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3章 バーンデッドディザスター
461話 ラグナとシモンの逃避旅①
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(ラグナ視点)
空は真っ白な曇り空、冷たい風が吹き荒む山道の街道をゆっくりと進む行商の馬車の中で毛布にくるまっている。
聖都にてこの国の最高位の権力者である枢機卿を1人殺害したとして指名手配された俺とシモンさんは素性を隠し魔王領へと逃れる旅を続けていた。
前世の時代なら一瞬で顔などが広まるだろうが、今オレが生きるこの時代は前世の記憶での中世然とした文化水準なので、情報の広がりはとても遅い。
勇者ラグナという存在はグラスマルク国内ではそこそこ知られた存在ではあるものの顔まで知っているとなると全然いないというのが現状。指名手配の情報が伝わっていたとしても顔でバレるという事は少ない。
そんなわけで今のところは順調に進めている。
今の世界は旅人は珍しくはない。
金があればちゃんとした乗合馬車などを使って移動し、そうでないなら徒歩や他の馬車と交渉して乗せてもらうというのはよく行われることだ。
オレたちも一応装備も充実して魔法も多彩な2人組ということもあり行商の護衛としてすんなりと馬車を利用できている。
「いてて・・・」
オレの向かい側で狭いスペースに収まって横になっていたシモンさんが顔を顰めながら起き上がった。
「大丈夫ですか?」
「傷の方はねー。でも体ガチガチだよ」
「頑張りましょう」
それ以外言えない。
今の馬車はサスペンションなどもなく振動が直に伝わってくる最悪な乗り心地だ。クッションなどで多少軽減できてもだいぶ辛い。
シモンさんはこれまでスキルを使いまくって移動を高速にしていたこともあり馬車移動というのはもう相当経験してなかったそうでとてもしんどそうだが助けてあげられない。
シモンさんは聖都でスキル封印の罠にかかってしまい、せっかくあった多彩な能力は使えなくなってしまっている。
そんな状態でも魔法や氣の扱いはそこらへんのワーカーをはるかに凌駕してる使い手ではあるのだが、本人はスキルがある状態で2千年以上生きているので今の感覚に全然慣れないそうだ。
オレも子供の頃に授かったスキルありきで生きてきたのでスキルを封じられると何もできなくなりそうで怖い。
「シモンさん、聞きたかったんですが、スキルってなんなんですか?」
スキルについてはかねてよりずっと疑問に思ってきた事がある。
まずオレにしか見えていないスキルの詳細表示なのだが、ここに書かれている文字は日本語だ。
これについては俺は異世界に来たと思っていたが、実は一度死んで遙か未来に記憶を持って生まれ変わっただけということが判明している。
でも前世のオレが生きていた時代ではスキルなんてなかったから、オレが死んで以降の技術なわけで、長い年月により分からなくなっている。
スキルについては研究はされてはいるものの詳細は全く明らかになっていない。
でも前文明の頃から生きているシモンさんならスキルが生まれてた時代からこれまでを見てきているはずだ。きっと誰よりも詳しいはず。
「そうだねー。ラグナくんには色々と話していてもいいかもね。じゃあスキルについて話そうか」
「お願いします」
シモンさんは起き上がりゆっくり伸びをするとスキルについて語り始めた。
「まずはスキルが生まれるに至る経緯からかな」
「え、そこから!?」
「だって、そうしないと暇つぶしにならないじゃん」
「まあ、確かに?」
ちょっと思っていたことと違うところから話が始まるが、確かに馬車移動は暇だ。
シモンさんの話に付き合って色々聞いてみるほうが良いだろう。
シモンさんはゆったりとした口調で語り出した。
内容は過去文明の人が魔法に気づいた場面から始まった。
魔法を発動させるための魔力が地上に現れた正確な時期はよくわかっていないそうだ。でも科学では説明がつかない現象が確認され出し、最初はフェイク動画だろうと思われていたものが徐々に信憑性を増し始め、人々が検証しだし、実際に再現例も現れた事で魔法の存在が確実になったという。
しかし実際に魔法を発動できた人間はごくごく少数だったらしい。
魔法のない時代に生まれた人々はそもそも適正が高くなく、魔力もかなり乏しかった事が原因だそうだ。
それでもその当時の人々は魔法を諦めなかった。
地道な研究のなかで、魔法の適正が低いものたちでも人数を集めて一つの儀式を行えば魔法を再現できる事がわかった。イメージや魔力を数でカバーした結果だ。
スキル。正確にはスキルシステムという巨大魔法の前身は多言語理解の魔法だったそうだ。
