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第6章 誰ガ為ニ
76 母のありがたみ
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「おっかえり~アリスちゃーん! ご飯にする? お風呂にする? それともぉ~お・か・あ・さ・ん?」
家に着いて玄関を潜るなり、お母さんがリビングから飛び出てきた。
帰りが遅くなったことを咎めるそぶりも見せず、いつもと変わらないハイテンションで出迎えてくれた。
両手を広げてニコニコと笑うお母さんを見た瞬間、今日あったことへの緊張や不安がぶわっと解けた。
全てを放り出して何もかもを委ねたい気持ちに駆られて、私は靴を脱ぎ散らかしてお母さんに飛びついた。
「お母さんにする……!」
「あはは~素直な子は好きだよぉ」
子供のようにお母さんの胸に飛び込んで、力の限り抱きついた。
お母さんはそんな私を笑うことなく、ふんわりと優しく、でも目一杯力強く抱きしめてくれた。
冷えていた体も凝り固まっていた心も、お母さんに抱きしめられることであっという間に温かく緩む。
じんわりと心が満たされて、安心感が私を包んだ。
きっと、この世で母の腕の中ほど安心できるものなんてない。
今の私はそう思わずにはいられなかった。
私を巡る様々な非現実的トラブルも、命を狙われている恐怖も、沢山の悩みだって。
何も解決はしていないけれど、でもただこうしているだけでとっても心穏やかになるんだから。
「よしよし。大丈夫、アリスちゃんは頑張ってるよ。お母さんはちゃーんと知ってるからね」
強く強く私を抱き締めながら、お母さんはとっても優しい声で言った。
お母さんの柔らかさに抱かれて、ふんわりと良い匂いに包まれて、優しい声に和まされる。
改めて、お母さんのことが大好きだって、そんな気持ちでいっぱいになった。
しばらくそうやって抱きついていて、それから一緒に晩ご飯を食べた。
帰ってくるなり甘えまくった私に、お母さんは特に何も聞いてはこない。
普通に取り留めのないお喋りをしながら、思えば久しぶりの二人での食事を楽しんだ。
お母さんが作ってくれたホワイトシチューは、じゃがいもがいい感じにとろけていてとても美味しかった。
温かいシチューをお腹いっぱい食べたことで、物理的にとても温まって、私はそこでやっと一息ついた。
そんな私をお母さんはニコニコと眺めていて、ちょっとだけ気恥ずかしかったけれど、でもなんだか嬉しかった。
「ねぇねぇアリスちゃん! お母さんと一緒にお風呂に入ろうよ!」
「お、お風呂!?」
私が晩ご飯の片付けをしている間にお風呂の準備をしていたお母さんが、元気いっぱいに台所に飛び込んできた。
予想だにしていなかった申し出に戸惑っている私の腰にしがみついて、甘い猫撫で声をあげる。
「そうそうお風呂っ。お母さん、アリスちゃんと一緒に入りたいなぁ~」
「一緒って……もう子供じゃないんだからぁ」
私のお腹に顔をすりすりしながら、まるで犬がしっぽを振るようにお尻をくねくね振るお母さん。
そんなアホっぽい姿を見せられると、どっちが子供なんだかと思ってしまう。
思えば、最後にお母さんと一緒にお風呂に入ったのはいつだったかなぁ。
高校生になってからは、お母さんが長期出張に出かけるようになったのもあって、入ってない。というかそもそもこの歳で普通は入らない。
中学生……いや、小学生の高学年くらいまでだったかなぁ。
基本的に一人で入るようになったのは低学年の頃だったと思うけど、よくお母さんは浴室に乱入してきたからなぁ。
具体的にいつだったか、記憶は割と曖昧だ。
「いいじゃんいいじゃん! 別にお母さんと一緒にお風呂に入るのは何才まで、なんて決まりはないでしょ? それにお母さんにとっては、アリスちゃんいつまでも可愛い子供なんだよぉ~!」
「んもう!」
ぎゅうぎゅうとお腹に頭を押し付けてくるお母さん。
そんなに私と一緒に入りたいとか、これじゃあ本当にどっちが子供かわかったものじゃない。
