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56話『ひなのと、お星さまのヒミツばなし』
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「それでねー、ゆうえんち、じゃなくて、ゆあしゅ~?」
「ゆあしゅ、じゃなくて“ゆあしょく”?」
「ちがうのー! おふろがね、まんまるで、ぽかぽかで、おほしさまがいーっぱい!」
朝の保育園。ひなのが身振り手振りで、週末の旅行を熱く語っていた。
先生たちも笑いながら「はいはい、温泉に行ったんだね~」と相づちを打っていたが、話はそこで終わらなかった。
「それでね、ひなの、すごいの見たの! おにーさんから、もやもやがにゅーって出たの!」
「……もやもや?」
「うん! くろいの! そしたらね、あとで“さいふとられたー”って、となりのおばさんがいってたの!」
保育士の先生は一瞬、動きを止めた。
「……ひなのちゃん、それって、温泉街で?」
「うんっ!」
「(もしかして……田仲さんが言ってた“ちょっとした騒ぎ”ってこれ……)」
先生は心の中でうなった。
しかし、ひなのは楽しそうに続ける。
「でね、ままが“あれ?”って言ったら、おにーさん、いなくなったの! だからね、ひなの、ままは“すごいちから”もってるんだとおもうの~!」
「す、すごい力……!」
別のママからも「田仲さんってなんかふわっとしてるのに、不思議と頼れるよね~」なんて話を聞いたことがあった。
(まさか……いや、でも子どもの想像かもしれないし……)
けれど先生はふと、ひなのの言葉の中に、妙な“リアリティ”を感じた。
---
◆その日の午後・保育士控え室
「ひなのちゃん、また不思議なこと言ってたよ。“黒いもやもや”がどうとかって」
「えー、また? でも田仲さんの娘ちゃんって、空想力すごいよね~」
「そうそう。前も“お星さまの声が聞こえる”とか言ってたし」
「それはただの可愛い妄想でしょ~」
とはいえ――子どもは時々、大人が見えないものを感じ取る。
特に、家族の影響を強く受ける年齢だ。
「田仲さん、カフェで働いてるときも不思議なお客さんに会ったって言ってたし……あの家族、なんか“もってる”よね~」
「まあ、何かあっても、いつも笑顔でちゃんと向き合ってくれるしね。安心感あるわ~」
---
◆そのころ、田仲家では
「ねえ、ママ~、ひなのね、きょうね、まほうのはなし、したの!」
「まほう? ……もしかして、旅行でのお財布の話?」
「うんっ! もやもやがね、でてたの~!」
「……」
麻衣は一瞬ぎくりとしたが、すぐに笑って頷いた。
「そっか~、じゃあ、ひなのもスキルが見えたのかもね~」
「ひなのもスキルもちになる~!」
「それはちょっと早いかな~?」
冗談っぽく笑いながらも、麻衣は心の中で、ほんの少しだけ気になっていた。
(ひなのにも、ほんの少し影響してるのかも……?)
でも、それが悪いことではない気がする。
だって、娘は今日もニコニコ笑って、まわりをほんわか和ませている。
「それじゃあ、今日の絵本は“お星さまとにじいろのかさ”だよ~」
「やった~!」
読み聞かせの時間、親子の笑い声が夜のリビングにこぼれる。
そしてそのころ、保育園の先生たちは、明日の“お便り帳”の記録欄にこうメモしていた。
> 「ひなのちゃん、旅行のお話をたくさん聞かせてくれました。とっても想像力豊かで、お友達も楽しそうに聞いていました♪」
想像なのか、事実なのか。
それは誰にもわからない。
でも、“なんとなく温かい”何かが周囲に伝わっていることだけは、間違いなかった。
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「ゆあしゅ、じゃなくて“ゆあしょく”?」
「ちがうのー! おふろがね、まんまるで、ぽかぽかで、おほしさまがいーっぱい!」
朝の保育園。ひなのが身振り手振りで、週末の旅行を熱く語っていた。
先生たちも笑いながら「はいはい、温泉に行ったんだね~」と相づちを打っていたが、話はそこで終わらなかった。
「それでね、ひなの、すごいの見たの! おにーさんから、もやもやがにゅーって出たの!」
「……もやもや?」
「うん! くろいの! そしたらね、あとで“さいふとられたー”って、となりのおばさんがいってたの!」
保育士の先生は一瞬、動きを止めた。
「……ひなのちゃん、それって、温泉街で?」
「うんっ!」
「(もしかして……田仲さんが言ってた“ちょっとした騒ぎ”ってこれ……)」
先生は心の中でうなった。
しかし、ひなのは楽しそうに続ける。
「でね、ままが“あれ?”って言ったら、おにーさん、いなくなったの! だからね、ひなの、ままは“すごいちから”もってるんだとおもうの~!」
「す、すごい力……!」
別のママからも「田仲さんってなんかふわっとしてるのに、不思議と頼れるよね~」なんて話を聞いたことがあった。
(まさか……いや、でも子どもの想像かもしれないし……)
けれど先生はふと、ひなのの言葉の中に、妙な“リアリティ”を感じた。
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◆その日の午後・保育士控え室
「ひなのちゃん、また不思議なこと言ってたよ。“黒いもやもや”がどうとかって」
「えー、また? でも田仲さんの娘ちゃんって、空想力すごいよね~」
「そうそう。前も“お星さまの声が聞こえる”とか言ってたし」
「それはただの可愛い妄想でしょ~」
とはいえ――子どもは時々、大人が見えないものを感じ取る。
特に、家族の影響を強く受ける年齢だ。
「田仲さん、カフェで働いてるときも不思議なお客さんに会ったって言ってたし……あの家族、なんか“もってる”よね~」
「まあ、何かあっても、いつも笑顔でちゃんと向き合ってくれるしね。安心感あるわ~」
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◆そのころ、田仲家では
「ねえ、ママ~、ひなのね、きょうね、まほうのはなし、したの!」
「まほう? ……もしかして、旅行でのお財布の話?」
「うんっ! もやもやがね、でてたの~!」
「……」
麻衣は一瞬ぎくりとしたが、すぐに笑って頷いた。
「そっか~、じゃあ、ひなのもスキルが見えたのかもね~」
「ひなのもスキルもちになる~!」
「それはちょっと早いかな~?」
冗談っぽく笑いながらも、麻衣は心の中で、ほんの少しだけ気になっていた。
(ひなのにも、ほんの少し影響してるのかも……?)
でも、それが悪いことではない気がする。
だって、娘は今日もニコニコ笑って、まわりをほんわか和ませている。
「それじゃあ、今日の絵本は“お星さまとにじいろのかさ”だよ~」
「やった~!」
読み聞かせの時間、親子の笑い声が夜のリビングにこぼれる。
そしてそのころ、保育園の先生たちは、明日の“お便り帳”の記録欄にこうメモしていた。
> 「ひなのちゃん、旅行のお話をたくさん聞かせてくれました。とっても想像力豊かで、お友達も楽しそうに聞いていました♪」
想像なのか、事実なのか。
それは誰にもわからない。
でも、“なんとなく温かい”何かが周囲に伝わっていることだけは、間違いなかった。
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