人が大勢集まって人々の言語の理解力を共有しあう魔法を発動した事で、集まった人々はそれぞれ魔法で繋がり知らない言語同士の会話でも何も違和感もなく話す事ができたそうだ。
つまり人同士の知識や思考を繋ぎ合わせた巨大なネットワークのような魔法を作ればその中で人々は魔法に至るイメージなどを繋がった人々で補完しあって1人でも魔法を行使できるようになる。それがスキルシステムという魔法のざっくりとした仕組み。
当時あったインターネット上に集まった魔法研究者たちにより多言語理解魔法を拡張したスキルシステム理論が作られ、まずは人々への認知がすすめられ、世界中の人々に広く考えが伝わった時からスキルシステムの発動実験が世界各地で試され始めた結果、地球規模の魔法となりスキルシステムが完成したという。
その後スキルシステムの機能が整備されて、今のようなスキルが自動的に身につくものに変わっていったのだという。
時期的には前世のオレが死んで10年後ぐらい。
「スキルシステムが発動した日はね、世界中から言語の壁がなくなった日でもあるんだよ。みんなそれぞれの言葉を喋っていても意味が相手に伝わるようになったんだ。一つ文字の知識があれば他の文字も読めちゃう。それは今でも一緒で、ラグナくんと僕とじゃ話してる言葉って違うんだよ。でもそれに気がつかないレベルで理解力できちゃう」
「ええ!そうなんですか」
「便利なもんだよねー」
シモンさんにそう言われたもののシモンさんの言葉はオレが知っているもののように聞こえるし本当に違和感がない。
「でもシモンさんスキル封じられてるし、スキルを身につけていない人もいるじゃないですか」
「スキルが使えるかどうかは本人の状態次第だけど、スキルシステムには全人類つながってはいるんだよ。そして言語理解と免疫力の自動アップデートはスキルを使えなくても基本機能として授かってる」
「免疫も!凄い!」
確かに生まれてこの方オレは病気に罹ったことはなかった。ずっと一緒にいるザーグもそうだ。
思い返せば流行病というのはあれど大流行しているという話は聞いた事がない。それも免疫アップデート機能の賜物なのだろう。
「未知の病気に罹って死ぬとかはあり得るけどね。そうなって死んだ人の魂をスキルシステムが回収して病気を解析してから人々の免疫に反映してるんだよ」
「へー」と頷きつつもまた魂がどうたらと知らない事が出てきた。
まだまだ旅はつづくからゆっくりといろんな事を聞いていこう。
空は真っ白な曇り空、冷たい風が吹き荒む山道の街道をゆっくりと進む行商の馬車の中で毛布にくるまっている。
聖都にてこの国の最高位の権力者である枢機卿を1人殺害したとして指名手配された俺とシモンさんは素性を隠し魔王領へと逃れる旅を続けていた。
前世の時代なら一瞬で顔などが広まるだろうが、今オレが生きるこの時代は前世の記憶での中世然とした文化水準なので、情報の広がりはとても遅い。
勇者ラグナという存在はグラスマルク国内ではそこそこ知られた存在ではあるものの顔まで知っているとなると全然いないというのが現状。指名手配の情報が伝わっていたとしても顔でバレるという事は少ない。
そんなわけで今のところは順調に進めている。
今の世界は旅人は珍しくはない。
金があればちゃんとした乗合馬車などを使って移動し、そうでないなら徒歩や他の馬車と交渉して乗せてもらうというのはよく行われることだ。
オレたちも一応装備も充実して魔法も多彩な2人組ということもあり行商の護衛としてすんなりと馬車を利用できている。
「いてて・・・」
オレの向かい側で狭いスペースに収まって横になっていたシモンさんが顔を顰めながら起き上がった。
「大丈夫ですか?」
「傷の方はねー。でも体ガチガチだよ」
「頑張りましょう」
それ以外言えない。
今の馬車はサスペンションなどもなく振動が直に伝わってくる最悪な乗り心地だ。クッションなどで多少軽減できてもだいぶ辛い。
シモンさんはこれまでスキルを使いまくって移動を高速にしていたこともあり馬車移動というのはもう相当経験してなかったそうでとてもしんどそうだが助けてあげられない。
シモンさんは聖都でスキル封印の罠にかかってしまい、せっかくあった多彩な能力は使えなくなってしまっている。
そんな状態でも魔法や氣の扱いはそこらへんのワーカーをはるかに凌駕してる使い手ではあるのだが、本人はスキルがある状態で2千年以上生きているので今の感覚に全然慣れないそうだ。
オレも子供の頃に授かったスキルありきで生きてきたのでスキルを封じられると何もできなくなりそうで怖い。
「シモンさん、聞きたかったんですが、スキルってなんなんですか?」
スキルについてはかねてよりずっと疑問に思ってきた事がある。
