『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

文字の大きさ
43 / 138

43話『新しい力と、打ち明ける夜』

しおりを挟む
「……え?」

麻衣は、思わず自分のスマホを見つめた。

画面には、前にも見たあの“スキル通知”が表示されていた。


---

 新スキル【ささやきの手紙】を習得しました
 効果:あなたの想いを、言葉にしづらい相手にやさしく届けます
 使用条件:対象との関係性が“近しい”こと。発動は一日一回まで。


---

「また……スキル?」

朝、ひなのを送り出して家事を片付けたあとの静かな時間。
思いがけずスマホに届いた通知に、麻衣は胸がざわついた。

「“ささやきの手紙”って……なにそれ、ラブレターみたい」

軽口を叩いてみたけれど、その奥では小さな予感がふつふつと膨らんでいた。

「たぶん、これ……“言えないこと”を伝えるための、スキルなんだよね」

まるで、今の自分の状況を見透かされたようだった。


---

夜。子どもたちが寝静まったあと、麻衣はリビングのソファで、コーヒーを片手に考え込んでいた。

隣には、夫の雄一。

「麻衣、なんか……悩みごと?」

静かに尋ねたその声に、麻衣はびくっとした。

「えっ? ううん、ちょっと疲れてるだけ。……いや、ほんとは、少し話したいことがあって」

雄一はすぐにテレビの音量を下げ、麻衣の方に体を向けた。

「なに?」

麻衣は、しばらくの沈黙の後、おそるおそる言葉をつむぎ出した。

「実はね……ここ数ヶ月、不思議なことが起きてるの。スキル、っていうか、スマホに変な通知が来て、そこからいろんなことができるようになって……」

雄一はぽかんとした顔で見つめた。

「……ん? スキル?」

「うん、ゲームとかのじゃなくて……リアルの。現実の世界で。最初は信じられなかったけど、ほら、あの遠足の時間のミスに気づいたのも、園の掲示板の貼り間違いを直したのも……実は、ちょっとした“スキル”の力を使ってたんだ」

麻衣の声はどこかおそるおそるしていたが、雄一は急には笑ったりせず、じっと耳を傾けていた。

「なんていうか、最初は自分でも信じられなかったの。偶然かなって。でも、最近、こうやって新しいスキルが届くようになって……その力で誰かの役に立ててるのかな、って思うようになってきて……」

そして、スマホの画面を見せながら、さきほど届いた新スキルの説明を見せた。

「“ささやきの手紙”? ……ふむ……」

雄一は眉をひそめながらも、ふざけることはしなかった。

「ごめんね。こんな、信じられないこと、急に言われても困るよね」

麻衣が小さく笑うと、雄一はふっと息を吐いた。

「……困るというより、びっくりはしたけど……でも、なんだろう」

少し考えてから、雄一は笑った。

「なんか、麻衣らしいなって思った」

「えっ?」

「人のために動いてること、よく分かってた。でもいつも、うまく言葉にしないから。……そういう力があっても不思議じゃないな、って思ったよ」

麻衣の目に、じんわりと涙が浮かんだ。

「……ありがとう、雄一」

「でもこれ、他の人には言ってないんでしょ?」

「うん。高梨さんくらいかな、なんとなく気づいてるかもってくらい。言葉にしないでいたら、なんとなくバレずに済むかなって……」

「だったら、俺だけが“秘密を知ってる旦那”ってことで、ちょっと優越感あるな」

冗談めかしたその言葉に、麻衣は笑った。

「もう、なにそれ~」

そんな風に、リビングにはやわらかな空気が流れた。

けれど、麻衣の心の奥には、まだほんの少し、不安も残っていた。

(この力は、いつまで続くんだろう? それとも……もっと何かあるのかな)

その夜、麻衣はスキルの説明を何度も読み返しながら、眠りについた。


---
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり
ファンタジー
10歳で『ルゥ』というギフトを得た僕。 どんなギフトかわからないまま、義理の兄たちとダンジョンに潜ったけど、役立たずと言われ取り残されてしまった。 一人きりで動くこともできない僕を助けてくれたのは一匹のフェンリルだった。僕のギルト『ルゥ』で出来たスープは、フェンリルの古傷を直すほどのとんでもないギフトだった。 その頃、母も僕のせいで離婚をされた。僕のギフトを理解できない義兄たちの報告のせいだった。 これは、母と僕と妹が、そこから幸せになるまでの、大切な人々との出会いのファンタジーです。 カクヨムにもサブタイ違いで載せています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...