家のお風呂でお母さんと一緒にお風呂に入るのは、少し恥ずかしくもあるけれど。
でもあえて拒む理由もないし、ここは一緒に入ってあげようかな。
そう思って小さく溜息をついた時だった。
徐ろに私の腰から腕を放したお母さんは、体を起こすと私の脇腹辺りにそっと手を添えてきた。
「そ・れ・に~。可愛い娘の発育を、お母さんとしてちゃーんとチェックしておきたいしね」
そう言うが早いか、指が脇腹からすうっと私の体を這い上がって、私の両胸を下からふわんと跳ね上げた。
「────ちょ、ちょっと何すんの!?」
「いやぁ~楽しみだなぁ~」
慌てて体を離して胸を腕で覆いながら叫ぶ私に、お母さんは悪戯っぽく笑った。
パチリとウィンクをしてペロリと舌を出す。とてもアラフォーの大人がやることとは思えない。色々と。
「じゃあお母さん先行ってるね~」
「あ! ちょっと!」
私が文句を続ける前に、お母さんはひょいと身を翻した。
ニコニコと楽しそうに笑いながら、ひらひら手を振って浴室まで足を進める。
私、一緒に入るとはまだ言ってないのに。
自由気ままに奔放に、お母さんは昔から変わらず自分のペースだ。
でも、それを嫌だとか悪いとか思ったことはない。
お母さんがそうやっていつも楽しく伸び伸びと振舞ってくれるから、私もつられて笑顔になってしまうんだ。
お母さんのそんな無邪気さや自由さの恩恵を、私は沢山受けている。
私に寂しい思いをさせないように、自分が甘えることで私を満たそうとしてくれているんだ。
それがわかってしまうから、ちょっとした無茶振りや気恥ずかしさがあっても、付き合ってあげようって気になってしまう。
まったくもぅと溜息をつきつつ、私は手早く残りの片付けを済ませた。
あまり待たせるのもよくないと、着替えを取りに二階の自室に向かった時だった。
下からお母さんの、びっくりするような大きな声が響いた。
「アリスちゃんの着替えのパンツとブラジャー、もう持ってきてあるよー! お母さん好みのねぇ、白い清純派なやつー!」
「ちょっと、もうやめてよーーーー!!!」
良いところ、大好きなところ、感謝してるところは沢山あるけれど。
でも、素でこういうところがあるから、参ってしまう部分もあるんだよなぁ。
家に着いて玄関を潜るなり、お母さんがリビングから飛び出てきた。
帰りが遅くなったことを咎めるそぶりも見せず、いつもと変わらないハイテンションで出迎えてくれた。
両手を広げてニコニコと笑うお母さんを見た瞬間、今日あったことへの緊張や不安がぶわっと解けた。
全てを放り出して何もかもを委ねたい気持ちに駆られて、私は靴を脱ぎ散らかしてお母さんに飛びついた。
「お母さんにする……!」
「あはは~素直な子は好きだよぉ」
子供のようにお母さんの胸に飛び込んで、力の限り抱きついた。
お母さんはそんな私を笑うことなく、ふんわりと優しく、でも目一杯力強く抱きしめてくれた。
冷えていた体も凝り固まっていた心も、お母さんに抱きしめられることであっという間に温かく緩む。
じんわりと心が満たされて、安心感が私を包んだ。
きっと、この世で母の腕の中ほど安心できるものなんてない。
今の私はそう思わずにはいられなかった。
私を巡る様々な非現実的トラブルも、命を狙われている恐怖も、沢山の悩みだって。
何も解決はしていないけれど、でもただこうしているだけでとっても心穏やかになるんだから。
「よしよし。大丈夫、アリスちゃんは頑張ってるよ。お母さんはちゃーんと知ってるからね」
強く強く私を抱き締めながら、お母さんはとっても優しい声で言った。
お母さんの柔らかさに抱かれて、ふんわりと良い匂いに包まれて、優しい声に和まされる。
改めて、お母さんのことが大好きだって、そんな気持ちでいっぱいになった。
しばらくそうやって抱きついていて、それから一緒に晩ご飯を食べた。
帰ってくるなり甘えまくった私に、お母さんは特に何も聞いてはこない。
普通に取り留めのないお喋りをしながら、思えば久しぶりの二人での食事を楽しんだ。
