『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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106話『スミレさん、再び』

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 いつものカフェの朝。

 麻衣はカウンター越しに、丁寧にハンドドリップでコーヒーを淹れていた。パートの仕事にも慣れてきたとはいえ、こうして静かに向き合う時間は、麻衣にとってちょっとした“心の整え”でもある。

 「ふふふ~、今日はあの人、来るかなぁ」

 ひとりごとのようにつぶやきながら、チラリと入口に視線をやる。するとまるでタイミングを見計らったかのように、カラン、と扉が開いた。

 「おはようございます~。あら、ちょうど入れてたのね?」

 その声に、麻衣はぱっと顔を上げた。

 「スミレさん、おはようございます! ちょうど今、いい香りに包まれてたところなんです」

 スミレさん――例の“占い師みたいな雰囲気”の女性は、すでに何度もカフェに足を運んでいた。前回の「スキル共鳴事件」以来、麻衣とスミレは“スキルを持つ仲間”として、時折こうして情報交換のような雑談を楽しんでいる。

 「今日のスキルの調子はどう?」と冗談めかしてスミレが言うと、麻衣は少しだけ照れたように笑った。

 「最近、“共鳴”が起きるときの感じが、ちょっと分かるようになってきた気がして……。でも、相変わらず予測不能なんですけどね」

 「それでこそ“スキル”って感じよね」

 スミレは、ふっと柔らかく笑って腰を下ろした。隣の席には、少し前からよく来るようになった穂積さんがコーヒーを飲んでいる。

 「あら……スミレさん?」

 穂積さんが気づいて声をかける。どうやら、何かのセミナーで顔を合わせたことがあるようだった。

 「まぁ、穂積さん。びっくり。こんなところでお会いするなんて!」

 「ここのカフェ、ちょっと前からハマっててね。まさかスミレさんも来てるとは……」

 麻衣は二人の間に、ふわっと淡い金色の光のもやが浮かぶのを感じた。

 (あ、この色……)

 スマホを開くと、やはり通知が来ていた。

 《スキル共鳴反応:2名 状況:自然発生・安定》

 「ねえスミレさん、これってやっぱり“共鳴”ですよね?」

 「そうみたいね。穂積さんとは以前、心のケアに関する勉強会で少しだけご一緒してたんだけど……何か波長が合うのかも」

 スミレさんがそう言うと、穂積さんも苦笑いしながらうなずいた。

 「なんだか、今日はすごく落ち着く気がします。スキル……ってやつのおかげなんでしょうか?」

 「かもしれませんね」と麻衣も笑った。

 この日、カフェの空気はどこまでも穏やかだった。

 

 夜。帰宅後。

 スマホに届いた通知を見て、麻衣は声を上げそうになった。

 《スキル“ゆるやかな共鳴”の進化が確認されました》
 《新スキル“心の交差点”を取得しました(パッシブ)》
 《効果:スキルを持つ者同士の共鳴頻度・安定性が上昇》

 「……共鳴が交差点、かぁ。なんだか、素敵な名前」

 麻衣はふっと笑いながら、ひなのの寝顔を覗き込んだ。

 (つながるって、やっぱりいいことかもしれない)


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