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土屋美雨5
しおりを挟むサイがうちの家族に加わってから、数日が過ぎた。
私は学校、母は仕事なので、念のためサイの傍らに水の入ったジョウロを置いておく事にした。それともうひとつ、暇そうだったので、音楽とラジオが聴けるポータブルプレイヤーを貸してあげた。私がサイに貸せるのは、これくらいしかない。もちろん、防水仕様だ。
これで、共通の話題ができるといいなと思う。
今日は、梅雨の間の晴れだったので、サイが残念そうにしていた。私が家を出ても、雨が降らない事はたまにある。
学校から帰ってくると、サイに呼ばれた。
「美雨さん、おかえりなさい。こっち、こっちに来てください!」
「ええ、なーに? 水がほしいの?」
私が窓から出た瞬間、ぽつぽつと雨が降り出した。
「うーん、最高♪」
なるほど。サイは私の体質を利用して、雨を降らせたかったわけね。この体質が喜ばれるのはいいんだけど、なんだかちょっと複雑……。
サイは、日が沈むと共に寝るので、夜が早い。こちらとしても、夜は窓を閉めたいので都合がよかった。
「うーん……」
仕事から帰ってきた母が、食事をしながら唸った。
「お母さん、どうしたの?」
「いや、サイ君なんだけどさ。あの子、どこかで見た事があるような、ないような……」
「どっちなのよ?」
「知り合いの子……? いや、違うなー。どこで見たんだったかなー?」
母は、サイの正体が気になるようだったが、深く詮索はしないようだった。
そう言われると、私もだんだん気になり出した。私はサイとは初対面のはず。でも母が知っているかもしれないという事は、私が物心つく前……もしくは母の独身時代。もしかしたら、アルバムに載っているかも!
後日、私と母の昔のアルバムを引っ張り出してきた。しかし、サイらしき人物はどこにも写っていなかった。
「……もしかして、お父さんの知り合いとか?」
父の知り合いなら、母が昔会ってる可能性がある。私は、父が置いて行った昔のアルバムをめくってみた。今とは違う、色褪せたレトロな感じの写真。
その中に、サイはいた。
「……えっ!? こ、これ……サイ!? なんで、お父さんのアルバムに!? ……というか、これって…………高校時代のお父さん!?」
うそでしょ!? なんで、サイがお父さんなの!?
いや、お父さんがサイなの!?
これは、先にお母さんに訊いてみるべき?
それとも、サイに確認してみるべき……?
母が帰ってくるのは夜。サイは夜には寝てしまう。
よし、先にサイに確認してみよう!
私は、アルバムを持って窓を開けた。
「ねえ、サイ────」
サイが生えてるプランター。
そこには、サイではなく長身の成人男性が立っていた。
「お、お、お父さんっっ!?!?」
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