普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

文字の大きさ
405 / 984
第6章 誰ガ為ニ

89 恋話

しおりを挟む
「まさか本当に何にもないなんて……つまんないわねぇ」

 結局私は、千鳥ちゃんと氷室さんに引きずられて近くのチェーン店の喫茶店に連行された。
 そして二人は、目立たないようにするためか隅の方の席に私を連れ込んだ。

 四人がけのテーブル席の、ソファータイプの横長椅子の奥に私を押し込んで、その隣を氷室さん、正面を千鳥ちゃんに押さえられる。
 おまけに話が聞こえないようにする魔法をかけるという徹底ぶりだった。

 そこまでしてするのが恋話────ではないんだけど────なんだから、まぁ平和といえば平和でいいんだけれど。
 思った成果をあげられなかった千鳥ちゃんは、不満たらたらでガムシロたっぷりのアイスティーを啜っていた。

「アンタさぁ、年頃なんだから浮いた話の一つや二つあってもいいんじゃないの?」
「そんなこと言われてもないものはないよ。じゃあ聞くけどさ、千鳥ちゃんはそこんとこどうなの? 私たちよりお姉さんな千鳥ちゃんは、そういう話あるわけ?」
「うっ……」

 まったくもうと溜息をつく千鳥ちゃんにちょっとムッとした私は、『お姉さん』の部分を強調して嫌味ったらしく返した。
 案の定ゲッという顔をした千鳥ちゃんは、あからさまに私から視線を外した。

 それでもジトッと視線を投げつけていると、慌てた千鳥ちゃんはキッを眉を釣り上げた。

「う、うるさいわね! 何にもないわよ! 文句ある!? こちとらそんな余裕ないもの!」
「うわ、逆ギレだ! それにズルい!」

 完全に開き直った千鳥ちゃんは、ピーキーとヒステリック気味な声を上げて勢いで誤魔化そうとしていた。
 もう少し意地悪してあげてもいいんだけど、私も自分のことを掘り返されると面倒だから、今回は深追いをしないことにする。

「…………」

 キャンキャン吠える千鳥ちゃんの声を聞き流しながら隣を見ると、氷室さんは静かに紅茶を飲んでいた。
 最初こそ千鳥ちゃんと一緒になって無言の圧力をかけてきたけれど、創とはなんでもないということがわかってからはとても落ち着いている。

 氷室さんもやっぱり年頃の女の子だし、そういった色恋には興味があるのかな?
 それとも、私に腕を組むような人がいることに、ちょっぴり嫉妬をしてくれていた、とか?
 昨日のことを考えると案外後者かもしれない。

 氷室さんには見かけの大人しさによらず、独占欲というか、ちょっと拗ねるところがあるのは昨日わかったこと。
 ああいう風な気を許した仲の良さに、思うところあったのかもしれない。

 そう考えると、平然とした顔で我関せずと紅茶を啜っているこの友達が、たまらなく可愛く見えてしまった。

「…………?」

 そう思って横顔を見ていたら、視線に気がついた氷室さんがゆっくりと首を傾げた。
 さっきまでの圧力は綺麗さっぱり無くなっていて、いつも通りの穏やかで静かな氷室さんだ。

 そんな彼女を見ていると心安らかになるなぁと思って、私は「なんでもないよ」と笑って腕を絡めた。
 氷室さんは少しだけ驚いたようにミリ単位で目を見開いてから、またほんの少しだけ嬉しそうに口の端を緩めた。

「まったく、霰はアリスに甘いわねぇ」

 喚くのに疲れたのか、千鳥ちゃんは今度は呆れたような溜息をついていた。
 やれやれと、なんだか年上のお姉さんを気取って肩をすくめている。
 その余裕あります感がちょっと鼻についたけれど、まぁ実際一つ上のお姉さんではあるから、そこについては突っ込まないであげた。

「……そうだ。そろそろ本題の話をしないとだよ」

 ポツリポツリと取り留めのない話をした後、私がそう切り出した。
 平和な何でもないお喋りは勿論いいし楽しいけれど、私たちには今日集まった意味がある。

 喫茶店に腰を落ち着けたのも、隅の席に陣取ったのも、魔法で話を聞こえないようにしたのも、本来はその本題のためなんだから。
 まぁ、話がそれるような、二人が気になる話題を持ち込んでしまった私が言うのもなんなんだけれど。

 けれど私がそう促すと、二人とも頷いて顔を引き締めた。

「そうね。アリスが男連れで来るからすっかり話が逸れてたけど」
「だからぁ、その話はもう終わったでしょ!?」

 せっかく空気を引き締めたのに、そうやって軽口を挟む千鳥ちゃん。
 私が声を上げると、ニヤリとからかうように笑った。

「じょーだんよ。ほら、そんな不貞腐れた顔しないの────ちょっと霰、アンタまで不機嫌になんないでよ。ねぇ、ごめんって」

 私のことをイジったかと思えば、千鳥ちゃんはオロオロと氷室さんにペコペコした。
 隣を見てみれば、表情こそ変わらぬポーカーフェイスだけれど、醸し出す空気がまたさっきみたいに重苦しかった。

 千鳥ちゃんに向ける視線がどこか冷たいように見えた。
 まるで視線で凍てつかせてしまいそうなほどに。

 予想外の方向からの批判を受けた千鳥ちゃんは、オロオロへこへこしていて、その覇気のなさがなんだか可愛らしかった。
 元来の、小柄でちょこちょことしたところも合わさって、か弱い小動物を彷彿とさせる。

 氷の彫像のように冷たい視線を静かに投げつけている氷室さんと、小さくなって困り果てている千鳥ちゃん。
 側から見ると微笑ましい光景というか、普通の友達同士のちょっとしたやり取りといった感じ。

 これが平和だよなぁなんて思いつつ、でもあんまり続いても可哀想だし、私はまぁまぁと二人を制しに入ることにした。

 氷室さんは組んだ腕をきゅっとして、身を寄せたらすぐに機嫌を直してくれて。
 そんな彼女を見て千鳥ちゃんはホッと安堵の息を吐いて、ようやく真面目な話ができる空気になってきたのでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...