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43話『新しい力と、打ち明ける夜』
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「……え?」
麻衣は、思わず自分のスマホを見つめた。
画面には、前にも見たあの“スキル通知”が表示されていた。
---
新スキル【ささやきの手紙】を習得しました
効果:あなたの想いを、言葉にしづらい相手にやさしく届けます
使用条件:対象との関係性が“近しい”こと。発動は一日一回まで。
---
「また……スキル?」
朝、ひなのを送り出して家事を片付けたあとの静かな時間。
思いがけずスマホに届いた通知に、麻衣は胸がざわついた。
「“ささやきの手紙”って……なにそれ、ラブレターみたい」
軽口を叩いてみたけれど、その奥では小さな予感がふつふつと膨らんでいた。
「たぶん、これ……“言えないこと”を伝えるための、スキルなんだよね」
まるで、今の自分の状況を見透かされたようだった。
---
夜。子どもたちが寝静まったあと、麻衣はリビングのソファで、コーヒーを片手に考え込んでいた。
隣には、夫の雄一。
「麻衣、なんか……悩みごと?」
静かに尋ねたその声に、麻衣はびくっとした。
「えっ? ううん、ちょっと疲れてるだけ。……いや、ほんとは、少し話したいことがあって」
雄一はすぐにテレビの音量を下げ、麻衣の方に体を向けた。
「なに?」
麻衣は、しばらくの沈黙の後、おそるおそる言葉をつむぎ出した。
「実はね……ここ数ヶ月、不思議なことが起きてるの。スキル、っていうか、スマホに変な通知が来て、そこからいろんなことができるようになって……」
雄一はぽかんとした顔で見つめた。
「……ん? スキル?」
「うん、ゲームとかのじゃなくて……リアルの。現実の世界で。最初は信じられなかったけど、ほら、あの遠足の時間のミスに気づいたのも、園の掲示板の貼り間違いを直したのも……実は、ちょっとした“スキル”の力を使ってたんだ」
麻衣の声はどこかおそるおそるしていたが、雄一は急には笑ったりせず、じっと耳を傾けていた。
「なんていうか、最初は自分でも信じられなかったの。偶然かなって。でも、最近、こうやって新しいスキルが届くようになって……その力で誰かの役に立ててるのかな、って思うようになってきて……」
そして、スマホの画面を見せながら、さきほど届いた新スキルの説明を見せた。
「“ささやきの手紙”? ……ふむ……」
雄一は眉をひそめながらも、ふざけることはしなかった。
「ごめんね。こんな、信じられないこと、急に言われても困るよね」
麻衣が小さく笑うと、雄一はふっと息を吐いた。
「……困るというより、びっくりはしたけど……でも、なんだろう」
少し考えてから、雄一は笑った。
「なんか、麻衣らしいなって思った」
「えっ?」
「人のために動いてること、よく分かってた。でもいつも、うまく言葉にしないから。……そういう力があっても不思議じゃないな、って思ったよ」
麻衣の目に、じんわりと涙が浮かんだ。
「……ありがとう、雄一」
「でもこれ、他の人には言ってないんでしょ?」
「うん。高梨さんくらいかな、なんとなく気づいてるかもってくらい。言葉にしないでいたら、なんとなくバレずに済むかなって……」
「だったら、俺だけが“秘密を知ってる旦那”ってことで、ちょっと優越感あるな」
冗談めかしたその言葉に、麻衣は笑った。
「もう、なにそれ~」
そんな風に、リビングにはやわらかな空気が流れた。
けれど、麻衣の心の奥には、まだほんの少し、不安も残っていた。
(この力は、いつまで続くんだろう? それとも……もっと何かあるのかな)
その夜、麻衣はスキルの説明を何度も読み返しながら、眠りについた。
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麻衣は、思わず自分のスマホを見つめた。
画面には、前にも見たあの“スキル通知”が表示されていた。
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新スキル【ささやきの手紙】を習得しました
効果:あなたの想いを、言葉にしづらい相手にやさしく届けます
使用条件:対象との関係性が“近しい”こと。発動は一日一回まで。
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「また……スキル?」
朝、ひなのを送り出して家事を片付けたあとの静かな時間。
思いがけずスマホに届いた通知に、麻衣は胸がざわついた。
「“ささやきの手紙”って……なにそれ、ラブレターみたい」
軽口を叩いてみたけれど、その奥では小さな予感がふつふつと膨らんでいた。
「たぶん、これ……“言えないこと”を伝えるための、スキルなんだよね」
まるで、今の自分の状況を見透かされたようだった。
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夜。子どもたちが寝静まったあと、麻衣はリビングのソファで、コーヒーを片手に考え込んでいた。
隣には、夫の雄一。
「麻衣、なんか……悩みごと?」
静かに尋ねたその声に、麻衣はびくっとした。
「えっ? ううん、ちょっと疲れてるだけ。……いや、ほんとは、少し話したいことがあって」
雄一はすぐにテレビの音量を下げ、麻衣の方に体を向けた。
「なに?」
麻衣は、しばらくの沈黙の後、おそるおそる言葉をつむぎ出した。
「実はね……ここ数ヶ月、不思議なことが起きてるの。スキル、っていうか、スマホに変な通知が来て、そこからいろんなことができるようになって……」
雄一はぽかんとした顔で見つめた。
「……ん? スキル?」
「うん、ゲームとかのじゃなくて……リアルの。現実の世界で。最初は信じられなかったけど、ほら、あの遠足の時間のミスに気づいたのも、園の掲示板の貼り間違いを直したのも……実は、ちょっとした“スキル”の力を使ってたんだ」
麻衣の声はどこかおそるおそるしていたが、雄一は急には笑ったりせず、じっと耳を傾けていた。
「なんていうか、最初は自分でも信じられなかったの。偶然かなって。でも、最近、こうやって新しいスキルが届くようになって……その力で誰かの役に立ててるのかな、って思うようになってきて……」
そして、スマホの画面を見せながら、さきほど届いた新スキルの説明を見せた。
「“ささやきの手紙”? ……ふむ……」
雄一は眉をひそめながらも、ふざけることはしなかった。
「ごめんね。こんな、信じられないこと、急に言われても困るよね」
麻衣が小さく笑うと、雄一はふっと息を吐いた。
「……困るというより、びっくりはしたけど……でも、なんだろう」
少し考えてから、雄一は笑った。
「なんか、麻衣らしいなって思った」
「えっ?」
「人のために動いてること、よく分かってた。でもいつも、うまく言葉にしないから。……そういう力があっても不思議じゃないな、って思ったよ」
麻衣の目に、じんわりと涙が浮かんだ。
「……ありがとう、雄一」
「でもこれ、他の人には言ってないんでしょ?」
「うん。高梨さんくらいかな、なんとなく気づいてるかもってくらい。言葉にしないでいたら、なんとなくバレずに済むかなって……」
「だったら、俺だけが“秘密を知ってる旦那”ってことで、ちょっと優越感あるな」
冗談めかしたその言葉に、麻衣は笑った。
「もう、なにそれ~」
そんな風に、リビングにはやわらかな空気が流れた。
けれど、麻衣の心の奥には、まだほんの少し、不安も残っていた。
(この力は、いつまで続くんだろう? それとも……もっと何かあるのかな)
その夜、麻衣はスキルの説明を何度も読み返しながら、眠りについた。
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