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土屋美雨9
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「だからお母さん、簡単に感動しないでー! 8年だよ!? 気付くの遅すぎでしょ!!」
「たしかに! うう、でもー! 私のせいで竹男さんに辛い思いをさせていたと思うと、怒るに怒れないのよー」
「だからって! 悪いのは、勝手に出て行ったお父さんなんだからね! 私は知らない! 2人で、勝手によろしくやってれば!?」
私は、父と母を無理矢理家の中に押し込んだ。
「えっ、それって、ちょっと美雨───」
窓を閉めて、私はサイの衝立に隠れた。
「あの子ったら……ふふ……」
「いいのかい? 僕が、この家に入っても」
「いいのよ。あの子がそうしたんだから。おかえりなさい、竹男さん」
「……ああ、ただいま」
2人は、他に誰もいないリビングで抱き締め合っていた。
「美雨さん、素直じゃないですねぇ」
「お父さんの声で言わないで。調子狂っちゃうわ」
母を家の中に入れた途端、雨が降ってきた。つくづく、嫌になる。
でも……。
「ああ、雨は気持ちいいですね」
ここに、私の雨女体質を喜んでくれる人──いや、植物がいる。
「もしかして、サイがお父さんの遺伝子をもらったら、人間になれるの?」
「うーん、なれるかもしれませんが、怖いのでやめておきます。さっきも言いましたが、僕は、失敗作になって回収されたくないので。回収されたら、美雨さんのそばにいられなくなりますからね」
「だ、だから、そういう事をお父さんの姿と声で言わないでーー!!」
私は、この後もずっと、サイの寿命が来るまで父の姿と声で言われ続けるのであった。
*
それから、私たちとお父さんはまた一緒に住み始めた。
最初は戸惑っていたお母さんだけど、今ではすっかり新婚気分に戻ったらしい。
仲がいいのはいいんだけど、子どもの前でイチャイチャするのはやめてほしい。
お父さんは8年もの間、別の仕事をしながら自分の体質を治すために、とある施設にいたらしい。
あれから家族で話し合って、お父さんが無理のないように家族で出かけるようになった。
天気のいい日は、屋内施設へ。どうしても屋外へ行きたい場合は、炎天下を避けるなど。
母が一緒だと、どうしても曇りの日という選択肢がなくなってしまうのだった。
そして私は、ある一大決心をした。
「お父さんお母さん、私、植物研究家になる! 研究家になって、お父さんの体質や、サイのような人型植物について研究したい!」
「いいじゃない! でも、そのためにはまず勉強しないと?」
「うん、そうなんだよー。だから私、予備校に通いたい!」
「うっ……。そうなるわよねー」
「いいじゃないか。僕も戻ってきた事だし、学費はなんとかなるよ」
「お父さんー!」
私は、年甲斐もなくお父さんに抱きついた。
「大学に入ってやっていけそうだったら、僕がお世話になった施設の研究所を紹介するよ」
「本当に!? ありがとう、お父さんー!」
「たしかに! うう、でもー! 私のせいで竹男さんに辛い思いをさせていたと思うと、怒るに怒れないのよー」
「だからって! 悪いのは、勝手に出て行ったお父さんなんだからね! 私は知らない! 2人で、勝手によろしくやってれば!?」
私は、父と母を無理矢理家の中に押し込んだ。
「えっ、それって、ちょっと美雨───」
窓を閉めて、私はサイの衝立に隠れた。
「あの子ったら……ふふ……」
「いいのかい? 僕が、この家に入っても」
「いいのよ。あの子がそうしたんだから。おかえりなさい、竹男さん」
「……ああ、ただいま」
2人は、他に誰もいないリビングで抱き締め合っていた。
「美雨さん、素直じゃないですねぇ」
「お父さんの声で言わないで。調子狂っちゃうわ」
母を家の中に入れた途端、雨が降ってきた。つくづく、嫌になる。
でも……。
「ああ、雨は気持ちいいですね」
ここに、私の雨女体質を喜んでくれる人──いや、植物がいる。
「もしかして、サイがお父さんの遺伝子をもらったら、人間になれるの?」
「うーん、なれるかもしれませんが、怖いのでやめておきます。さっきも言いましたが、僕は、失敗作になって回収されたくないので。回収されたら、美雨さんのそばにいられなくなりますからね」
「だ、だから、そういう事をお父さんの姿と声で言わないでーー!!」
私は、この後もずっと、サイの寿命が来るまで父の姿と声で言われ続けるのであった。
*
それから、私たちとお父さんはまた一緒に住み始めた。
最初は戸惑っていたお母さんだけど、今ではすっかり新婚気分に戻ったらしい。
仲がいいのはいいんだけど、子どもの前でイチャイチャするのはやめてほしい。
お父さんは8年もの間、別の仕事をしながら自分の体質を治すために、とある施設にいたらしい。
あれから家族で話し合って、お父さんが無理のないように家族で出かけるようになった。
天気のいい日は、屋内施設へ。どうしても屋外へ行きたい場合は、炎天下を避けるなど。
母が一緒だと、どうしても曇りの日という選択肢がなくなってしまうのだった。
そして私は、ある一大決心をした。
「お父さんお母さん、私、植物研究家になる! 研究家になって、お父さんの体質や、サイのような人型植物について研究したい!」
「いいじゃない! でも、そのためにはまず勉強しないと?」
「うん、そうなんだよー。だから私、予備校に通いたい!」
「うっ……。そうなるわよねー」
「いいじゃないか。僕も戻ってきた事だし、学費はなんとかなるよ」
「お父さんー!」
私は、年甲斐もなくお父さんに抱きついた。
「大学に入ってやっていけそうだったら、僕がお世話になった施設の研究所を紹介するよ」
「本当に!? ありがとう、お父さんー!」
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