沈み谷と水の巫女」
新キャラクター登場:水の巫女「リェナ」
新エリア:霧の沈み谷・封印の泉
重要アイテム獲得:「水の核」
黒の徒との戦闘(小規模):撃退成功
結界完成進捗:60% → 80%(水の核融合完了)
次の目標:「竜の火山」で“火の核”を手に入れる
---
「ひなの、牧場のことは頼んだよ。しばらく留守にするから」
「うん……絶対気をつけて、にいに」
妹の小さな手をぎゅっと握り、悠翔は出発の準備を整えた。
* * *
沈み谷は、かつて大洪水で村ごと沈んだと言われる場所。
年中冷たい霧が漂い、地形も不安定で、普通の地図には記載されていない。
ラグスが持つ古い「塔の記録文書」だけが頼りだった。
「水の核は“最奥の泉”に封印されていると伝えられています。ただし……“守り手”が存在する、とも」
「守り手?」
「詳細は不明ですが、巫女たちの間では“水の巫女”と呼ばれる存在が、何世代にも渡り核を見守っていると言われています」
3人は険しい山道を抜け、ついに霧の沈み谷へとたどり着いた。
足元の草が濡れ、木々の間に静かに揺れる霧の中に、何かの気配を感じる。
「ここ……息が詰まるような感じだ」
「これは、封印の影響でしょう。結界の力が“内へ内へ”と沈んでいっている証拠です」
歩みを進めるうちに、霧が一際濃くなり、視界がぼやけた。
そして現れたのは──
「……あなたたち、何者?」
水色の髪、銀の瞳。透き通るような衣を纏った少女が、泉のほとりに立っていた。
その姿はまるで霧そのものが人の形を取ったかのようで、美しく、しかしどこか儚げだった。
「……あなたが、“水の巫女”?」
「……そう呼ばれることに、慣れてしまった」
彼女は静かに微笑むと、泉へ手を差し出した。
次の瞬間、霧の中から“黒い触手”のような魔の力が、泉を狙って現れた。
「来たのね、“あの影”……!」
悠翔がとっさに風の結界を展開。ラグスとレーンもそれに続き、三重の魔法陣が泉を守る。
「巫女さん、核はどこに!?」
「ここよ──この泉の底、けれど……私の力だけでは、もう引き上げられない」
悠翔は前に出た。
「なら、僕がやる。僕の“風”で、核を呼び出す!」
目を閉じ、精霊たちの声に耳を澄ませる。
泉の水と風が交わり、小さな渦を描きながら中心へ収束していく。
やがて泉の底から、一筋の光が──
「出た!」
“水の核”は、青く輝く水晶のような球体。触れた瞬間、悠翔の胸元で“風紋石”が共鳴し、核と一体化するように融合した。
「……これで三つ。結界完成まで、あと一つ」
しかし油断したその瞬間、黒の徒の一団が霧の中から襲いかかってきた。
「悠翔様、下がってください!」
ラグスとレーンが盾となって立ちはだかる。
水の巫女もまた、手を組み、祈りの呪文を紡いだ。
──泉から立ち上る、水の守護精霊。
その一撃で、黒の徒は一時退却するが、巫女は言った。
「……次は、彼ら本体が来るでしょう。結界が完成する前に、全てを壊すために」
悠翔は頷いた。
「……なら、こっちも急がないと」
* * *
沈み谷を離れた彼らは、牧場へ帰る途中、小さな祠の前で足を止めた。
風、水、そして──最後の属性。
「“火”の核……それが最後か」
レーンが静かに言った。
「そしてその場所は……“竜の火山”です」
風が、霧の中に新たな戦いの火種を運んでいた。
---
【イベントログ】
イベント発生:「沈み谷と水の巫女」
新キャラクター登場:水の巫女「リェナ」
新エリア:霧の沈み谷・封印の泉
重要アイテム獲得:「水の核」
黒の徒との戦闘(小規模):撃退成功
結界完成進捗:60% → 80%(水の核融合完了)
次の目標:「竜の火山」で“火の核”を手に入れる
---
10
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる