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ありえたはずの未来
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――何故、弟の方が生きているんだっ!
不意に遠い記憶が蘇り、ルイスは書類に走らせていたペンをとめる。ざらざらとした、耳障りの悪い声。一度意識で捉えてしまうと、それはますます存在を誇示するように鼓膜の裏側に大きく響き渡る。
――我が身可愛さに、殿下を見殺しにしたのだろうさ。
ことり、と小さな音を立ててペンをデスクの上に置き、ルイスは深く皺の寄った眉間を指先で揉みほぐす。記憶というものは、ひどく厄介だ。まるで芋づる式に、次から次へと溢れ出してくる。思い出したくもないものまで、否応なく。
――リオネル殿下ではなく、あいつの方が死んでいれば良かったんだっ!
深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出し、ルイスは椅子から腰を上げて、執務用にと割り当てられた応接室をひとり抜け出す。
その足で階段を降り裏口から屋敷の外へ出ると、湿った泥の青い臭いが鼻先を掠めた。目の前には、水気を含んだ土で黒茶色に汚れた風景が広がっている。足元にぼたぼたと大きな花を散らした灌木、力なく萎れたラナンキュラス、泥がこびりついて汚れた白亜のオーナメント。水盤の底に沈んだ土のせいで、小ぶりな噴水にたまった水は薄く濁っている。
花好きの夫人が丹精込めて育てたという庭園は、先月の豪雨によって、すっかりかつての美しさを失ってしまっていた。修繕したくとも、まずは領地の復興支援が最優先とあって、庭にはまだ手が入れられないままでいるらしい。昨夜もまた土砂降りの雨が一頻り降り、庭のあちこちに大きな水溜りや泥濘が出来てしまっている。
空を仰ぐと、雲ひとつない快晴だった。昨夜の大雨がまるで嘘のような青空。あたたかい春陽を浴びながら、白鳩が二羽、純白の翼を広げて気持ち良さそうに空中を滑っている。
吹き抜けていく風は、とても心地よい。
乱れた前髪を掻き上げながら、ルイスはもう一度庭園へと、静かに視線を戻す。先月の豪雨がなければ、立派に育った色とりどりの花々が、庭を美しく、鮮やかに彩っていたことだろう。花壇の傍に積もった草混じりの泥の上には、漸く芽吹いたばかりだった蕾たちが、無残にも散らばっている。
そのひとつをそっと指先で摘み上げ、ルイスは眩い青空へと翳す。ほっそりとした形の薄緑色の萼と、淡い桃色をした滑らかな花弁。大きく華やかに花開くことを待ち焦がれていたであろうその蕾にはもう、生気はない。
ふと背後に気配を感じ、ルイスはゆっくりと振り返る。
そこには、久方ぶりに軍服を纏ったモーリスが、分厚い書類の束を脇に抱えて立っていた。左胸につけられた顕聖隊の印が、陽光を浴びてきらりと輝いている。
「こちらにいらしたのですね」
低く落ち着いた声が、春の風に混じって鼓膜を震わせる。端正な顔には、いつもと変わらぬ穏やかな微笑み。左肩に流されたモスグリーンの髪の毛が、ふわりと微かに揺れている。
最近は専ら王太子妃教育に駆り出されているが、彼はれっきとした軍人だ。モーリスの異能は、後方の支援だけでなく、歴史の一頁となるであろう場面の記録に大いに役立つ。
物事を客観的に、正確に書き留めるのは大事なことだ。――たとえそれが、悲惨な出来事であったとしても。
「……すっかり荒れてしまいましたね。以前伺った時には、息を呑むほど見事な庭園だったのですが」
庭を見遣りながら切なげに顔を歪めるモーリスを横目に、ルイスは指先に摘んでいた蕾を、そっと泥の上へ戻す。モーリスの声は穏やかだったが、その響きの奥に、深い憂いが滲んでいた。
「手を入れられるようになるまでには、まだ時間がかかるだろうな」
「ええ……街があの有り様では、当分は難しいでしょう」
被害の報告を受けてすぐの頃から、物資や金の援助は続けている。だが、それでもまだまだ充分とは言い難い。
ここ数日で見て回った被災地の様子は、どこも惨憺たるものだった。物的な損害だけでなく、人的被害も相当に出ている。元の生活を取り戻すまでには、まだ多くの時間を要するだろう。
物資も金も足りなければ、損壊した建物や基盤設備を修復するための人手もまるで足りていない。そんな現状では、周辺地方を治める領主たちの手助けは不可欠だ。彼らを取り持つための場を、早急に設けなければならないだろう。王都から割ける人員や物資にも、限りがあるのだから。
「……兄上だったら、もっと上手く立ち回っていたのだろうな」