まずオレにしか見えていないスキルの詳細表示なのだが、ここに書かれている文字は日本語だ。
これについては俺は異世界に来たと思っていたが、実は一度死んで遙か未来に記憶を持って生まれ変わっただけということが判明している。
でも前世のオレが生きていた時代ではスキルなんてなかったから、オレが死んで以降の技術なわけで、長い年月により分からなくなっている。
スキルについては研究はされてはいるものの詳細は全く明らかになっていない。
でも前文明の頃から生きているシモンさんならスキルが生まれてた時代からこれまでを見てきているはずだ。きっと誰よりも詳しいはず。
「そうだねー。ラグナくんには色々と話していてもいいかもね。じゃあスキルについて話そうか」
「お願いします」
シモンさんは起き上がりゆっくり伸びをするとスキルについて語り始めた。
「まずはスキルが生まれるに至る経緯からかな」
「え、そこから!?」
「だって、そうしないと暇つぶしにならないじゃん」
「まあ、確かに?」
ちょっと思っていたことと違うところから話が始まるが、確かに馬車移動は暇だ。
シモンさんの話に付き合って色々聞いてみるほうが良いだろう。
シモンさんはゆったりとした口調で語り出した。
内容は過去文明の人が魔法に気づいた場面から始まった。
魔法を発動させるための魔力が地上に現れた正確な時期はよくわかっていないそうだ。でも科学では説明がつかない現象が確認され出し、最初はフェイク動画だろうと思われていたものが徐々に信憑性を増し始め、人々が検証しだし、実際に再現例も現れた事で魔法の存在が確実になったという。
しかし実際に魔法を発動できた人間はごくごく少数だったらしい。
魔法のない時代に生まれた人々はそもそも適正が高くなく、魔力もかなり乏しかった事が原因だそうだ。
それでもその当時の人々は魔法を諦めなかった。
地道な研究のなかで、魔法の適正が低いものたちでも人数を集めて一つの儀式を行えば魔法を再現できる事がわかった。イメージや魔力を数でカバーした結果だ。
スキル。正確にはスキルシステムという巨大魔法の前身は多言語理解の魔法だったそうだ。
人が大勢集まって人々の言語の理解力を共有しあう魔法を発動した事で、集まった人々はそれぞれ魔法で繋がり知らない言語同士の会話でも何も違和感もなく話す事ができたそうだ。
つまり人同士の知識や思考を繋ぎ合わせた巨大なネットワークのような魔法を作ればその中で人々は魔法に至るイメージなどを繋がった人々で補完しあって1人でも魔法を行使できるようになる。それがスキルシステムという魔法のざっくりとした仕組み。
当時あったインターネット上に集まった魔法研究者たちにより多言語理解魔法を拡張したスキルシステム理論が作られ、まずは人々への認知がすすめられ、世界中の人々に広く考えが伝わった時からスキルシステムの発動実験が世界各地で試され始めた結果、地球規模の魔法となりスキルシステムが完成したという。
その後スキルシステムの機能が整備されて、今のようなスキルが自動的に身につくものに変わっていったのだという。
時期的には前世のオレが死んで10年後ぐらい。
「スキルシステムが発動した日はね、世界中から言語の壁がなくなった日でもあるんだよ。みんなそれぞれの言葉を喋っていても意味が相手に伝わるようになったんだ。一つ文字の知識があれば他の文字も読めちゃう。それは今でも一緒で、ラグナくんと僕とじゃ話してる言葉って違うんだよ。でもそれに気がつかないレベルで理解力できちゃう」
「ええ!そうなんですか」
「便利なもんだよねー」
シモンさんにそう言われたもののシモンさんの言葉はオレが知っているもののように聞こえるし本当に違和感がない。
「でもシモンさんスキル封じられてるし、スキルを身につけていない人もいるじゃないですか」
「スキルが使えるかどうかは本人の状態次第だけど、スキルシステムには全人類つながってはいるんだよ。そして言語理解と免疫力の自動アップデートはスキルを使えなくても基本機能として授かってる」
「免疫も!凄い!」
確かに生まれてこの方オレは病気に罹ったことはなかった。ずっと一緒にいるザーグもそうだ。
思い返せば流行病というのはあれど大流行しているという話は聞いた事がない。それも免疫アップデート機能の賜物なのだろう。
「未知の病気に罹って死ぬとかはあり得るけどね。そうなって死んだ人の魂をスキルシステムが回収して病気を解析してから人々の免疫に反映してるんだよ」
「へー」と頷きつつもまた魂がどうたらと知らない事が出てきた。
まだまだ旅はつづくからゆっくりといろんな事を聞いていこう。
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