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52話『父と子と、ホットケーキな午後』
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「今日は、パパとおるすばん?」
「うん、ママはカフェのおしごと。ひなちゃんとおにいちゃんと、パパでおやつつくるんだよー!」
日曜の午後。麻衣がちょっとだけカフェに顔を出している間、家では雄一が子どもたちと過ごしていた。
「さてと、今日はホットケーキを焼いてみようか」
「やったー!」
「おれ、まぜるー!」
張り切るふたりを見て、雄一は笑う。
「よし、じゃあパパは焼く係。悠翔は生地まぜて、ひなは……卵割るか?」
「たまごー!……パカッ!あっ……つめに、ちょっとはいった……」
「あ~……まあ、殻もたんぱく質ってことで」
「だめだよ、パパ! ちゃんと取らないと!」
「はい、すみませんでした~」
にぎやかに笑いながら、親子3人のホットケーキ作りが始まった。
—
生地を焼く間、雄一はふと、最近のことを思い出していた。
麻衣の話していた「スキル」のこと。なんだかファンタジー小説みたいで、信じられないようで――でも、不思議と納得できてしまう。
「ママね、さいきん、ちょっとすごいんだよ」
「すごい?」
「おなじえほん、よんでもらっても、ちがうおはなしみたいにきこえるの」
「ふしぎで、あったかくて……スキルって、そういうのなのかなって思う」
悠翔の言葉に、雄一は優しくうなずいた。
「ママは、そういう力があるんだろうな。みんなをちょっと幸せにする力っていうかさ」
「じゃあ、パパのスキルはなに?」
「えー、パパのスキル? ……“食器を速攻で洗う”とか?」
「しょぼっ!」
「じゃあ“子どもとホットケーキを楽しく焼けるスキル”!」
「うん、それはいいね!」
—
「じゅー……」
こんがりと焼けたホットケーキに、バターとメープルシロップをたっぷり。
「うまっ! やばっ!これ、やばい!」
「パパ、やばいっていったらダメでしょ~」
「うわー、ひなちゃんに怒られた~」
3人で笑いながら食べるおやつタイム。
何気ない、でもすごく満たされる時間だった。
—
その日の夜。
「ただいま~……あら、いい匂い……?」
麻衣が帰宅すると、リビングには甘いバターの香りが残っていた。
「ママ、おかえりー!」
「ホットケーキつくったよ!パパがんばった!」
「うん、焼きながら“これは芸術だ”っていってたよ!」
「え、それほんとに言ったの?」
「……ま、まぁ、それなりに!」
笑い合う家族の声に、麻衣はほっと肩の力を抜いた。
――スキルとか、日常とか。
どっちも大事。どっちも宝物。
その晩、麻衣はスマホの画面を見ながら小さくつぶやいた。
「“家族と過ごす時間”が、最高のバフかもね」
---
「うん、ママはカフェのおしごと。ひなちゃんとおにいちゃんと、パパでおやつつくるんだよー!」
日曜の午後。麻衣がちょっとだけカフェに顔を出している間、家では雄一が子どもたちと過ごしていた。
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「やったー!」
「おれ、まぜるー!」
張り切るふたりを見て、雄一は笑う。
「よし、じゃあパパは焼く係。悠翔は生地まぜて、ひなは……卵割るか?」
「たまごー!……パカッ!あっ……つめに、ちょっとはいった……」
「あ~……まあ、殻もたんぱく質ってことで」
「だめだよ、パパ! ちゃんと取らないと!」
「はい、すみませんでした~」
にぎやかに笑いながら、親子3人のホットケーキ作りが始まった。
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生地を焼く間、雄一はふと、最近のことを思い出していた。
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「すごい?」
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「じゃあ、パパのスキルはなに?」
「えー、パパのスキル? ……“食器を速攻で洗う”とか?」
「しょぼっ!」
「じゃあ“子どもとホットケーキを楽しく焼けるスキル”!」
「うん、それはいいね!」
—
「じゅー……」
こんがりと焼けたホットケーキに、バターとメープルシロップをたっぷり。
「うまっ! やばっ!これ、やばい!」
「パパ、やばいっていったらダメでしょ~」
「うわー、ひなちゃんに怒られた~」
3人で笑いながら食べるおやつタイム。
何気ない、でもすごく満たされる時間だった。
—
その日の夜。
「ただいま~……あら、いい匂い……?」
麻衣が帰宅すると、リビングには甘いバターの香りが残っていた。
「ママ、おかえりー!」
「ホットケーキつくったよ!パパがんばった!」
「うん、焼きながら“これは芸術だ”っていってたよ!」
「え、それほんとに言ったの?」
「……ま、まぁ、それなりに!」
笑い合う家族の声に、麻衣はほっと肩の力を抜いた。
――スキルとか、日常とか。
どっちも大事。どっちも宝物。
その晩、麻衣はスマホの画面を見ながら小さくつぶやいた。
「“家族と過ごす時間”が、最高のバフかもね」
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