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土屋美雨10
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「美雨さん、良かったですね」
その後、家族会議の内容をサイに話した。
「うん、お父さんも戻ってきて、やりたい事も見つかって、なんか運が上昇してきた感じだよ。サイが、生えてきてくれたおかげかな?」
「僕は、何もしてませんよ。美雨さんが、がんばったからですよ」
「これから、予備校に通うから、サイの相手、あんまりしてあげられなくなるけど……」
「それは、大丈夫です」
「え、どうして?」
「僕は元々、雨季に咲く植物です。もうあと数日で、眠ってしまいます」
「えっ、そうなの!? サイに会えなくなっちゃうの!?」
「大丈夫です。根が枯れなければ、来年また咲きます」
「よ、良かった~。大学生になった私も、社会人になった私も、サイに見てもらいたいもん」
サイはお父さんに似ているけれど、やっぱり私にとって、サイはサイだった。
「それは、来年が楽しみです」
そして数日後、サイは眠りについた。
一年後────
サイは、また若い姿で咲いた。
「美雨さん、お久しぶりです!」
若い姿の方が、年齢が近くて話しやすい気がする。
しかしサイは、またいきなり成長した。
お父さんの姿でいきなり現れると、やっぱりびっくりする……。
*
そして数年後、私は大学を卒業し、お父さんの紹介でとある研究所を訪れた。
「いらっしゃい、あなたが、土屋美雨さんね。はじめまして」
「……あ、あなたは!? 種をくれた着物の女性!」
私の目の前に現れたのは、あの雨の日に出会った、物腰優雅な女性だった。
今は着物ではなく、研究所らしく白衣を着ている。
「あら、どこかで会ったかしら?」
数年経っているし、覚えてないのだろうか?
あの時、彼女がサイの種をくれなければ、お父さんのことも知らなかっただろうし、ここにも来ていないだろう。
どうやら彼女は、ここの所長のようだ。
「ここでは、人型植物の研究をしているのよ。そうそう、私の助手を紹介するわ」
朗らかに微笑む所長の視線の先には、ボブカットで真面目そうな、若い女性が立っていた。
「草木好子です。美雨さん、よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします!」
私は、この研究所がいかに恐ろしい所かという事を、後で思い知らされる事となる────
── 土屋美雨 編 完 ──
その後、家族会議の内容をサイに話した。
「うん、お父さんも戻ってきて、やりたい事も見つかって、なんか運が上昇してきた感じだよ。サイが、生えてきてくれたおかげかな?」
「僕は、何もしてませんよ。美雨さんが、がんばったからですよ」
「これから、予備校に通うから、サイの相手、あんまりしてあげられなくなるけど……」
「それは、大丈夫です」
「え、どうして?」
「僕は元々、雨季に咲く植物です。もうあと数日で、眠ってしまいます」
「えっ、そうなの!? サイに会えなくなっちゃうの!?」
「大丈夫です。根が枯れなければ、来年また咲きます」
「よ、良かった~。大学生になった私も、社会人になった私も、サイに見てもらいたいもん」
サイはお父さんに似ているけれど、やっぱり私にとって、サイはサイだった。
「それは、来年が楽しみです」
そして数日後、サイは眠りについた。
一年後────
サイは、また若い姿で咲いた。
「美雨さん、お久しぶりです!」
若い姿の方が、年齢が近くて話しやすい気がする。
しかしサイは、またいきなり成長した。
お父さんの姿でいきなり現れると、やっぱりびっくりする……。
*
そして数年後、私は大学を卒業し、お父さんの紹介でとある研究所を訪れた。
「いらっしゃい、あなたが、土屋美雨さんね。はじめまして」
「……あ、あなたは!? 種をくれた着物の女性!」
私の目の前に現れたのは、あの雨の日に出会った、物腰優雅な女性だった。
今は着物ではなく、研究所らしく白衣を着ている。
「あら、どこかで会ったかしら?」
数年経っているし、覚えてないのだろうか?
あの時、彼女がサイの種をくれなければ、お父さんのことも知らなかっただろうし、ここにも来ていないだろう。
どうやら彼女は、ここの所長のようだ。
「ここでは、人型植物の研究をしているのよ。そうそう、私の助手を紹介するわ」
朗らかに微笑む所長の視線の先には、ボブカットで真面目そうな、若い女性が立っていた。
「草木好子です。美雨さん、よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします!」
私は、この研究所がいかに恐ろしい所かという事を、後で思い知らされる事となる────
── 土屋美雨 編 完 ──
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