推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

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「ネヴィル…。本当にシルヴェスターの色が似合わないね。」


今度こそ。というか、テオ様がシルヴェスターの代替わりパーティで前回のパーティみたいに黒歴史は作れないって言ってネヴィルと僕とテオ様、あと義母様を連れてブティックに来てる。

義母様はあれでも審美眼があるからね。連れてきて損は無い。その代わり新しいドレスと宝石を買ってあげる約束してる。

父様?さぁ。朝一で出かけたってアルから聞いただけ。いないなら呼べないし。どこいったんだか。


「1人青基調にするのはいけないの?」

「シルヴェスターの色……魔法は闇魔法で黒ですからね。」

正直基調を紺にだってしたくない。
紺も黒も同じくらい似合わなかったから黒に決まった。

「クラウス様、よろしければ前公爵夫人のドレスの下書きがありますが、いかが致しましょう。」

「気が利くね。」

それいいね。母様も優しげな髪色と穏やかな綺麗めな顔つきだったから。
僕は母様似だけど髪色が黒だからシルヴェスターの服は結構似合う。


母様は薄い黒いドレスにふんだんな濃い緑のレースや刺繍を使ってる。髪色と顔立ちはどうにもなんないから優しい感じだけど髪は結い上げて髪飾りで優しい髪色を隠してる。

とは言っても、似合ってると言える程じゃない。もっと合う色はあるだろうね。って感じの似合い具合。

「ネヴィルの髪と同じ色で刺繍。宝石は濃いけど黒と違う色合いの青を使いましょう。」

「サファイアとかですか?」

「濃いめのね。」

義母様はパッパと指示を出す。本当にオシャレとか装飾品が好きなんだなって感心する。その鑑定眼使えば一儲けできるだろうに。そういった商売には興味なくて自分を着飾らせるためだけに使われてる。勿体ないね。

この店の店長に「持ってきて。」と命令すれば中に消えてった店員。早くね~。


「髪飾りつけるわよ。濃い青の宝石をシルバーの金具で止めたものを。オールバックは似合わないから、その髪留めで耳にかける感じに。」

義母様にスイッチが入ったらしい。
オールバックが似合わないのは肯定するよ。
うん。似合わないね。

「髪巻く?」

「柔らかさが増しませんか?」

それは一理ある。テオ様はただ見てただけじゃなかったんだね。興味無いのかと思ってた。


「そっち方面目指たら良いのでは?父様以外雰囲気の柔らかい人いませんし。」

「え?僕は?」

僕も顔は柔らかい雰囲気だと思う。

「そうね。髪を巻いてちょうだい。」

無視ですか。
髪をうねうねにされた顔が死んでるネヴィル。何度も着せ替えられたらそんな顔にもなるか。

ただ…チャラいな。笑ってウインクとかしたらゲームの攻略キャラみたいになりそう。優しげな雰囲気は消え去ってる。優しいとチャラいって紙一重なのかな。

「チャラくない?」
「優しさの欠片もありませんね。」
「さっきよりはマシよ。」

それはそう。まだマシって感じ。

「改善点ありますか?」

「これで限界ね。」

「ネヴィル、ポーカーフェイスして。」

ピクピクと口角が揺れる歪な笑い方。ダメだな。
もう限界かも。

「うーん。はぁ。これでいいか。」

ネヴィルの顔も死んでるし。仕方ない。ルディの誕生祭よりはマシだ。

「母様のドレスの下書きと一緒にその服たちを屋敷に送って。」

はぁ。あとは宝石店でネヴィルと義母様の装飾品を買うだけか。

「その生地と刺繍糸のサンプルは持ち帰るから別にしてね。」

はぁ。疲れた。
僕よりネヴィルはもっと疲れてるだろうけど。ずっと着せ替え人形してたもんね。義母様のドレスが決まるまで座っててね。

「テオもなにか買う?」

「装飾品は興味があるので今は結構です。」

「そう?帰りはテオのカフェにでも寄ろうか。」

ぱぁっとネヴィルの顔が生き返った。死人みたいな顔してたのにな。そんなにお菓子が嬉しいかな。

これからはもっと甘いお菓子を出してあげようね。

手を挙げて付き添いのアルフレートを呼ぶ。

「テオのカフェに行ってワンピースづつケーキ取っておくように言っておいて。」

「かしこまりました。」

ほんとアルフレート連れてきてよかった。
もちろんネヴィルの付き添いの獣人のラージャも来てるよ。人間に見えるようにしてるから入れるんだよ。さすが僕の錬金魔具。
ただ1人で行動させるのは少し心配だからあまり外に出さない。でもネヴィルの従者になるならこういう経験も必要になる。仕方ない。





試着室から出てきた義母様は珍しく淡い色。淡い青のドレスだ。
にっあわないな。ネヴィルの逆バージョンじゃん。真っ赤な髪とキツい美人が淡い色に合わない。

「それにしますか?」

「どう思う?」

どう答えても文句言われそう。義母様だ。似合わないってことも理解した上で着てるんだろう。
テオ様に任せようかな。目線で任せたらスっと貫くような視線を自分の母親に向けた。

「母上が気に入ったのならそれでいいと思います。」

僕は似合うねって言って欲しいけどな。

「クラウスは?」

「普段着なら問題ないかと。」

「似合わないわよね。」

わかってるなら聞かないで欲しい。

「宝石で誤魔化しますか?」

「いらない。ねぇ、黒と赤以外で私に似合う色ない?」

自分で決めてよ。何言っても文句言われそう。

「はっきりした色だと思いますよ。」

「紫はいかがですか?」

…ありだな。
テオ様の美的感覚は母譲りなのかも。さすがテオ様、天才的。

「いいと思うよ。さすがだね、テオ。」


現代なら義母様はスリット入りタイトドレスとかも似合いそう。態度からして女王様だからね。

いっそのこと義母様モデルにして新しいブランド開くか?





…いや。見世物じゃないって怒り狂いそうだからやめとこ。







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