オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼

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土屋美雨6

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「えっ、お父さん? やだなぁ、僕はサイですよ」

 どこからどう見ても父だったが、父の姿をしたサイは、しっかりとプランターに埋まっていた。唯一違うのは、髪の色だろうか。

「い、いやいやいやいや、何成長しちゃってんの。この間まで、私と同い年くらいだったのに、成人しちゃってるよ。しかもお父さんだよ。どうなってんの、もうーー!!」

「もしかして、今の僕の姿は、美雨さんのお父さんに似ているんですか?」

「似ているどころか、本人がいるのかと思ったわよ! しかも、これ見て! 以前のサイも、昔のお父さんと似ているのよ! 一体、どういう事なの!? こんなに似る事ってある!?」

 私は、先ほど見つけたアルバムを開いて見せた。

「本当だ、そっくりですね。まるで他人とは思えないです」

「だよね!?」

「美雨さんのお父さんって、今どうしてるんですか?」

「……わからないの。8年前に出て行ったきりで。なんで出て行ったかもわからなくて、もしかしたら不倫かも……なんて思っちゃったりして」

「お父さんとお母さんは、仲が悪かったんですか?」

「そんな事ないよ。家では仲良かった。でも、そういえばお父さん、あんまりお母さんと外に出たがらなかった。その時は、仕事で疲れてるからかなって思ってたけど……」

 私は、そこで言葉を詰まらせた。
 過去に、見た光景を思い出していた。

「でも私、見ちゃったんだ。お父さんが、女の人と歩いているの」

「その女性とはどういう関係か、訊かなかったんですか?」

「そんなの、怖くて訊けなかったよ……」

「美雨さん。これは、僕の勝手な憶測なんですが……」

「なに……?」

「美雨さんのお父さんは、もしかして人型植物だったのではないですか?」


「え……ええええええぇぇっ!?!?」

 ちょっと待ってよ! なんか話が飛躍しすぎてない!?
 お父さんは、ちゃんと人間だったよ!? 足もあったし!
 憶測がぶっ飛びすぎてるよ!!

「僕に似ていて、お母さんと外に出たがらない……。状況証拠でしかありませんが、そう思ったんです。それに、時々あるみたいなんです。人型植物が人間に憧れて、実際人間になってしまう事が」

「ええっ!? じゃあ、サイも人間になろうと思えばなれるの?」

「僕は無理です。人間になるには、同じ姿の人間の遺伝子をもらわなければいけないんです。ただ、その多くは”失敗作“として回収されてしまいます。僕は、回収されるのは嫌なので、このままでいいです」

 サイは、空気を重くしないよう配慮してくれてるのか、苦い笑みを浮かべた。

 う、うーん……。
 なんか、よくわからないけど複雑……。
 お父さんが人型植物……?
 これって、お母さんも知ってるの……?

 ええい、仕方がない。
 お母さんが帰ってきたら、思い切って訊こう!

「ただいまー」

 帰ってきた!


「あれ、美雨ー? 部屋にいるのー?」

「お、お母さん、おかえり。今日は早かったんだね」

「あら、サイ君のところにいたの? いつもサイ君が寝てる時間にしか帰って来れないから、私も顔が見たいわ。サイくーん♪」

 母は、すぐにサイのところへ向かってしまった。

「わ、わー! 待って、お母さ……!」

「ただい……ま……」

 一瞬だけ、母が固まった。
 そりゃあ、そうだよね、私でも驚いたもの……。

「おかえりなさい、お母さん」

 サイは、いつものようににこやかに出迎えたが、

「た、た、竹男たけおさんっっ!?」

「お母さん、僕は……」

「この……8年もどこへ行ってたんじゃあーーーー!! 歯ぁ食いしばれーーーー!!」

 母は、サイに殴りかかろうとした。

「お、お母さん、落ち着いてー!」

「お母さん、僕はサイです!!」

「よくも……よくも私たちを捨ててくれたわね! ずっと……ずっと待ってたのよ……。なのに今更、何しに戻ってきたのよぉぉ!」

 振り上げた手は力無く下ろされ、サイの服を掴み揺さぶった。

「お母さん……」

 泣きじゃくる母を、大きくなったサイは包み込むようにして、ポンポンと頭を撫でた。まるで、本当に父が母を慰めているかのようだった。

『植物は、癒しの効果もあるのよ』

 そう言った、着物のご婦人の言葉を思い出す。
 サイが生まれてきたのは、母を癒すためだったのだろうか?

 本当に、お父さんが帰って来たらな……

 そんな淡い期待を、してしまった。
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