自嘲にも似たその呟きに、隣にいたモーリスが、わずかに息を呑む気配がした。
そうと気付いていながら、けれどルイスは取り繕うことはせず、ただ静かに庭を眺め遣る。萎れた花の傍らに佇む大きくて逞しい後ろ姿を、脳裏にそっと思い浮かべながら。
沈黙に包まれた二人の間を、あたたかな春風が穏やかに通り過ぎてゆく。風に揺れる枝葉の音と、遠くで囀る小鳥の鳴き声だけが、静かな庭に微かな彩りを滲ませる。
どちらともなく黙したまま、時がゆるやかに流れていた。爽やかな香りを揺蕩わせながら。
やがてモーリスが、ふと何かを思い出したように目を細め、そっと口を開いた。
「そういえば先ほど、リリア様からのお手紙が届いておりましたよ」
言葉とともに、モーリスは懐から一通の封筒を取り出すと、にこやかに顔を綻ばせながらルイスへ差し出した。
「殿下に直接お渡しするよう、とのことでした」
ルイスは無言のまま手を伸ばし、それを受け取る。
何の変哲もない、淡いラベンダー色の封筒。裏を確かめると、そこにはリリアの署名とともに、王家の紋章を彫り込んだ印璽で封蝋が押されていた。濃紺色のインクと、線の細いやわらかな筆跡。
「急ぎの用か?」
「いえ、そういうわけではないようです。……おそらく、日々ご多忙な殿下を気にかけてのことでしょう」
そんなはずはない、と心の中でだけ否定しながら、ルイスは出立の日に見たリリアの顔を思い浮かべる。
春の陽だまりのような、やさしくあたたかな微笑み。こちらを真っ直ぐに見つめる、澄んだ青色の瞳――。
――過ぎ去ったものを、少しだけ知りたかったのです。
不思議な女だ、と思った。肖像画をいくら眺めたところで、過去に触れることなど出来るはずがないというのに。
それでもそこから何かを感じ取り、過ぎ去ったものを知りたいという彼女の気持ちが、ルイスにはまるで理解できなかった。
過去を知って、何になるというのだろう。
泥のこびりついた噴水の、その中央に静かに佇む天使のオブジェを見るともなく見つめながら、ルイスは思う。疾うになくなったものを探して、それが何になるというのだろう。そこにあるのはただの――。
「お返事を綴られてはいかがですか。きっと、喜ばれると思いますよ」
「馬鹿を言うな。明日にはここを出るんだぞ。手紙より先に俺が着く」
そう言って眉を顰めるルイスを、モーリスはくすりと笑いながら見つめた。
「お二人が少しずつ歩み寄られているようで、とても安心いたしました」
穏やかに目を伏せるモーリスの顔を一瞥し、ルイスはやれやれと肩を竦める。
似たようなことを、セドリックも言っていた。精悍な顔を嬉しそうに綻ばせて。殿下からお声をかけられるなんて、と。リリア様も喜ばれているようでしたよ、とも。そんなセドリックに、こいつの頭の中はいつの間に花畑になったのだろう、と呆れたものだ。
出立の日にリリアへ声をかけたのは、たんに彼女の姿が目についたからだった。偶然視界に入った。ただそれだけのこと。
前夜に見た彼女の微笑みが脳裏を過ぎりはしたけれど、だからといって声をかけたことに特段の意味があったわけではない。
けれど――。片手に握った封筒を見下ろし、ルイスは小さく息をつく。
あの時リリアは、確かに幾分ほっとしているように見えた。謁見の間で初めて相まみえた時の、張り詰めたような雰囲気とはまるで違う、朗らかな空気。彼女の美しい顔には、春陽のようにあたたかく、どこまでもやさしい笑みが浮かんでいた。翳りのない青い瞳で、ルイスの眼を真っ直ぐに見つめながら。
ただの挨拶でしかなかったはずなのに。深い意味のない、ほんのひと言のやり取りにすぎなかったはずなのに。
なのにどうしてあの笑みが、これほどまでに胸の奥に残っているのだろう。
もし――。封筒から目を逸らし、足元に散らばった蕾を見つめながら、ルイスは思う。感傷に浸るつもりなどなかった。それでもふと、ありえたはずの未来が脳裏を掠めてゆく。
同じ“王太子妃”でも、結婚した相手が兄であったなら。
きっとあの女も、幸せになれただろうに――。
不意に遠い記憶が蘇り、ルイスは書類に走らせていたペンをとめる。ざらざらとした、耳障りの悪い声。一度意識で捉えてしまうと、それはますます存在を誇示するように鼓膜の裏側に大きく響き渡る。
――我が身可愛さに、殿下を見殺しにしたのだろうさ。
ことり、と小さな音を立ててペンをデスクの上に置き、ルイスは深く皺の寄った眉間を指先で揉みほぐす。記憶というものは、ひどく厄介だ。まるで芋づる式に、次から次へと溢れ出してくる。思い出したくもないものまで、否応なく。
――リオネル殿下ではなく、あいつの方が死んでいれば良かったんだっ!