お母さんが作ってくれたホワイトシチューは、じゃがいもがいい感じにとろけていてとても美味しかった。
温かいシチューをお腹いっぱい食べたことで、物理的にとても温まって、私はそこでやっと一息ついた。
そんな私をお母さんはニコニコと眺めていて、ちょっとだけ気恥ずかしかったけれど、でもなんだか嬉しかった。
「ねぇねぇアリスちゃん! お母さんと一緒にお風呂に入ろうよ!」
「お、お風呂!?」
私が晩ご飯の片付けをしている間にお風呂の準備をしていたお母さんが、元気いっぱいに台所に飛び込んできた。
予想だにしていなかった申し出に戸惑っている私の腰にしがみついて、甘い猫撫で声をあげる。
「そうそうお風呂っ。お母さん、アリスちゃんと一緒に入りたいなぁ~」
「一緒って……もう子供じゃないんだからぁ」
私のお腹に顔をすりすりしながら、まるで犬がしっぽを振るようにお尻をくねくね振るお母さん。
そんなアホっぽい姿を見せられると、どっちが子供なんだかと思ってしまう。
思えば、最後にお母さんと一緒にお風呂に入ったのはいつだったかなぁ。
高校生になってからは、お母さんが長期出張に出かけるようになったのもあって、入ってない。というかそもそもこの歳で普通は入らない。
中学生……いや、小学生の高学年くらいまでだったかなぁ。
基本的に一人で入るようになったのは低学年の頃だったと思うけど、よくお母さんは浴室に乱入してきたからなぁ。
具体的にいつだったか、記憶は割と曖昧だ。
「いいじゃんいいじゃん! 別にお母さんと一緒にお風呂に入るのは何才まで、なんて決まりはないでしょ? それにお母さんにとっては、アリスちゃんいつまでも可愛い子供なんだよぉ~!」
「んもう!」
ぎゅうぎゅうとお腹に頭を押し付けてくるお母さん。
そんなに私と一緒に入りたいとか、これじゃあ本当にどっちが子供かわかったものじゃない。
家のお風呂でお母さんと一緒にお風呂に入るのは、少し恥ずかしくもあるけれど。
でもあえて拒む理由もないし、ここは一緒に入ってあげようかな。
そう思って小さく溜息をついた時だった。
徐ろに私の腰から腕を放したお母さんは、体を起こすと私の脇腹辺りにそっと手を添えてきた。
「そ・れ・に~。可愛い娘の発育を、お母さんとしてちゃーんとチェックしておきたいしね」
そう言うが早いか、指が脇腹からすうっと私の体を這い上がって、私の両胸を下からふわんと跳ね上げた。
「────ちょ、ちょっと何すんの!?」
「いやぁ~楽しみだなぁ~」
慌てて体を離して胸を腕で覆いながら叫ぶ私に、お母さんは悪戯っぽく笑った。
パチリとウィンクをしてペロリと舌を出す。とてもアラフォーの大人がやることとは思えない。色々と。
「じゃあお母さん先行ってるね~」
「あ! ちょっと!」
私が文句を続ける前に、お母さんはひょいと身を翻した。
ニコニコと楽しそうに笑いながら、ひらひら手を振って浴室まで足を進める。
私、一緒に入るとはまだ言ってないのに。
自由気ままに奔放に、お母さんは昔から変わらず自分のペースだ。
でも、それを嫌だとか悪いとか思ったことはない。
お母さんがそうやっていつも楽しく伸び伸びと振舞ってくれるから、私もつられて笑顔になってしまうんだ。
お母さんのそんな無邪気さや自由さの恩恵を、私は沢山受けている。
私に寂しい思いをさせないように、自分が甘えることで私を満たそうとしてくれているんだ。
それがわかってしまうから、ちょっとした無茶振りや気恥ずかしさがあっても、付き合ってあげようって気になってしまう。
まったくもぅと溜息をつきつつ、私は手早く残りの片付けを済ませた。
あまり待たせるのもよくないと、着替えを取りに二階の自室に向かった時だった。
下からお母さんの、びっくりするような大きな声が響いた。
「アリスちゃんの着替えのパンツとブラジャー、もう持ってきてあるよー! お母さん好みのねぇ、白い清純派なやつー!」
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