オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

文字の大きさ
1 / 40

CaseA:草木好子1 癒しの植物?

しおりを挟む

 はぁ……今日も疲れた……。

 ため息をひとつ。
 重い足取りで駅に向かう。

 秋も深まった季節、すでに辺りは暗い。
 しかし最近では、この時間に帰れてラッキーなくらいだ。
 まだ、店の明かりがついている。

 私は、草木好子くさきよしこ26歳。
 社会人数年目で、最近ようやく仕事を任されるようになってきた。

 しかし、仕事が充実しているのはいいのだけれど、忙しすぎて目の回るような毎日を送っている。

 最近の癒しといえば、コンビニスイーツでおうちカフェ、休日は家でゴロゴロするくらい。

 そもそも外に出る気力もねぇーーーー。

 今日もコンビニでスイーツ買って帰りますか……。

 いつものように、そう思いながら駅に向かっていた、その時だった。

「そこのお嬢さん」

 見知らぬ女性に、声をかけられた。
 顔を上げると、綺麗な着物を着て、とても物腰やわらかなご婦人だった。

 しかし、こんな街中で私に一体何の用だろうか?
 もしかしてセールス? 怪しい団体?
 危険だと思ったらすぐ逃げよう。

「今、お店のキャンペーン中でね、種を配ってるんですよ」

 ……種? ああ、花の種ね。
 よく見れば、ご婦人は綺麗な花の籠を持っている。
 花屋のご婦人は、花の種の入った袋を差し出してきた。

 花……かぁ。ガーデニングは嫌いじゃないけど……。

「あなた、とても疲れている顔をしているわ。植物はね、飾っておくとリラックス効果もあるのよ」

「でも、うまく育てられるかどうか……。最近忙しいので、枯らしてしまわないかと……」

 実際、過去にいくつか植物を枯らしてしまったことがあり、正直言って、かなり自信がない。

「大丈夫よぉ~。この子はね、とっても強い子なの! 1日1回、霧吹きで少量水をあげるだけで大丈夫! ぜひ、あなたのような人に育ててもらいたいわ」

 ご婦人は、笑顔でグイグイと勧めてきた。
 うわぁ~、随分と熱心だなぁ……。

 でもまあ、キャンペーン中で無料だって言うなら、もらうだけもらっておいてもいいかな……?
 私は、花の種を受け取った。
 何の種類の花かは書かれておらず、袋は真っ白だった。

「あの……。これ、何の花の種ですか?」

「うふふふ、それは、育ててみてのお楽しみよ♪」

 花屋のご婦人は、にこにこと微笑むだけだった。

 私は、軽く会釈をしてその場を去った。
 曲がり角に差し掛かった時、振り返ったが、ご婦人の姿はすでになかった。



 そして私は、電車に乗って家に帰ってきた。
 何か忘れているような気がする……。

 …………あ!
 コンビニスイーツ!!

 とほほ、もう外に行く気力がない……。
 明日は休日だし、鉢植えとコンビニスイーツは明日にしよう。
 私は、遅めの夕食をとって寝ることにした。



 翌日、私はホームセンターで、ガーデニングに必要であろうアイテムを買ってきた。
 そして、種の入った袋を開ける。

 どんぐりくらいの大きさの種が1個、ころん、と手のひらに転がってきた。
 特に、説明も何も書かれておらず、何の花かもわからない。

 仕方がないので、一般的な花の植え方で準備して、それから水をあげることにした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...