深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出し、ルイスは椅子から腰を上げて、執務用にと割り当てられた応接室をひとり抜け出す。
その足で階段を降り裏口から屋敷の外へ出ると、湿った泥の青い臭いが鼻先を掠めた。目の前には、水気を含んだ土で黒茶色に汚れた風景が広がっている。足元にぼたぼたと大きな花を散らした灌木、力なく萎れたラナンキュラス、泥がこびりついて汚れた白亜のオーナメント。水盤の底に沈んだ土のせいで、小ぶりな噴水にたまった水は薄く濁っている。
花好きの夫人が丹精込めて育てたという庭園は、先月の豪雨によって、すっかりかつての美しさを失ってしまっていた。修繕したくとも、まずは領地の復興支援が最優先とあって、庭にはまだ手が入れられないままでいるらしい。昨夜もまた土砂降りの雨が一頻り降り、庭のあちこちに大きな水溜りや泥濘が出来てしまっている。
空を仰ぐと、雲ひとつない快晴だった。昨夜の大雨がまるで嘘のような青空。あたたかい春陽を浴びながら、白鳩が二羽、純白の翼を広げて気持ち良さそうに空中を滑っている。
吹き抜けていく風は、とても心地よい。
乱れた前髪を掻き上げながら、ルイスはもう一度庭園へと、静かに視線を戻す。先月の豪雨がなければ、立派に育った色とりどりの花々が、庭を美しく、鮮やかに彩っていたことだろう。花壇の傍に積もった草混じりの泥の上には、漸く芽吹いたばかりだった蕾たちが、無残にも散らばっている。
そのひとつをそっと指先で摘み上げ、ルイスは眩い青空へと翳す。ほっそりとした形の薄緑色の萼と、淡い桃色をした滑らかな花弁。大きく華やかに花開くことを待ち焦がれていたであろうその蕾にはもう、生気はない。
ふと背後に気配を感じ、ルイスはゆっくりと振り返る。
そこには、久方ぶりに軍服を纏ったモーリスが、分厚い書類の束を脇に抱えて立っていた。左胸につけられた顕聖隊の印が、陽光を浴びてきらりと輝いている。
「こちらにいらしたのですね」
低く落ち着いた声が、春の風に混じって鼓膜を震わせる。端正な顔には、いつもと変わらぬ穏やかな微笑み。左肩に流されたモスグリーンの髪の毛が、ふわりと微かに揺れている。
最近は専ら王太子妃教育に駆り出されているが、彼はれっきとした軍人だ。モーリスの異能は、後方の支援だけでなく、歴史の一頁となるであろう場面の記録に大いに役立つ。
物事を客観的に、正確に書き留めるのは大事なことだ。――たとえそれが、悲惨な出来事であったとしても。
「……すっかり荒れてしまいましたね。以前伺った時には、息を呑むほど見事な庭園だったのですが」
庭を見遣りながら切なげに顔を歪めるモーリスを横目に、ルイスは指先に摘んでいた蕾を、そっと泥の上へ戻す。モーリスの声は穏やかだったが、その響きの奥に、深い憂いが滲んでいた。
「手を入れられるようになるまでには、まだ時間がかかるだろうな」
「ええ……街があの有り様では、当分は難しいでしょう」
被害の報告を受けてすぐの頃から、物資や金の援助は続けている。だが、それでもまだまだ充分とは言い難い。
ここ数日で見て回った被災地の様子は、どこも惨憺たるものだった。物的な損害だけでなく、人的被害も相当に出ている。元の生活を取り戻すまでには、まだ多くの時間を要するだろう。
物資も金も足りなければ、損壊した建物や基盤設備を修復するための人手もまるで足りていない。そんな現状では、周辺地方を治める領主たちの手助けは不可欠だ。彼らを取り持つための場を、早急に設けなければならないだろう。王都から割ける人員や物資にも、限りがあるのだから。
「……兄上だったら、もっと上手く立ち回っていたのだろうな」
自嘲にも似たその呟きに、隣にいたモーリスが、わずかに息を呑む気配がした。
そうと気付いていながら、けれどルイスは取り繕うことはせず、ただ静かに庭を眺め遣る。萎れた花の傍らに佇む大きくて逞しい後ろ姿を、脳裏にそっと思い浮かべながら。
