『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ

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130話『始まりの終わり、終わりの始まり』

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日曜の朝。
麻衣はリビングのカーテンを開けて、小さく息をついた。

光が柔らかく差し込む。
けれど、胸の奥には確かに緊張があった。

(今日、すべてが動き出す)

スキルを得てからの、長くて不思議な日常。
それが今、ひとつの終着点を迎えようとしている。

***

午前十時。都内某所にある貸会議室。
簡素なテーブルに、スキルを持つ“選ばれた者たち”が集まっていた。

プレイヤーは全国に数十名以上存在するとされている。
その中でも、今日ここに集まったのは代表的な十五名。

主婦、学生、会社員、元プログラマー、ゲーマー、引きこもり、医師――
属性も年齢もバラバラな彼らは、たったひとつだけ“共通の力”を持っていた。

スキル。

そして、“それをどうするか”を問われている。

「じゃ、始めますか」

スミレが立ち上がり、簡単に今日の議題を確認する。

> ■議題:スキルの未来について
・スキルを封印してリセットするか
・スキルと共存する世界を目指すか
・新たなルールを創造するか



「これ、ゲームの選択肢じゃないんだよね」

高梨さんがつぶやいた。

「現実なんだよ。もう、私たちは“戻れない”場所に来てる」

麻衣は、手元のノートを見つめていた。

(私たちは、“世界の形”を問われてる)

そして、雄一がそっと手を挙げた。

スキルを持たない、ただの“家族”。
けれど、彼が語る言葉には重みがあった。

「僕は、麻衣を見てきました。
この力が誰かを救ったことも、戸惑わせたことも、両方知ってます。
でも――僕は“共存”に賛成です」

静まり返る会場に、しっかりとした声が響いた。

「スキルがあることで、誰かが前を向けるなら。
家族を守れるなら。
それを“なかったこと”には、もうできません」

麻衣は、小さくうなずいた。

「私は、“共存とルールの再構築”を選びたい。
力を捨てるんじゃなくて、制御して、学んで、次につなげる方法を選びたいです」

数人が頷き、数人が目を伏せる。

「でも……力を持たない人たちはどうなるの?
スキルを持った者だけが優位にならない?」

「それを防ぐためのルールでしょ」

川島さんが鋭く言った。

「“力を持った者は、それを誇らない”
“他者への干渉は制限される”
“スキル使用時はログと監査を残す”――今までだって、技術は社会でこうやって整えてきた。
だったらスキルだって同じことよ」

静かに、でも確実に空気が変わっていく。

やがて――それぞれが、自分の選択肢に手をかけた。

スマートフォン越しに表示される“選択”画面。

> ■選択を確定しますか?
→ はい/いいえ



麻衣は目を閉じた。

(これは、ひとつの“始まり”だ)

そして、指先が画面をタップする。

「――はい」

その瞬間、会場全体が微かに震えた。

何かが切り替わるような感覚。
見えない空気の中に、光の粒が舞った。

> 【選択が確定されました】
■共存ルート:選択完了
■スキル世界の“再構築”が開始されます
■プレイヤーの意思により、現実と仮想の境界を統合します



***

その日の夕方。
麻衣のスマホに、新たな“スキル一覧”が届いた。

> ■新スキル:
・調和の結界(地域内の暴走スキルを中和)
・共鳴の道標(他プレイヤーとの連携共有)
・未来選択記録(過去の判断と影響を参照可能)



(これは……もう“チート”じゃない)

それは、力でも戦闘でもない。
“日常を守るためのスキル”だ。

(私たちは、ここまで来たんだ)

そして、夜。

リビングでくつろぐ麻衣の隣に、雄一が座る。

「お疲れさま」

「うん……ありがとう。
私、やっと“普通の暮らし”に戻れる気がするよ」

雄一は微笑み、麻衣の手を優しく握る。

「でもその“普通”も、麻衣が守ってくれたものだよ。
新しい日常が始まるんだ」

麻衣は頷く。

そして、画面の片隅に現れたメッセージに、気づいた。

> 【次なる更新まで、あと6日】
※“世界の未来”を定着させるための再確認が行われます



(6日後――私たちは、最終確認をする)

“未来を選び続けること”。
それが、麻衣たちに残された“最後のスキル”なのかもしれない。


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