沈黙に包まれた二人の間を、あたたかな春風が穏やかに通り過ぎてゆく。風に揺れる枝葉の音と、遠くで囀る小鳥の鳴き声だけが、静かな庭に微かな彩りを滲ませる。
どちらともなく黙したまま、時がゆるやかに流れていた。爽やかな香りを揺蕩わせながら。
やがてモーリスが、ふと何かを思い出したように目を細め、そっと口を開いた。
「そういえば先ほど、リリア様からのお手紙が届いておりましたよ」
言葉とともに、モーリスは懐から一通の封筒を取り出すと、にこやかに顔を綻ばせながらルイスへ差し出した。
「殿下に直接お渡しするよう、とのことでした」
ルイスは無言のまま手を伸ばし、それを受け取る。
何の変哲もない、淡いラベンダー色の封筒。裏を確かめると、そこにはリリアの署名とともに、王家の紋章を彫り込んだ印璽で封蝋が押されていた。濃紺色のインクと、線の細いやわらかな筆跡。
「急ぎの用か?」
「いえ、そういうわけではないようです。……おそらく、日々ご多忙な殿下を気にかけてのことでしょう」
そんなはずはない、と心の中でだけ否定しながら、ルイスは出立の日に見たリリアの顔を思い浮かべる。
春の陽だまりのような、やさしくあたたかな微笑み。こちらを真っ直ぐに見つめる、澄んだ青色の瞳――。
――過ぎ去ったものを、少しだけ知りたかったのです。
不思議な女だ、と思った。肖像画をいくら眺めたところで、過去に触れることなど出来るはずがないというのに。
それでもそこから何かを感じ取り、過ぎ去ったものを知りたいという彼女の気持ちが、ルイスにはまるで理解できなかった。
過去を知って、何になるというのだろう。
泥のこびりついた噴水の、その中央に静かに佇む天使のオブジェを見るともなく見つめながら、ルイスは思う。疾うになくなったものを探して、それが何になるというのだろう。そこにあるのはただの――。
「お返事を綴られてはいかがですか。きっと、喜ばれると思いますよ」
「馬鹿を言うな。明日にはここを出るんだぞ。手紙より先に俺が着く」
そう言って眉を顰めるルイスを、モーリスはくすりと笑いながら見つめた。
「お二人が少しずつ歩み寄られているようで、とても安心いたしました」
穏やかに目を伏せるモーリスの顔を一瞥し、ルイスはやれやれと肩を竦める。
似たようなことを、セドリックも言っていた。精悍な顔を嬉しそうに綻ばせて。殿下からお声をかけられるなんて、と。リリア様も喜ばれているようでしたよ、とも。そんなセドリックに、こいつの頭の中はいつの間に花畑になったのだろう、と呆れたものだ。
出立の日にリリアへ声をかけたのは、たんに彼女の姿が目についたからだった。偶然視界に入った。ただそれだけのこと。
前夜に見た彼女の微笑みが脳裏を過ぎりはしたけれど、だからといって声をかけたことに特段の意味があったわけではない。
けれど――。片手に握った封筒を見下ろし、ルイスは小さく息をつく。
あの時リリアは、確かに幾分ほっとしているように見えた。謁見の間で初めて相まみえた時の、張り詰めたような雰囲気とはまるで違う、朗らかな空気。彼女の美しい顔には、春陽のようにあたたかく、どこまでもやさしい笑みが浮かんでいた。翳りのない青い瞳で、ルイスの眼を真っ直ぐに見つめながら。
ただの挨拶でしかなかったはずなのに。深い意味のない、ほんのひと言のやり取りにすぎなかったはずなのに。
なのにどうしてあの笑みが、これほどまでに胸の奥に残っているのだろう。
もし――。封筒から目を逸らし、足元に散らばった蕾を見つめながら、ルイスは思う。感傷に浸るつもりなどなかった。それでもふと、ありえたはずの未来が脳裏を掠めてゆく。
同じ“王太子妃”でも、結婚した相手が兄であったなら。
きっとあの女も、幸せになれただろうに――。
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